今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
大宮開成中学校
2023年04月掲載
2023年 大宮開成中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
数学の未解決問題として以下のコラッツ予想というものがあります。
以下の操作を繰り返せばどんな0より大きい整数も1になる。
A:偶数の場合は半分にする
B:奇数の場合は3倍して1を足す
現在、コンピュータによる演算でかなり大きい整数に関してもこの事実が確認されています。例えば5で試してみると、5→16→8→4→2→1と5回の操作で1になります。次の各問いに答えなさい。
(問1)23は何回の操作で1になりますか。
(問2)2023も操作を繰り返していくと1になります。では逆に、5回の操作で2023になる5桁の整数の中で2番目に大きい数はいくつですか。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この大宮開成中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)15回
(問2)10789
解説
(問1)
A:偶数の場合は半分にする。
B:奇数の場合は3倍して1を足す。
の操作を行っていきます。
以上より、15回の操作で1になります。
(問2)
Aの操作は「2でわる」なので、もとに戻す操作は「2をかける」です。
Bの操作は「3倍して1を足す」なので、もとに戻す操作は「1をひいて3でわる」です。
2023を次のようにもとに戻していきます。「2をかける」と「1をひいて3でわる」の両方ができる数があります。そこで枝分かれが起こっています。
上の図より、5回前の操作のときの数の中で2番目に大きい5桁の整数は、10789とわかります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
2023年度入試では、「コラッツ予想」を題材とした問題が多く出題されました。「コラッツ予想」とは、「どんな整数であっても、この問題で紹介されているAまたはBの操作を続けていくと、必ず最後には1になりそうだ。」という「予想」です。「なりそうだ」や「予想」と書いたのは、この予想は現在、数学界では「ほぼ正しいと思われるが、証明はされていない」という状態だからなのです。具体的には、コンピュータを用いて、およそ10\(^2\)\(^0\)(1の後ろに0が20個続く数)までのすべての整数は最後に1になることがわかっています。ところが、この整数よりも大きな整数の中に、この予想を覆すような整数があるかないかはわかっていません。ですから、「定理」や「法則」ではなく「予想」という言葉が使われています。
操作自体は、小学4年生の算数の知識を持っていれば、だれでもどんな整数でも、実際にこの操作をして最後に1になることを確認することができます。ところが、小学4年生の算数の知識で理解できる操作であるにもかかわらず、その全容は世界中の数学者が誰1人証明できていないのです。このギャップにとてもロマンが感じられます。
コラッツ予想を題材とした算数の問題は、毎年様々な学校で出題されていますが、今回紹介する大宮開成中学校の問題のように、「未解決である」「コンピュータを使って検証している」など、世界中の数学好きを夢中にさせるような情報とともに出題していることはまれです。ここには、「ただ単に問題を解くだけではもったいない」「背景にはこんな数学の世界のロマンがあるんだよ」という、出題者の数学に対する思いが感じられました。算数や数学のテストを、解けるか解けないかを見るだけではなく、数学の奥深い世界への誘いの場としているところが、この問題が持つ魅力をさらに引き立てています。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。