シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄東中学校

2023年03月掲載

栄東中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.「ここまでできた」と実感できる出題を意識

インタビュー2/3

一問一答ができた上で知識を組み合わせて解く

高橋先生 本校の理科の入試問題は、1月入試ということから、受験生がこれまで頑張って勉強してきたことを発揮できるような問題、基礎基本が確認できるような問題を出したいと思っています。
選択問題は選択肢が多く(2023年度入試は最大9)、ヤマカンで偶然正解する確率は低いため正答率が下がる問題もありますが、2月入試を控えている受験生が6割以上正解できること、合格者と不合格者の正答率に大差が生じないような出題を心がけています。本校を受験して「ここまではできた」という実感を持ってもらえたらと思っています。

市原先生 緊張している受験生に、「こんな問題、見たことない」とさらに緊張度を上げるような問題はできるだけ避けるようにしています。落ち着いて平常心で臨んでくれれば、本校の入試は突破できると思います。得点を開示しているので、何が足りないのかを把握して、2月入試までに対策を練ることが可能です。

高橋先生 各大問の後半は、知識を組み合わせて解く問題を出しています。断片的な理解ではなく、その分野を総合的に理解できているか、そのための知識を習得できているかどうかを測っています。

市原先生 難問・奇問はありません。一問一答ができた上で、知識を組み合わせて解いてもらえればと思います。

高橋先生 大問の後半の問いを解くヒントがそれまでの問いにあるので、問題の流れにうまく乗ってほしいですね。

理科/高橋 竜太先生

理科/高橋 竜太先生

「ロウ」の問題を「水」と勘違いした?

市原先生 化学分野からの出題に、液体のロウが固体になったらどうなるかを選ぶオーソドックスな問題がありましたが、正答率が低かったのは意外でした。ほかの問題がすべて水についての問題なので、もしかするとロウの問題も水だと思って考えたのかもしれません。

高橋先生 状態変化は大抵、水から学習します。その先入観があったのかもしれませんね。誤答は水が氷になったときの選択肢が目立ちました。リード文の冒頭、「図1のように液体のロウを……」とあるのですが、液体=水と思い込んでしまった、あるいはロウ=固体という固定観念があったかもしれません。

理科の計算問題はまず状況把握が求められる

市原先生 計算問題を見ると、算数としての計算は練習してきていると感じます。ただ、「てこ」の関係のように、状況をとらえる、条件を踏まえて考える問題では、計算力を発揮できていない子もいるように思います。この条件だからこのように計算をすればいいというところまでたどり着けるかどうかは、算数の計算力よりも理科的知識がより求められるのかもしれません。

高橋先生 地学分野の出題に、月食のときの月の中心から太陽の中心までの距離を、比の関係の情報をもとに求める選択問題がありましたが、予想していた以上に正答率が低くなりました。状況をつかみ、さらに桁数が大きい(選択肢は7~9桁)となると、解くのをあきらめてしまった受験生もいたかもしれません。

栄東中学校 実験室

栄東中学校 実験室

条件の見落としの有無が正解の分かれ道

高橋先生 データの読み取りは得意・苦手が出ます。
例えば固体の溶解度は通常、温度が上がれば溶けやすく、溶解度は右肩上がりのグラフになります。ところが、硫酸塩の中にはある温度以上になると溶解度が下がり、ピークがある溶解度曲線になるものがあります。その場合、グラフからここでは結晶ができる、ここではまだ溶けるということをつかめるかどうか。溶解度の知識を使って総合的にとらえる力が求められます。

「読み取り」で言えば、受験生の理科の文章を読み取る力はいかがですか。

高橋先生 文中のひと言を読み飛ばしてしまうと正解にたどり着けません。溶解度の問題なら「あと○g溶ける」というひと言を見落とすと、その間違いを想定した選択肢を選んでしまうことになります。注意深く読む・聞くということを日常生活の中でも意識してほしいですね。そうした集中力の有無は解答から垣間見ることができます。

コロナ禍で実物に触れる機会が減っている印象

受験生の解答を見て、何か気になることはありますか。

市原先生 コロナ禍以降、実物に触れる機会が少なくなっているのではないかと感じます。実際に扱ったことがあれば簡単に答えられるのにと思うことはあります。これは入学後にこちらがケアしなければならないことだと思っています。
中学の内容は、中学受験で知っていたとしてもイチから学習します。帰国生や6年生から通塾して受験した生徒など、いろいろな背景のお子さんが入学してきます。理科が得意な子もいれば苦手な子もいます。ですから「塾で習ったよね?」が前提ではなく、初めての生徒がいることを前提に、知っているようなことも確認します。特にコロナ禍になってからは、強く意識しなければいけないと思っています。

栄東中学校 体育館

栄東中学校 体育館

インタビュー2/3

栄東中学校
栄東中学校平成4年に中学校が開校し、中高一貫教育が開始された。時代の変化に先駆けて、アクティブ・ラーニングを取り入れ、「①授業、②校外学習、③キャリア、④部活動」という4つを軸に分けて展開している。授業での工夫という枠を超えて、生徒の学びの場すべてをアクティブ・ラーニング実践の場ととらえ、学校そのものがアクティブ・ラーニングの場である。特定の教員が実践するのではなく、全教員がアクティブ・ラーニングの実践者であることが最大の特徴である。
大学入試結果は教育の成果であり、そこにいたるプロセスと大学卒業後、社会で生きる力の育成に関する学校としての方針をアクティブ・ラーニングという理論に基づいて計画して実践している。授業は常に見学可能であり、教員同士がいつでも授業を見せ合う環境となっている。中1の入学時点では人の前でプレゼンテーションすることが苦手な生徒でも、中3までの間に至極当然のこととなっていくということである。
建学の精神「人間是宝」の理念は、『人間はだれもがすばらしい資質を持った、宝の原石であると考え、その原石を磨き上げ、文字通り本当の「宝」として育てること』であり、そのために、校訓「今日学べ」(今日のことは今日やり、勉強も仕事も明日に残さない)を掲げている。
広大な敷地には、勉学に専念するための充実した施設があり、先生方も遅くまで生徒たちの学びにつき合うことも多いという。勉強だけではなく、多くのクラブ活動も盛んであり、それは学校での生活すべてがアクティブ・ラーニングであるということに通じている。