シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

栄東中学校

2023年03月掲載

栄東中学校【理科】

2023年 栄東中学校入試問題より

下の図のような、家庭用卓上(たくじょう)ガスコンロは、ボンベ内で液体燃料が気体になったものを噴出(ふんしゅつ)し、燃やすつくりになっています。

コンロにセットされたボンベ

(問)新品のボンベの内部を、正しく表しているものはどれですか。下の[ア]〜[カ]から1つ選び、記号で答えなさい。なお、選択肢中の(上)および(下)はボンベをコンロにセットしたときの向きを表しています。

(問)図

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この栄東中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

[イ]

解説

問題文より、「ボンベ内で液体燃料が気体になったものを噴出し」とあります。選択肢の[ア]、[ウ]、[オ]のように、ボンベの内部が液体で満たされていると、内部の管の向きにかかわらず液体が噴出してしまうため、ふさわしくありません。そのため、ボンベの内部は、液体と気体の両方が入っている選択肢の[イ]、[エ]、[カ]のいずれかと考えられます。次に、問題の選択肢の図に書かれた(上)(下)の向きに合わせて、ボンベをガスコンロにセットしたときのようすを考えます。液体は気体よりも同体積あたりの重さが重いので、ボンベをセットしたときも下側に液体、上側に気体がある状態になります。このことをもとにすると、ボンベから気体が噴出するようにするためには、内部の管の先が上側の気体の方に伸びている必要があります。よって、ボンベの内部のようすは[イ]の選択肢のようになっていると考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

私たちが日常生活の中で使っているさまざまな道具。そのしくみや構造は、単純なものもあれば、複雑なものもあります。それぞれのしくみや構造まで理解して使っている道具は、どれくらいあるでしょうか。

この問題では、家庭用卓上ガスコンロで使われる、ボンベの内部の構造に目を向けています。このような卓上ガスコンロにボンベをセットして、自分で使ったり、誰かが使う場面を見たりしたことがある、という子どもも多いと思います。しかし、金属の缶でできたボンベの内部の構造まで直接見るという経験はなかなかできるものではありません。そのような「使い方は知っているけれど、しくみや構造はよく知らない」という道具についても、これまでに学んだことがらと問題に示されている情報をもとに、筋道を立てて考えていくことができるのです。

では、道具のしくみや構造まで知っていると、どのような良いことがあるのでしょうか。例えば、卓上ガスコンロのボンベの場合は、ボンベをセットする向きが決まっています。これには、その向きにしないと危険だからという理由がありますが、もし、しくみや構造を知っていれば、正しい向きにセットしないとどのような点が危険なのかを推測できるので、正しい向きにセットすることの重要性を認識することができます。

このように、道具のしくみや構造を知ることで、なぜそのようにする必要があるのか、そのようにしないことでどのような不都合な点や危険が生じるのかということを考えられるようになり、より適切に道具を使うことや効率よく道具を使うことにつながるといえそうです。卓上ガスコンロのボンベという道具を通して、身近な道具のしくみや構造に目を向けてみると、道具についての理解が深まったり、自分の中にある知識や経験とつながることで思考の幅が広がったりする、そんなメッセージが感じられました。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。