シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国府台女子学院中学部

2023年03月掲載

国府台女子学院中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.司書教諭とタッグを組んで、社会で役立つ力を養うプログラムを開発

インタビュー2/3

6割くらいできれば十分

大問1全体の正答率を見てどのように感じましたか。例えば今回の問題(大問1の問4)の正答率は80%以上ということでしたが、それは想定の範囲でしたか。

水口先生 この問題は「取り除く」という意味でもできてしまうので、正答率は高め(60~70%)だろうと思ってはいましたが、それ以上にできていました。

土橋先生 おぼろげな知識では、正解できないということもあります。その場でできなくても、家に帰ってから「こんな問題が出た」と、おもしろがってくれたらいいなと思います。

水口先生 自分で、言葉から広がりを見つけていくということが大切ですよね。

国語科・学年主任/水口 晶子先生

国語科・学年主任/水口 晶子先生

小学生に馴染みのない言葉を出す意図とは

「なけなし」という言葉を用いて20~30字で短文を作る問題は、いかがでしたか。

土橋先生 「なけなし」はあまり使わないので正答率は低かった(20-50%)です。採点の手応えとしてはあまりできていない印象でした。

水口先生 何かしらは書いていますが、文章として成立していない解答が目立ちました。

土橋先生 「~はなけなしだ」とか。「なけなしの◯◯」というところが出ないパターンが多かったように思います。

水口先生 大人になればその意味がわかるのですが…。

土橋先生 指定した1つの言葉を使ってシチュエーションがわかる短文を作る問題は、どの入試でも出していますが、ここでは小学生に馴染みのない言葉も時々出しています。その意図は、問題を読むことによりそういうことなんだ、と知ってもらったり、興味をもってもらったり。「なんだろう」と思って、家に帰って調べてもらったりしてくれたらいいなというところにあります。今年は「もどかしい」「なけなし」「ひるむ」を出しました。

国府台女子学院 掲示物

国府台女子学院 掲示物

受験生の知識を増やす客観的な選択肢

最後の問題まで到達していましたか。

水口先生 それは大丈夫でした。後半に手をつけていない解答はなかったです。

最近、対話の問題を出題されていますが、そこにはどのようなねらいがありますか。

水口先生 客観的な選択問題と変わりありませんが、選択肢を対話の形にすることによって、主観を通じたテーマにつなげていけるだろうと考えています。今回の問題(主人公の澪について5人の生徒が話し合う設定。本文の内容と合わない発言を選ぶ問題)では、一般的な辞書に載っていない「毒親」という言葉をあえて出させていただきました。通常の選択肢であれば出しにくい言葉だと思いますが、Aさんがしゃべる形であればAさんの主観になります。それにより、受験生は物語や評論のテーマをわりと日常の、至近な内容に近づけてとらえることができるのではないかと考えて、このような形にしました。

確かに「毒親」と言っているのは生徒のAさんですからね。

水口先生 そうです。Aさんが思ったことです。選択肢を対話の形にすると、受験生にとって身近なこと、日常的なこと、あるいは社会的なこと、世相などを反映させやすくなるので、受験生にとって選択肢の文章を読むことは、こういうとらえ方がある、見え方があるなどいろいろなことを知る機会になります。そこに選択肢を対話の形にするねらいがあります。今回の問題にしても、世の中にはいろいろな考え方の人がいる、それぞれの考えがあるということを理解してもらえたらいいなと思っています。

アドミッションポリシーは敬虔・勤労・高雅

入試問題への思いは授業にも反映されていると思います。どのようなことに力を入れていますか。

土橋先生 本校は仏教に基づく教育を行っている学校です。「敬虔(けいけん)/常に我が身を振り返る、素直な心を養う」「勤労/実践を通して、生きる智慧を身につける」「高雅(こうが)/心身を鍛え、気高い品性を身につける」を三大目標とし、それをアドミッションポリシーとして、実社会で実践できる人を育てたいと考えています。この三大目標を理解して、人への配慮ができ、自分自身も高めていけるように、普段の生活の中でも意識しています。先ほどもお話しましたが、入試や授業、あるいは普段の生活の中で文章を読むことにより、いろいろな人のものの見方や考え方を知ることによって、他者に配慮できるようになる、ということが1つあると思います。

国府台女子学院 図書館

国府台女子学院 図書館

司書教諭とともに社会で使えるスキルを磨く「情報リテラシー」

土橋先生 国語の授業ではありませんが、国語的な要素を含んだ「情報リテラシー」という授業があります。週1回、総合的な学習の時間をその授業に当てていて、中1と中3は司書教諭、中2は国語科教諭を中心に行っています。時には他教科の教員が入ることもあります。その授業ではテキストを使って正しい言葉遣いや文章を考える、という授業も行いますが、図書館の使い方や、インターネットの活用の仕方なども学びます。

水口先生 例えば、中編程度の小説を読んで、グループごとに話し合い、要約や絵が得意な子は絵を描くなどの手分けをして紙芝居を作るということもあります。お互いに持ち味を理解し合って取り組んでいます。

土橋先生 コロナで対面でのグループ活動を自粛しなければいけなくなったので、ここ最近、中2はiPadを使って個別に自分に関わりの深い土地を調べています。それをプレゼンテーションして、お互いに評価し合います。iPadで資料を共有し、それをみんなが見ている状況で説明をするため、資料に文章を全部書いてしまったら、それを読むだけになってしまいます。そういうところに気をつけながら、何枚も写真を入れるなど工夫しながら資料を作り、発表します。自己評価もするのですが、他の生徒の評価もするので、うまく伝えるにはどのような言葉を使えばいいのかなど、そういうことにも配慮が必要とされます。

他者を気遣うことにより自分を高める

「敬虔・勤労・高雅」をアドミッションポリシーに、実社会で実践できる人づくりを目指している、貴校ならではの授業ですね。

土橋先生 中3ではSDGsに関連したレポートを書き、それを添削し合います。中2の評価と同様に、伝えたいことをどのように表現するかを考える機会になります。例えば、ここはダメだなと思っても、相手を想像し、傷つけないようにしながら、自分が感じたことを伝えるにはどういう言葉を使えばいいのかを考えます。他者を気遣うことにより自分も高めていくことができるということを、実践を通して学ぶことができるのも「情報リテラシー」の良いところです。

水口先生 ロイロノートという、全員の答えを見られるシステムを使っているので、質問を投げて、「全員で書きましょう」と言えば、書いた文章をみんなで共有できます。名前を伏せることもできるので、時に伏せたり、伏せなかったりしながら、お互いの答えを見合うということをしています。

土橋先生 みんなで共有すると、自分が思いもよらないような考えが出てくることがあります。テーマは他者理解と多様性です。

水口先生 対話をしたり、発問したりした時に、その子が答えるのをできるだけ待ってあげる、ということは、国語だけでなく他の教科でも時間が許すかぎり大切にしています。おどおどして終わってしまうのではなくて、その子が発話するのを待ってあげて、自分事として考えさせていく。友だちの意見も受け止めていく。そういう授業を展開したいと思っています。

国府台女子学院 生徒作品

国府台女子学院 生徒作品

インタビュー2/3

国府台女子学院中学部
国府台女子学院中学部1926年に国府台高等女学校が設立され、1951年に、国府台女子学院と改称された。「智慧」「慈悲」という仏教の教えと「敬虔・勤労・高雅」の三大目標のもと、広い視野と深い思考を身に着けた社会で活躍する女性を育て続けている。面倒見の良さが定評で、“生活記録ノート”が担任とのコミュニケーション手段の一つになっており、内容は趣味の話や悩み相談まで様々。「先生が丁寧に返してくれるコメントやアドバイスが楽しみ!」という生徒も多い。自分の気持ちを文章で表現する力の育成にも繋がっている。
大学受験で重要な国数英の3教科は特に手厚い指導を実施。中でも英語は“活きる語学力”を養う。少人数習熟度別の英語授業で、一人ひとりの英語力に合わせたきめ細かな指導を実施。「情報リテラシー」の授業では、アクティブラーニングを通じて、読書力や表現力、問題解決力を身につける。また、放課後の時間を使って、学習の遅れや理解不足を丁寧にフォローアップする。週1時間の仏教の授業では、仏教の教えから哲学的な内容まで、幅広い内容に触れ多角的な視点を身につける。
図書館は、フロアを「ブラウジングエリア」「調べ学習エリア」「本の壁の部屋」と3つのエリアに分け、奥に進むほど静かに本と触れ合えるレイアウトになっている。体育館とほぼ同じ教室10室分の広さの空間で、自らの興味を探求することができる。書架も文系・理系のコーナーで分けており、それぞれ40席を確保。クラスごとの学びのテーマによって場所を使い分け、効果的に学べる空間設計となっている。また、「本の壁の部屋」は、旧図書館の書架をリメイクした、まさに本に囲まれた場所。本来なら閉架書庫に置かれる貴重な本も配架した、静かな場所になっている。
部活動とは別に、専門部と呼ばれる活動を行っている。これは、華道、箏曲(中学部・高等部)、茶道(高等部)をそれぞれ専門の先生に教わる課外活動で、高等部に開設されている表千家の茶道は、3年間継続すると「許状」を得ることができる。制服も、創立100周年を見据える2023年の春に一新。伝統のダークグリーンを継承したブレザーを始め、夏には快適に過ごせるポロシャツスタイルも用意された。また、ネクタイ・リボンの選択や、スカート・スラックスの選択も可能で、毎日楽しく学校生活を送ることができる制服が完成した。