シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

国府台女子学院中学部

2023年03月掲載

国府台女子学院中学部の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.日本語を学ぶきっかけは生活の中にたくさんある

インタビュー1/3

なぜ、その言葉を使うのかを考えてほしかった

出題意図からお話いただけますか。

土橋先生 この問題(大問1の問4)は言葉の使い分けの問題になります。推薦・一般入試を問わず、本校では以前から出題している問題の1つです。例えば、一昨年の推薦入試では「~のあいだに」と「~のうちに」の使い分けを出題しました。
母語として日本語を使っていれば自然と言い慣れているはずの言葉ですが、問題に触れることにより、どうしてなのかな、と気に留める姿勢を持ってほしいという思いから、このような問題を出題しています。

国際化の時代ですから、外国の方にこうしたことを聞かれるかもしれません。その時にどのように説明するでしょうか。そういうことを改めて考えてみる機会にもなると思います。日本語には微妙な違いがありますから扱い方が難しいのですが、そこをおもしろいと思ってくれたらいいな、という気持ちもありました。

出題の仕方が親切ですよね。

土橋先生 受験生が一から規則性を考えるのは難しいと思います。ですからいくつか例文をあげて、シカクいアタマをマルくするような感覚で、冷静に考えてもらえるように作問しました。正答率は80%を超えました。よくできていました。

「よける」は「取り除く」という使い方を含めて、具体的な物事に対して用いることができます。一方「さける」は抽象的な物事に対して用いることができます。そういう規則性に、なんとなくでいいので気づいてくれたら嬉しいです。

国語科・入試広報担当/土橋 芳恵先生

国語科・入試広報担当/土橋 芳恵先生

考える問題を出すことを意識

普段から作問に使えそうなネタを集めているのですか。

土橋先生 歩いていても、電車に乗っていても、テレビを見ていても、これ、おもしろいな、問題になりそうだな、と思った時にメモする習慣はありますね。携帯のメモにストックしていて、問題を考える時期になると参考にしています。

「よける」「さける」の他にも候補はありましたか。

水口先生 この回ではないのですが、推薦入試では「かばう」と「まもる」で同じような形式の問題を出題しました。あるいは「もの」と「こと」とか。2、3年前からこうした問題を出題しています。

土橋先生 落語など、伝統芸能を題材に作問することもあります。これが国語?と思うような素材でも、日常で常識的に使っているものであれば貪欲に用います。例えば、2023年の推薦入試では落語について、やはり段階を踏みながら言葉がどのように変わっていったかを考える問題を出しました。

入試問題はどのように作成していますか。

土橋先生 国語科の教員で問題を持ち寄って構成しています。本校は推薦、第1回、第2回と計3回試験があります。各回の色が大きく変わらないように構成しますので、良い問題は推薦入試と第1回入試、または第2回入試で、素材を変えて出すこともあります。

問題を作る上で意識しているのは、考える問題を出すということです。漢字の問題であっても、オーソドックスに知識を問う問題に加えて、その場で考えて答えを導き出せる問題を散りばめています。受験生が答えを知らなかったとしても、ヒントを出して、それを活用しながら段階を踏んで論理的に考えていけば答えを導き出せるような問題づくりを目指しています。

国府台女子学院 校舎

国府台女子学院 校舎

構成は小問集合が約4割、長文読解が約6割

以前からこの形式ですか。

土橋先生 そうです。大問1が小問集合、大問2が長文読解(小説、または評論)の2題構成です。点数配分は小問集合が約4割、長文読解が約6割となります。長文読解が1問なので、文章はだいぶ長めです。

水口先生 ある程度長い文章をスピーディに読み、問題にじっくり取り組む力を見たいということもありますが、加えて、読書の入口としてほしいという気持ちがあります。入試ではありますが、小説にしても評論にしても1つのまとまった文章を読むことは一種の読書機会になるので、問題は解けなかったとしてもそういう経験を増やすことにつながればいいなと思っています。

土橋先生 今年も第1回は小説でしたが、第2回は論説文でした。第1回はたまたま2年連続で小説でしたが、来年どうなるかはわかりません。

物語と評論、どちらか一方を出すということは決まっていますが、どちらを出すかは決まっていないということなんですね。

国府台女子学院 校歌

国府台女子学院 校歌

国語は生活の中で生かされていくもの

授業でもこういうことをやっているのかな、と想像できる入試問題ですよね。

土橋先生 想像力は、机上の学習と日常生活とを結びつけてくれるので、大いに想像してもらうとおもしろいと思います。今年の第1回入試では小説を出しました。きれいごとではないものも含まれる内容なのですが、その文章を読むことによって他者に身を置くということがどういうことかを考えてもらえたらいいなという思いがあって、その作品を選びました。世の中には自分と違う価値観の人がたくさんいます。友だちとのつき合いなどでも、自分とは考えが違うな、と思うことがあると思います。文章を読むことによって得た知識や感じたことを社会生活で生かしていくということが、国語の大切な学びであると考えています。

よく「国語は勉強しなくてもいいわ」「国語なら(その場で)できるから」と言われがちですが、国語は学問として学ぶだけでなく、生活の中で生かされていくものだと思います。すべてのものに興味をもってもらうと、それが国語力の向上につながっていくのではないかと思います。

注意を向けてほしい旬のものや生活習慣

大問1の問3(文章を読んで説明された野菜の名前を答える問題)はいかがでしたか。

土橋先生 「南瓜」はできていました。

水口先生 「瓜」という漢字を思いついた。南蛮の「南」。「カンボジア」という語源。あるいは生活の中で「冬が旬の食べ物」「冬至の食べ物」というところから解答につながるように作成しています。

土橋先生 小学生が「南瓜だ」とわかったとしても、文章を読んで南瓜のことをもっと知ってもらえるとおもしろいなと思って出題しました。わかりやすいヒントが入っているので、半数以上ができていました。今は多くの野菜が1年中スーパーに並ぶ時代ですが、旬のものや生活習慣にも注意を向けてほしいという気持ちがあります。「それは国語なのか」と言われるとどうなのかわかりませんが、それも含めての国語だと思っています。

国府台女子学院  賞状・トロフィー

国府台女子学院 賞状・トロフィー

使い慣れている言葉に注意を傾けよう

日常の言葉にアンテナを張っているかどうか、が狙いなのですね。

土橋先生 外国語やカタカナの文字なども含めて、日常的によく耳にするような言葉でも、その言葉はどのようにできているのか。おそらく普段は考えたことがないであろうところに注目してもらうと、おもしろさを感じてもらえるのではないかと思います。
以前、「5G」も出したことがあります。

「世代」なので「ジェネレーション」ですが、大人でも「G」ってなんだったかなと一瞬思いますよね。

土橋先生 そうなんですよ。ですから解答にたどりつくためのヒントを用意しています。(答えを)知らなくても、文章を読んでいけばわかるように作っています。

インタビュー1/3

国府台女子学院中学部
国府台女子学院中学部1926年に国府台高等女学校が設立され、1951年に、国府台女子学院と改称された。「智慧」「慈悲」という仏教の教えと「敬虔・勤労・高雅」の三大目標のもと、広い視野と深い思考を身に着けた社会で活躍する女性を育て続けている。面倒見の良さが定評で、“生活記録ノート”が担任とのコミュニケーション手段の一つになっており、内容は趣味の話や悩み相談まで様々。「先生が丁寧に返してくれるコメントやアドバイスが楽しみ!」という生徒も多い。自分の気持ちを文章で表現する力の育成にも繋がっている。
大学受験で重要な国数英の3教科は特に手厚い指導を実施。中でも英語は“活きる語学力”を養う。少人数習熟度別の英語授業で、一人ひとりの英語力に合わせたきめ細かな指導を実施。「情報リテラシー」の授業では、アクティブラーニングを通じて、読書力や表現力、問題解決力を身につける。また、放課後の時間を使って、学習の遅れや理解不足を丁寧にフォローアップする。週1時間の仏教の授業では、仏教の教えから哲学的な内容まで、幅広い内容に触れ多角的な視点を身につける。
図書館は、フロアを「ブラウジングエリア」「調べ学習エリア」「本の壁の部屋」と3つのエリアに分け、奥に進むほど静かに本と触れ合えるレイアウトになっている。体育館とほぼ同じ教室10室分の広さの空間で、自らの興味を探求することができる。書架も文系・理系のコーナーで分けており、それぞれ40席を確保。クラスごとの学びのテーマによって場所を使い分け、効果的に学べる空間設計となっている。また、「本の壁の部屋」は、旧図書館の書架をリメイクした、まさに本に囲まれた場所。本来なら閉架書庫に置かれる貴重な本も配架した、静かな場所になっている。
部活動とは別に、専門部と呼ばれる活動を行っている。これは、華道、箏曲(中学部・高等部)、茶道(高等部)をそれぞれ専門の先生に教わる課外活動で、高等部に開設されている表千家の茶道は、3年間継続すると「許状」を得ることができる。制服も、創立100周年を見据える2023年の春に一新。伝統のダークグリーンを継承したブレザーを始め、夏には快適に過ごせるポロシャツスタイルも用意された。また、ネクタイ・リボンの選択や、スカート・スラックスの選択も可能で、毎日楽しく学校生活を送ることができる制服が完成した。