シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

国府台女子学院中学部

2023年03月掲載

国府台女子学院中学部【国語】

2023年 国府台女子学院中学部入試問題より

(問)「さける」「よける」は同じような意味で使われているように思われますが、厳密には違(ちが)いがあります。次の①〜③の例文は「さける」を使うほうが自然である文、④〜⑥の例文は「よける」を使うほうが自然である文です。これらの文の違いを考えた場合、◎の文の(  )にはどちらの語を使うのが自然ですか。あとの記号で答えなさい。

  • ①リスクをさけて行動できることが成功への第一歩だ。
  • ②彼は山奥(おく)にこもり、人目をさけて生活している。
  • ③はじめは苦手な問題はさけて、易(やさ)しい問題から解こう。
  • ④目の前に転がってきたボールをよけて歩き続けた。
  • ⑤あなたの嫌(きら)いなにんじんはよけてあるから、残さず食べなさい。
  • ⑥あの落下物をよけていなければ、今ごろ負傷していただろう。
  • ◎出荷の前に、不良品は(  )おく。
  • (ア)「さけて」を用いるほうが自然である。
  • (イ)「よけて」を用いるほうが自然である。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この国府台女子学院中学部の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(イ)

解説

「さける」を使った①~③の例文と、「よける」を使った④~⑥の例文を見て、それぞれの言葉の使われ方をとらえます。たとえば、「さける」を使った例文では、「リスク」「人目」「問題」が「さける」対象となっています。一方、「よける」を使った例文では、「ボール」「にんじん」「落下物」が「よける」対象となっています。こうした違いを、具体的な物体と抽象的な存在の違いと置くこともできるでしょう。違いを考えて、「不良品」に対して使う言葉として「さける」と「よける」のうち自然である方を答えます。

日能研がこの問題を選んだ理由

「さける」と「よける」という意味の似た言葉のうち、例文にあてはめるのに「自然」であるのはどちらなのかをたずねています。「さける」も「よける」も、ほとんどの子どもたちが使ったことのある言葉でしょう。しかし、両者の意味の違いをはっきりと意識して使ったことのある子どもは少ないかもしれません。この問題では、「さける」を使った①~③の例文と、「よける」を使った④~⑥の例文が示されています。子どもたちはこれらの例文をよく見て、「自然である文」というのはどのようなものか、二つの言葉の意味の違いは何かを考えていきます。これまでに獲得した知識だけを確かめるのではなく、例文を示した相手の意図もふまえて、言葉と向き合う問いです。この問題に出あうことが、自分にとって「自然である」言葉の使い方とはどのようなものなのかということや、似たような言葉がある意義などを、大人も子どもも考える機会となるのではないでしょうか。「だいたい同じなのだから、どちらでもよいだろう」とうやむやにせずに、言葉に対して真摯に向き合ってほしいという、学校からのメッセージも伝わってきます。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。