シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2023年02月掲載

鷗友学園女子中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.生徒の発達段階に合わせた教育を実践

インタビュー2/3

鷗友学園の授業の特徴について改めてお聞かせください。

大内先生 「発達段階に合わせる」というのはものすごく大切に考えています。私は化学と中学の物理を持っていますが、化学で扱うのは粒子や原子、電子といった目に見えないものなので、ある程度生徒が成長してない時に学ばせても単なる暗記で終わってしまい定着しません。日本化学会でもその粒子概念をどの段階で学ばせるか?というのがテーマになるくらい、とても大切なことなんです。今中学一年生の理科は週3時間あるのですが、全部生物にしていて、自分達で実際に実物を触り、観察をしっかりしながらそれを知識として学んでいく。目で見てわかるものをきちんと観察しながら理解することから、中学の理科をスタートします。

中学一年生では実験する姿勢を作るのと一緒に仲間づくり、みんなで積極的に話し合いながら実験に取り組めるという土壌を作ります。中学二年生になると化学2時間、物理2時間、地学1時間と週5時間も理科があります。そこで、実験の基本操作をすべて身に付けるようにしています。たとえば「気体を発生させる」「二股試験管を使う」といった、教科書には簡単に書かれている操作でも、実は気をつけなければならない事はたくさんあります。それらを一つ一つ丁寧に説明しながら、少しずつ自分の頭で考え実験を組み立てられるようにしていきます。

その先の中三、高一、高二では、自分達で工夫して実験方法を考える、装置を組み立てるという課題があります。一番早いのは中学二年生の物理です。仮説検証型実験というのをやるんですが、そこではある現象を見せるものの、その内容は中二までで学んだことではなく、中三や高一前半の内容だったりもします。そこで、一体どんな装置を組んで、どういう実験をすればその現象が再現できるのか?を探るのが第一段階です。次に再現はできたけれど、どうしてこういう現象になるのか?そこにはどのような法則があるのか?を探るのが第二段階で、その後まとめて発表していきます。これにおよそ二ヶ月使います。

こういった学びを得るためには、基礎技術があることに加えて、ただ言われた通りにやるのではなく、考える力や失敗したら失敗した理由をきちんと検証する力というのが必要です。その上で初めて自分で実験を組みたてる力が育っていくようになります。発達段階とその子達の学びの段階に合わせたカリキュラムを大事にしている、理科全体が方向を共有してやっていくのが鷗友スタイルです。

鷗友学園女子中学校 実験室

鷗友学園女子中学校 実験室

解剖の授業は楽しいと感じる生徒が多い

生物の授業では解剖を行ったりしますか?

若井先生 やりますね。中一だと解剖するものとしてはハマグリ、イカ、アメリカザリガニ、フナです。ブタの眼も解剖します。心臓や肺のつくりを学習するときは、クラスで1つですが実際にブタの心臓や肺を見せます。高校生になると腎臓もやります。ほとんどの子は解剖実習を楽しんでいます。もちろん解剖するというのは学校説明会でも話はしていますので、割とそういうことが好きな子が多いです。「明日はフナの解剖をするから、チャイムが鳴ったらすぐ来てね」って言うと、もうすごい速さで生徒たちはやって来ます。

大内先生 生物、特に昆虫などは好きか嫌いかがはっきりしていることもあって、入試問題に掲載する写真も「さすがにこれは…」というものもあります。一昨年は、昆虫に寄生して脳の神経をコントロールして水に飛び込ませるハリガネムシを題材にした問題を出題したのですが、それは写真ではなく生物科の教員が可愛らしいイラストを描いて出題しました。ただ、鷗友には比較的生き物に興味がある子が多い印象があります。そういう子たちが、のびのびとそのスキルを追求できる環境はすごく大事ですよね。

入試広報部長/若井 由佳先生

入試広報部長/若井 由佳先生

インタビュー2/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。