シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

鷗友学園女子中学校

2023年02月掲載

鷗友学園女子中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.身近な時事問題をテーマとした問題

インタビュー1/3

ではまずこの設問の意図からお聞かせください。

大内先生 この問題を出題しようと心に決めたのは2021年の2月の終わりです。そのきっかけは2021年の終わりに栃木県の足利で起こった山火事です。登山客のタバコの火の不始末と言われていますが、広大な面積を焼いて鎮火までに1週間以上かかったということがありました。もう一つは、2020年にコロナ禍になりまして、そこから旅行などになかなか行けない中、1人キャンプという言葉ができたぐらいキャンプが盛んになっていきました。それまで登山やキャンプをやっていなかった方々がアウトドアに参入していき、それと同時にツイッターなどSNSではキャンパーの火の不始末や、正しい場所で焚き火をしないことの危険性について情報として目にするようになってきました。

小学生が燃焼の3条件を学ぶにあたっては、「どうしたら燃えるか」という立場、それから「どうして消えてしまうのか」という立場で学びます。それは、「どうしたら消せるのか」「どうしたら火が付いてしまうのか」という問題に置き換えることもできます。小学生がきちんと教科書で学んでいることを使えば考えられることだと思いましたので、その部分に視点を持てるように山火事を題材にして、燃焼の3条件を取り上げようと考えました。

日常で炎を実際に扱う環境にない子ども達に対して、どのような教育があるのかは知りたいところです。

大内先生 本当に生活に炎がない、そう思います。現代では小学生が炎に囲まれた生活をするのは難しいとも思います。今親御さんもそこまで教えることはできないでしょう。ただ、私たちとしてはいいことも悪い事も含めて、炎のことを分からずに成長させることはできません。だからこそ中学受験まで、知識としてしっかり学ぶ、それを中学に入ってから実際にいろんな実験を通して体験し、その実感として受け止めるということが必要だと思います。

理科/大内 まどか先生

理科/大内 まどか先生

マッチの付け方・消し方を知らない子ども達

大内先生 本校の場合、中学2年生で化学・物理・地学を学びます。私も今年中学2年生のクラスを教えています。最初はまずガスバーナーのつけ方を練習します。マッチのつけ方がわからず、炎を怖がるため、火のついたマッチを手離してしまったりします。そんな状態から、全員が1人でマッチをすってガスバーナーをつけるということを身につけます。

マッチの火を消す事も、最初は上手にできません。すったマッチを振って火を消すこともできないですし、炎が上に上がっていくこともわかってない。それらを1つ1つ具体的に説明して、繰り返して身に付けていくことが特に中学の最初のうちには必要だと思います。我々は、子ども達がよくわかっていないということを前提にして教えていきます。そのためには、まず理論として「こういうことだよね」と学んでいることが大切なんです。だからこそ、失敗した時にふり返ることができると思います。その実験と理論の両面があってはじめて、身に付いていくのかなと思いますね。

実際、生徒たちはどのような解答を書いてきたのでしょうか?

大内先生 得点率でいうと合格者が42%、不合格者が30.5%で、11.5ポイントの差がつきました。ただし、当然ながら部分点もあります。たとえば、燃えてきたものを失くすことが正解ですけれど、「草を刈る」「木を切り倒す」といったものだけではやはり足りません。完全に消えないものに関しては部分点で対応しています。得点できた子の人数は合格者の場合かなり多いと思います。

鷗友学園女子中学校 校舎

鷗友学園女子中学校 校舎

合否を分けた条件の見落とし

合格者は本当にこちらが模範解答としている以上にきちんと書いている子が多かったですね。この問題は、これよりも前の問題から燃焼の3条件を1つずつ確認していく構成になっています。まずは発火点について、次に助燃性のある酸素の存在について、さらに可燃性のものについて聞いているので、その一つ一つに答えるという流れが分かれば、「燃えるものを無くせばいい」という答えに到達するようになっています。合格者は大体模範解答から大きく外れない答えになっています。しかも、しっかり説明して書いてあるので、採点していて「アッパレ」と思うものが多かったですね。

得点にならない場合、一番多いのは条件の見落としです。その条件とは、「強風でヘリコプターが飛ばない」、それから「水や消火剤をまくこと以外」の2つです。そうすると、たとえば「牧草地を水浸しにする」というのは条件を見落としています。また「消防車をたくさん並べて放水する」というのも現実的ではありません。不合格者に多かった解答には「民家を打ち壊す」というのもありましたが、部分点としています。それ以外にも「燃えないもので覆う」といったもの。これは理科の問題なのでそれが何なのかを具体的に答えることが大切ですから、「不燃性のものをかける」とか、「燃えないものを使う」といった物質が想像できないものには点数をあげていません。それと、この条件から一つの山であることを考えると現場の範囲の広さについてしっかり考えないといけません。そこが考えきれてない解答も部分点のみとなっています。

想定外の答えといったものはありましたか?

大内先生 「堀を作る」という解答には、確かにそれが一番だよね、と思いました。また、「ロウソクの炎に金網をかぶせると金網の上には炎は出ず、金網が芯に触れると火が消える」と書いてある問題がありましたので、これを使って「ヘリコプターで巨大な金網を火災現場にかける」というのがありました。ただ「ヘリコプターが飛ばない」という条件には合わなくなっているので、その分は減点して部分点にしましたが、前の問題をヒントにして考えているのは面白いと思いました。私もこの問題を作るにあたり、多くの山火事系の映画やドキュメンタリーを見ました。あの時期は山火事博士になっていましたね。

空欄解答はあったのでしょうか?

大内先生 いいえ、みんなそれなりに書いていました。他の問題で時間がかかってしまってたどり着けなかった子はいましたけれど、諦めてそこだけやらなかったという受験生はいなかったと思います。次が地学の問題で、地学と天体が苦手な人も多いこともあり、ここで点数を取ろうと思ったのか、かなり頑張ってくれました。与えた図については、最初は出題した写真のような絵ではなく、完全な模式図にしようかと考えていたのですが、臨場感があるほうが受験生も中に入り込んで考えられるかな?と思い、写真に近い形の絵を作りました。

正答率を見てどうでしたか?

大内先生 最後の問題なのでこれくらいになるかなと思っていました。きちんと取り組んで書けた受験生が合格したな、という手応えはありましたね。小さい字でいっぱい書く子もいれば大きい字で一行だけ書く子もいました。頑張って読んで、拾えるところがあれば部分点はつけました。

記述の中に事実誤認があった場合にはどう対処されたのですか?

大内先生 余計なものを付けてしまった場合は減点しました。理科では、必ずしも要素加点方式で採点するのではなく、満点にしたい解答であっても間違った部分や条件に合わない部分があれば減点します。一方、この問題には「地上で作業するのに必要な機材はすべて用意されている」と書いてあるので、模範解答以外でも、例えば「巨大な金属の壁を作って火をくいとめる」など豊かな発想力が見られるものには点をあげています。

鷗友学園女子中学校 教室

鷗友学園女子中学校 教室

基本的な知識問題をしっかりと解けるように

全体の問題構成を考える上で注意した点はどんなところですか?

大内先生 入試問題は物化生地を満遍なく出題していますので、全体としては記述や作図、計算などがあまりにも偏ってしまうことがないようにしています。

その上で基本的な知識はとても大切にしているので、それをきちんと問うことは大事だと思ってるんですね。ですから、基本を学んだことが発揮できるような設問は必ず作っています。一方で基本的な知識を、少し切り口を変えて聞くこともあります。ただし、その知識がその後の問題でも使えるといいな、という気持ちは持って作問しています。

理科の場合、図やグラフ、リード文の説明といった情報を必ず総合的に使う力が必要だと思います。鷗友学園では、リード文に無駄な文章はありません。あまりにも分かりにくいから会話にすることはあるかもしれないですけれど、そのリード文を読まなくてもいいような問題は作っていません。逆に読まなくていいのであればその文章を削ります。そうやって情報を整理する力をどの問題の中でも意識しています。

今までしてきた学びから何か発見のある問題を出題したい

大内先生 そして、物化生地それぞれの問題において、「自分が学んだ何の知識を応用すればこれは解けるんだろう」と考えられるような問題を心がけています。入試問題は理科の専任の教員全員で作っています。しかも毎週毎週話し合いをしているので、それぞれお互いに意見交換しながら、小学生の問題として見たときに、「私達の知っているこれを応用させたいんですね」というのを確認しながら作問しています。

どんなに生徒たちがきちんと考えたとしても、採点者の私達に伝わるように表現しないとそれは点数には結びつきません。ですからその表現の仕方を作図にさせるのか、それとも穴埋めでいくのか、記述できちんと受け止めるのかといったバランスは考えて作問します。これが理科の入試問題の作り方ですね。

また、問題を作る際に、よく小学生が解いている問題を「解いた経験があるからこれが答えられた」で終わるのではなく、鷗友の入試問題に取り組むことで、今までの勉強した内容から一歩進んだ学びが得られるように、受験生に何らかの発見を持たせてあげたい、という気持ちでいます。そこで面白いと思って取り組み、自分の知識や考えを表現してほしいと考えています。入試で緊張しているでしょうし、疲れると思うのですが、それでも面白いから解きたいと思える問題が一問でもあると、それが受験生の意欲に繋がるのではないか?と考えています。

先ほど子どもの実体験が少なくなっているといった話がありましたが、今後問題を作問するにあたり、実体験が少ないことで問題の作成スタイルは変わるとお考えですか?

大内先生 小学生でそこまで体験しないと入試問題が解けないという風には考えていないです。もちろん、子供たちにはさまざまな体験をしてほしいとは思いますが、中学に入るためにあれもこれもやらせなければならないと、親御さんが振り回されてしまっては本末転倒です。入試問題は受験生へのメッセージでもありますから「実体験が少ないから解けない」ではなく、中学に入学したら「これを実際にやれる」と期待が持てるような問題を作りたいと思います。

ぜひ、偏差値などの目先の数値だけを見ず、将来に必要な力を理解して学校選びをしてください。私たち私立の学校は、そういった大事なものを忘れずに良い教育を行っていきますので、どうぞお任せください。

鷗友学園女子中学校 実習園

鷗友学園女子中学校 実習園

インタビュー1/3

鷗友学園女子中学校
鷗友学園女子中学校1935(昭和10)年、東京府立第一高等女学校(現・都立白鷗高等学校)の同窓会鷗友会により、母校創立50周年事業として設立。今日の繁栄の基礎を築いたのは、女子教育の先覚者で第一高女の名校長とうたわれた市川源三と、内村鑑三・津田梅子の薫陶を受けた石川志づ。
「慈愛と誠実と創造」の校訓のもと、キリスト教精神を取り入れた全人教育をおこなっている。「女性である前にまず一人の人間であれ」の教えのもと、一人ひとりが自分の可能性に挑戦し、社会の中で自分の潜在的な能力を最大限に発揮することを目指す。生徒・教師が一体となり<よろこび>と<真剣さ>のあふれる日々を送っている。
全館冷暖房完備で、ゆとりと明るさを追求した特別教室・図書室・ホールを整備。非常災害時のための危機管理システムも整った太陽光発電や雨水利用システムなども導入している。実習園、屋外プールなどもある。校外施設として、軽井沢に追分山荘をもつ。
ていねいな指導に定評があり、教師陣はハイレベルな指導のためにカリキュラムの研究検討を重ね、独自の教材を使った授業も展開する。中学では先取り学習をしつつ、聖書・園芸・書道も正課に取り入れている。英語は「使える英語」を目指し、すべて英語で授業を行っている。中2の英・数はクラス2分割。英語と数学は高校で習熟度別授業を導入する。中1では自分レポートを作成。高2で文系(芸術系を含む)・理系コースに分かれ、選択科目を多く設定し、きめ細かく進路に対応している。高3では主に演習を実施。数多くの特別講習や小論文の個別指導など、進学指導も充実している。
2期制を実施。進路指導では、自分史・環境・福祉・職業・平和などに取り組む。社会で活躍する先輩の話を聞く機会もあリ、自分を見つめ、社会を知り、生き方を考える。70年の伝統を持つリトミックを全学年で週1時間実施し、身体表現を豊かにし、運動神経を高める。課外活動として、茶道、華道、書道、手話、英会話、Debate Workshopもある。文化祭や運動会のほか、スクールコンサート、クリスマス会、中1の軽井沢追分山荘生活学習、中2のスキー教室、中3の沖縄修学旅行などの年間行事を実施。チョート校サマースクールやチェルトナム・レディース・カレッジ研修など、国際理解教育にも力を入れている。クラブ活動は、学芸部8、運動部13、同好会15で、中高合同で活躍している。