シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

鷗友学園女子中学校

2023年02月掲載

鷗友学園女子中学校【理科】

2022年 鷗友学園女子中学校入試問題より

図のような山の頂上で山火事が起こりました。この火事は、北寄りの風にあおられて、南側の斜面(しゃめん)に燃え広がりました。この山の南側の斜面は落葉樹林ですが、東側と西側の斜面は岩場で植物はほとんど生えていません。また南側の山のふもとには牧草地帯が広がり、その先には民家があります。この火事は数日後にはふもとの牧草地帯に到達(とうたつ)することが予想されます。しかし、折からの強風のためヘリコプターを使って消火剤をまくことができません。また、範囲が広いため、十分な放水もできません。

問題図

(問)火が民家に到達する前に延焼を食い止めるためには、水や消火剤をまく以外にどのような方法が考えられますか。ただし、消火作業にあたる人手は十分にあり、安全に避難(ひなん)する場所も確保されています。また、地上で作業するのに必要な機材等はすべて用意されており、作業に必要な時間も足りているものとします。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この鷗友学園女子中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

山とふもとの牧草地との間の土を掘り、燃えるものが無い場所を帯状に作って火を食い止める。

解説

火を消すためには、「燃えるものを無くすこと」「燃えるものの温度を下げること」「燃えているものと酸素をふれなくすること」の3つの方法が考えられます。

問題文より、水や消火剤をまくことができない状況であることが説明されているので、3つの方法のうち、「燃えているものの温度を下げること」と「燃えているものと酸素をふれなくすること」はできないと考えます。したがって、残りの「燃えるものを無くすこと」を実現するための具体的な手段を考えます。

たとえば、火が燃え移る前に、牧草をすべて刈り取ることや、山とふもとの牧草地との境目の土を広い範囲にわたって掘ることなどが考えられます。しかし、牧草を全く残さずにすべて刈り取ることは困難なので、土を掘って、燃えるものが全く無い場所をつくることの方が、延焼を食い止める方法としてふさわしいと考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

テレビの報道などを通して、洪水や土砂くずれ、森林火災など、さまざまな災害を目にする機会があります。災害が遠い外国のような場所で起きているとき、自分とはあまり関係がない事のように感じられることもあります。しかし、災害の原因や災害を防ぐしくみに目を向けてみると、子どもたちが普段学んでいる知識と結びつけてとらえることができます。「森林火災」の広がりを防ぐしくみは、理科で学ぶ「燃焼の三条件」と深い関係があります。どのようにすれば、「燃焼の三条件」のうちの1つをなくすことができるのかを考えることによって、「森林火災」と学んだ知識を結びつけることができるのです。

このように、学んだ知識と現象を結びつけることによって、自分とは遠く離れた出来事が身近なものとして感じられるようになり、自分自身でいろいろなことを発見できるようになります。

学んだことを、身の回りで起こっている現象や、報道で取り上げられている現象に生かすことによって、学んだことと社会とのつながりを感じることができ、自分自身の成長にもつながっていく。そんなことを感じさせてくれる問題であると感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。