出題校にインタビュー!
自修館中等教育学校
2023年02月掲載
自修館中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.探究の手法を授業にも積極採用
インタビュー3/3
「生徒が自ら問いを立てる」が自修館スタイル
授業の様子を教えてください。
鈴木先生 本校の国語の授業で特に意識しているのは、教員が発問して主導するのではなく、生徒が自ら問いを立てる探究的な学びの実践です。例えば小説を読んだら、各自で「問い」を立てます。問いはタブレット端末で共有し、問いについてグループワークで話し合います。教材によってはテーマが設定されている場合がありますし、グループごとに違うテーマを話し合ってもらうこともあります。
問いの「質」はどうですか。
鈴木先生 教員が立てる問いは“定番化”してしまいます。ヘルマン・ヘッセの『少年の日の思い出』は中1では何度も教えていますが、生徒は「ここを疑問に思うのか」というところで問いを立てます。
それは、大人とは違う、子どもならではの視点かもしれません。大人は表現が入り組んでいるところに目が留まりますが、生徒はすんなり読めるところでも「なぜ?」と立ち止まります。実はそこが、登場人物の内面を表していたり、場面設定の大切なところと関わっていたりします。定番の教材は先入観や思い込みが入ってしまうので、生徒の問いは作品との向き合い方をフラットにしてくれます。

自修館中等教育学校 図書館
自分で問いを立てることで読解が深まる
鈴木先生 探究的手法を取り入れることで、学びのアプローチが変わってきました。まだまだ手探りの状態ですが、やってみると、生徒はなんとか問いを立てようとしてくれます。着眼点のよい問いが立てられると、その教材に主体的に向き合うようになりますし、問いを立てることで作品を深く読み解くことができます。よい問いをみんなで共有することで、クラス全体で読解を深めることもできます。
大藤先生 現在、探究的手法を使った教科教育の見直しを、全学的に進めているところです。探究の機会をできるだけ設けるには、普段の授業でも行うことが大事ではないかと思います。
探究的な手法を授業でも取り入れることで、学びが主体的になります。そして、自由な発想も生まれやすい。生徒が自ら課題を設定し、解決するプロセスを経験できるように、各教科の授業の中でそうした機会をなるべく設けるようにしています。将来にわたり学び続けていく姿勢を、中高6年間で身につけてもらいたいと思っています。
友達の力を借りて自分の学びを前進させる
好きなこと・興味のあることは問いを立てやすいと思うのですが、そうではない場合、生徒さんにどのようにアプローチしているのですか。
鈴木先生 友達が立てた問いを考えてみることで、少しでも読み方が変わればいいなという期待はあります。学校で学ぶ意義の1つは、「集団で学べる」ことです。自分一人では学べないことでも、友達の力を借りて少しでも自分の学びが前進できればと思います。
大藤先生 そこのところはグループワークが大切ですね。従来の学びの楽しさは問題が解けることが先行されてきましたが、探究のグループワークはできる生徒もできない生徒も、正解のない問いについて考えるので、フラットな関係で意見を出し合い、みんなで考えていくプロセスが楽しくなってきます。これまでとは違う興味の引き出し方ができていると感じます。

自修館中等教育学校 校舎内
「伝わった」という達成感を積み重ねる
鈴木先生 授業を行うにあたり私が心がけているのは、授業が「楽しい」ということです。単純に作品がおもしろい、問いを立てることで刺激があるなど、「楽しい」にはいろいろなレベルがあります。発見や気づきなどワクワクする要素を盛り込むことで、国語への興味・関心を持ち続けてもらえるのかなと思います。特に中1・中2で意識しています。
問題が解ける(できる)と楽しくなりますが、国語で「できた」と実感するのは、例えば「自分の考えが相手にうまく伝わった」ということでしょうか。
鈴木先生 「伝わった」という達成感はとても大事です。それは、自分が言葉をうまく使えた(言葉選びがうまくできた)、相手に届いたということです。それを1つでも2つでも多く経験することで、「自分の考えを言葉で伝えよう」とする動機になるでしょう。
そのために、伝える場面をできるだけ多く設けるようにしています。プレゼンの発表や、試験の記述も表現する機会の1つです。失敗してもどうすればうまく伝えることができるか、失敗から学ぶことが大事です。
三者面談で自分の進路をプレゼン
大藤先生 高1の秋に、文理選択を含む進路選択について三者面談を行います。その際、生徒は保護者と担任教員に向けて、身につけた探究の手法を駆使し、自分の進路の考えをプレゼンします。生徒が自分の進路にきちんと向き合ってほしいという思いから、最近始めました。
PowerPointで作成した資料を見せながら、「なぜこの進路を選んだのか」「だからこの大学を目指したい」ということを説明します。自分の将来に関わることなので、生徒は一生懸命に取り組んでいます。
希望の進学ができるように、「今、こんな努力をしています」というアピール、例えば「夏休みにこの大学のオープンキャンパスに参加した」という説得材料も用意します。主張するだけでは相手を説得できないなど、探究で学んだことを生かします。
鈴木先生 探究活動が学校生活に浸透しているからこそ、スムーズにできるのだと思います。進路のプレゼンも、生徒の抵抗感はないと思います。自分の進路について堂々とプレゼンするお子さんの姿を見て、泣いて喜んだ親御さんもいらっしゃったと聞いています。

自修館中等教育学校 日時計
探究を発展させた「C-AIRプログラム」を開始
大藤先生 本校は1999年の創立時から、探究の授業を全国に先駆けて導入してきました。これまでの成果を踏まえてバージョンアップし、2020年度に「C-AIR(シー・エア)プログラム」を立ち上げました。
「C-AIR」では段階を追って社会の課題を探究していきます。中1は社会的テーマについて人文・社会系の探究のアプローチを、中2は科学的テーマについて理工・生物系の探究のアプローチを学び、大学の講師など外部に取材します。中1・中2はグループで、中3からは個人で、ゼミ形式で専門的な探究に挑戦します。自分の問いに対する根拠を集めて、高1で論文にまとめます。高2は、それまでの経験や身につけた力・知見を生かして、グループでも個人でも、自由な形式で探究します。生徒が自律的にデザインするスタイルは、今の高2が初めてです。
2022度は、本プログラムが「三菱みらい育成財団」の助成に採択され、専門家に講演していただいて教えを請う機会をつくることができました。生徒たちは大学の研究の手法を取り入れて学ぶことができています。このプログラムを継続し、生徒たちの成長を見守っていきたいと思います。
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