シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

自修館中等教育学校

2023年02月掲載

自修館中等教育学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.自分の考えを表現する条件作文問題

インタビュー1/3

四字熟語の座右の銘から、言葉の活用度を測る

鈴木先生 本校の国語の入試問題は、「言葉の知識」「読解」に加えて、「条件作文」を出題しています。この問題では「四字熟語」を聞いています。言葉の意味を踏まえて、自分の目標や日常生活の場面に、知識として持っている言葉を使えているかどうかを試しました。

条件は全部で4つ。「座右の銘の四字熟語」「意味」「選んだ理由」という提示した順番で書いていくと、論理的に説明でき、4つ目の条件「3文以上で書く」もクリアできます。多少の減点(漢字間違い、助詞の使い方の間違い、主語と述語の不一致)はあったものの、概ね条件に沿って書けていました。

国語科主任/鈴木 雄一郎先生

国語科主任/鈴木 雄一郎先生

自分を励ますような四字熟語が多かった

受験生はどんな四字熟語を選んでいましたか。

鈴木先生 「一生懸命」のように頑張る意味の四字熟語が多く挙げられていました。「一生懸命」は日常よく使われている言葉ですから、予想通りでしたね。
自分を励ますような四字熟語が多かったのは、設問で、座右の銘を「自分を励ましたり、戒めたり、自分の目標を思い出させてくれたり」と説明しているからでしょうし、受験生という自分が置かれている状況もあるでしょう。ただ、戒めるものはあまり見当たりませんでした。
印象的だったのが「点滴穿石」を挙げた解答です。四字熟語の漢字を間違えれば減点になりますが、この受験生は「穿つ」という難しい漢字を正しく書くことができていましたし、意味を踏まえた理由もきちんと説明できており、感心しました。

自分ごととして考えられていればOK

鈴木先生 「自画自賛」という解答もありました。ポジティブ思考になるように、自分を励ます言葉として挙げていました。また、「一長一短」を挙げた理由は、「誰しも良い面、悪い面がある。悪いところにばかり目が行きがちだけれど、良いところに目を向けて自分を前向きに持っていく」と説明していました。

「一長一短」も「自画自賛」も、自分が書けるものを選んで、その後に理由を考えたのでしょうか。

鈴木先生 50分という限られた試験時間の中で、多少後付けでも、条件を満たして書けたことは評価できます。この四字熟語を、どうやって座右の銘につなげるのかなと思いましたが、意味の範囲内で解釈し、自分ごとに落とし込んでいました。本来の意味から明らかに外れることなく、自分に引きつけて書くことができれば得点できます。

自修館中等教育学校 校舎

自修館中等教育学校 校舎

伝わりやすさは「1文の長さ」も意識しよう

鈴木先生 1文または2文で書いて、「3文以上」という条件を満たしていない答案は1割程度あったでしょうか。例えば、「私の座右の銘は○○○○です。意味~で、~の理由で選びました。」というように、意味と理由をつなげて書いてしまうと2文になり、減点となります。

「長くなりすぎないように、文を区切ろう」と言っても、ずらずら続けがちですよね。

鈴木先生 授業でもわかりやすい文章として、「1文は簡潔に」ということは常々言っています。1文のめやすは40字程度です。長々と続けないこと、入試で緊張しているでしょうが、それが大事です。

1~3の条件に沿って書けば論理を構成できる

子どもの文章は、1文が短くても箇条書きになっていることが結構あります。受験生は、文と文をうまくつなげて論理展開できていましたか。

鈴木先生 この問題は、条件が文章を組み立てる誘導になっています。1つ目の条件「私の座右の銘は○○○○です。」は、そのまま当てはめます。続けて、「この言葉の意味は~です。」「なぜ選んだかというと~だからです。」というように、2つ目の条件「言葉の意味」から3つ目の条件「理由」につなげると、論理展開がスムーズです。
頭の中の考えが整理されていれば、整理された文章が書けるのではないかと思います。それを普段からどれだけ意識して練習しているかが問われます。

条件作文の受験生の取り組み具合をどのようにみていますか。

鈴木先生 無答もありますが、いろいろなテーマにも対応できるように対策していると感じます。入学した生徒を見ると、書くことには抵抗感がないかなと思います。
入試説明会では、条件作文の添削を親御さんがしてくださいと話しています。大人が添削することで、大人の言葉遣いが身につくようになります。

自修館中等教育学校 掲示物

自修館中等教育学校 掲示物

教員が四字熟語活用の手本を示す

鈴木先生 言葉は知っているだけでは宝の持ち腐れになります。使ってこそ、言葉を習得する意味があります。言葉を大事にするというのは、言葉を知っているだけでなく、いかに使うか、実生活に役立てられるかだと思います。それができて初めて自分の言葉になるのです。

日常会話で四字熟語や慣用句を使えればいいのですが、実際には難しいですね。そこは、教師が手本を示す必要があると思い、意識的に使うようにしています。大切なことを伝えたいとき、くどくど言うよりも、短い言葉にエッセンスが凝縮されている四字熟語や慣用句で完結に伝えた方が相手に届きやすいと思います。
生徒は「そんな表現もあるんだ」と気づいたり、知らない言葉は意味を調べたり興味を持ってくれています。

インタビュー1/3

自修館中等教育学校
自修館中等教育学校スクールバスにて小田急線愛甲石田駅より約5分、JR東海道線平塚駅より約25分。目の前には緑多い大山と丹沢の山々があり、恵まれた自然環境。校舎は、5階建ての普通教室棟と特別教室棟からなり、図書館、PC教室、自習室などを備え、高度情報化社会に対応したつくり。体育館や屋上にプールを備えたアリーナ棟もある。学校食堂の枠を超えたレストラン、カフェテリアも好評。
建学の精神「明知・徳義・壮健」の資質を磨き、実行力のある優れた人材を輩出し人間教育の発揚を目指す。そのため、学力とともに、「生きる力」を育成するテーマ学習や心の知性を高めるEQ教育などユニークな取り組みを実践。教育を“こころの学校作り”ととらえ、学校を想い出に感じ、帰れる場所に、と家庭とも連携を保ちながら、きめ細かい指導にあたっている。
中1~中3を「前期課程」、高1~高3を「後期課程」とした、高校募集のない完全中高一貫の体制。3カ月を一区切りとする4学期制で、メリハリをつけて効果的に学習を進めている。英・数は高2から習熟度別授業を実施。英語の副教材には、『ニュートレジャー』を使用。興味のあるテーマを選んで継続して調査・研究を行う「探究」の授業もある。指名制の補習と希望制の講座がさかんに行われている。また個別指導が多いのも特徴。
週6日制だが、土曜日の午後は自由参加の土曜セミナーを開講。「遺伝子組み換え」「古文書解読」「伊勢原探訪」など生徒対象のものだけでなく、保護者対象の講座も多数用意している。「探究」以外でも心の知性を高める「EQ」理論に基づいた心のトレーニング「セルフサイエンス」や、国際理解教育など、特色ある教育を展開。中1のオリエンテーション、山歩きに挑戦する丹沢クライム、芸術鑑賞会などの行事がある。文化部9、運動部10のクラブ活動も活発。「探究」の一環として、高2でオーストラリアでの海外フィールドワークが行われる。