シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄光学園中学校

2023年01月掲載

栄光学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.基本理念「個々の能力をのばし助ける」が教育活動の軸

インタビュー3/3

補習のやり方もさまざま。根本的な課題克服を重視

成績が芳しくない生徒さんに対して、どうされていますか。

小松先生 この学年はここで補習をやりましょうというような、学校としての決まりがあるわけではありません。ただ、中1、中2あたりには中学校の勉強のリズムをなかなか作れない子がいます。そういう子については学年単位で判断して細かく対応しています。生徒の様子を見ながら、適切な方法で行うという感じです。個別に呼んで話をする場合もありますし、何人かに声をかけて、まとめて講義を行う場合もあります。長期休暇を活用して立て直せるよう、夏休みなら1学期に学んだことを一通り確認したり、夏休みをどのように使って勉強していくかを生徒と話したりしている先生もいます。

須田先生 私は1対1で教えることが多いです。対応できる人数は少ないかもしれませんが、勉強のリズムを作るためには1対1が適していると思うからです。生徒のやる気を促すことが目的なので、無理に学習させることはしません。その子のレベルに応じた課題を選び、無理のない範囲で「今週はここまでやろうね」などと目標設定をします。そして週に1回程度、報告してもらう機会を作って状況を確認します。学習が進んでいなくても報告しに来られるような関係になることが、まずは大切だと思っています。

栄光学園中学校 聖堂

栄光学園中学校 聖堂

算数と数学は異質ではない。上乗せする感覚で学ぼう

算数から数学に変わるところでつまずく生徒さんはいますか。

小松先生 いますね。特に中1の最初は、いわゆる算数が得意な子は算数の範囲で解けてしまうところがありますので、それで満足してしまうことがあります。文字の使い方や、等式、不等式という考え方が身につかないまま、中2、中3になってしまい、苦労する生徒もいます。ですから特に中1、中2の授業を担当する先生方は、生徒の様子を見ながら、これからは文字を使って考えることも大事であると伝わるように、意識して教えていると思います。

須田先生 逆に高3あたりになると、小学校時代に培ったものをすべて忘れているかのようになるので、私は「中学受験でやったことを思い出せ」と言うことがあります。中学受験で使えるような題材を用意して「みんな得意だったでしょう。やってみて」と促します。中学生になると算数から数学に変わりますが、中学受験で学んだことが無駄になるわけではありません。小学校時代に学びに上乗せしていくような感じで数学を学んでほしいと思っています。

友だちとのやりとりの中で弱点克服も

中高時代に数学がおもしろいと思うことができれば、「数学ができないから文系」という選択をせずに済みますね。

小松先生 きっかけを作るのは教員だけではありません。友だち同士でもいろいろな話をしていて、なるほど!こんなふうに解き進めていけばいいのか、と気づくことがあります。友だちとのやりとりの中で弱点を克服することもある。そこが6年間一緒に学べる中高一貫校のいいところだと思っています。

たしかに高校受験がないというのは大きいですね。

小松先生 そこで環境ががらっと変わりますよね。それはそれでいいところもあるとは思いますが、本校では環境が変わらないことが良い方向に働いていると思います。

お話を伺っていると、生徒同士、あるいは生徒と先生の関係性など、さまざまなところに「生徒一人ひとりが神から与えられた能力を十全にのばし助けること」という栄光学園の基本理念が反映されているように思います。

須田先生 そうであれば嬉しいですね。それを目指しています。

栄光学園の6つのキーワードの一つ「MAJIS(自分の能力を可能な限り成長させる)」もそうですし、「AGE QUOD AGIS(やるべきことを、やるべきときにやる)」は、先ほどの手を動かすこととつながっているのかなと考えながら聞いていました。

須田先生 そういうことを在学中はあまり意識しませんが、大学や社会に出ると、自分はこの学校で学んだんだなということを思い知らされます。

栄光学園中学校 聖堂

栄光学園中学校 聖堂

自分で判断する軸を授けてもらったことに感謝

須田先生は卒業生ということですが、なぜ、中学受験で栄光学園を選んだのですか。

須田先生 名前が格好よかったからかな(笑)。興味をもって自分なりに学校を調べたり、時々問題集を広げたりしていました。その問題に、解いてみたいというわくわく感やおもしろさを感じたことが縁になりました。
あまり学校のことをよく知らずに入ったので、神父様にいろいろ教えてもらって、生きるための軸ができました。もちろん勉強をはじめ、いろいろなことを教わったのですが、自分で判断する軸をこの学校でいただいたことに何より感謝しています。

私は(生き方の基準となる軸を持つことができて)よかったと思いますし、大事にしたいなと思います。それを次につなげていきたい、という気持ちをもって生徒と接しています。

校風を作っているのは「好奇心」と「芯」

小松先生は、栄光学園の校風についてどう思われますか。

小松先生 芯が通った学校だな、と思います。教え始めたころは、神父様が2人くらいずつ各学年に入って、学校が大事にしていることを毎日のように話してくださいました。教員の間でもそういう話がたくさん出ていていて、栄光学園はこういう学校である、という姿(理念)がはっきりと見えるのです。「好奇心」と「芯」がこの学校の校風を作り上げているんだ、すごいなと、最初は圧倒されました。

学校の考え方やキリスト教の理念はすっと入ってきましたか。

小松先生 なかなかそうはいかなかったですね。私は信者ではないので、その考え方について最初は戸惑うところもありました。ただ、日常の会話や教育活動のあちこちで、学校として大事にしたいことや育てたい生徒像というものを感じることができて、そのつど素晴らしいと思いました。そういうところに感化されて、自分自身の生き方や生徒への接し方などが大きく変わっていきました。

キリスト教に縁のない保護者のみなさんも、小松先生と同じように受け止められるのでしょうね。

小松先生 はじめからキリスト教に深く理解のあるご家庭ばかりではありません。保護者の方々にも、「父母会」や地区会(地区別懇談会/通学地域を20地区に分けて、各地区で実施)などで、保護者同士だけでなく、教員と話をしたり、校長先生の話を聞いたりする機会があります。そうしたいろいろな機会を通じて理解が深まっていくものと思います。学校の考え方やキリスト教に基づいた理念には生きていく上で非常に大事なことが示されていると思いますので、いつかそういうものを得られてよかったと思っていただけるとありがたいですね。

栄光学園中学校 グラウンド

栄光学園中学校 グラウンド

インタビュー3/3

栄光学園中学校
栄光学園中学校1947(昭和22)年、イエズス会運営の中学・高校として横須賀に創設。初代校長はグスタフ・フォス師。1957年に設立母体の上智大学から独立、学校法人栄光学園となり、1964年現校地に移転する。当初はしつけの厳しさで知られたが、1970年代からは進学校として一躍全国的に知られるようになった。
キリスト教的価値観に基礎を置き、「生徒一人ひとりが人生の意味を深く探り、人間社会の一員として神から与えられた天分を十全に発達させ、より人間的な社会の建設に貢献する人間に成長するよう助成すること」を教育理念とする。ただし正課として宗教の授業を設けたり、礼拝を義務付けたりすることはない。6年間完全中高一貫教育、通学時間の制限などを堅持している。
2017年、新校舎が完成した。低層2階建てで、2階部分は木造校舎。教室から容易に大地へ降りられ、人が自由に集えるスペースを設けられていることで、仲間や先生との交流を自然に育める環境づくりがされている。豊かな自然環境を生かしながら、先進のコンセプトを取り入れた「みらいの学校」である。約11万m2の校地は、首都圏私立中学校のなかでも有数の広さ。トラックフィールド、サッカーグラウンド、テニスコート、バスケットコート、野球場などを備える。そのほか、コンピュータルーム、聖堂、図書館などがある。丹沢札掛には山小屋がある。
中高6年間を初級・中級・上級の3ブロックに分け、各発達段階にふさわしい指導目標を掲げ、適切な指導方法を工夫しつつ教育を実践。決して「進学校ではない」としながらも、カリキュラムの内容はレベルが高く、進度も速い。英語は『ニュートレジャー』を使用。初級では日本人教師と外国人教師のペアで行う授業があり、中学2年~高校2年ではGTECの受験を義務付けている。高校1年では週1時間、必修選択の「ゼミナール」があり、中・韓・スペイン語の講座、マジック研究、料理研究、プログラミングなど、授業では扱わないテーマの講座も行っている。その中には、毎週異なるOBを招き、多角的に話を聞く講座もあり、放課後は他学年も聴講ができる。
イエズス会運営の学校独自の「中間体操」のほか、30kmを踏破する「歩く大会」など体を鍛える行事が多い。大船駅からの、通称「栄光坂」を通学することも鍛練の後押しになっているようだ。「愛の運動」と呼ばれるボランティア活動では養護施設などへの訪問や、クリスマスの施設招待など、カトリック校らしい多岐にわたる運動を実践。
課外活動としての聖書研究会への積極的な参加も呼びかける。フィリピンの姉妹校との交流は単なる語学研修ではなく、アジアの国に住む人とのふれあいから、自らを振り返り、成長する機会としている。また、イエズス会の運営する大学のボストンカレッジで、アメリカの高校生とともに学ぶカトリック・リーダー研修もある。クラブ活動は原則として全員参加。活動は週2回だが、工夫して熱心に活動している。