シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

栄光学園中学校

2023年01月掲載

栄光学園中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.最初の計算問題から手を動かしながら考え続ける、気力と体力が必要

インタビュー1/3

計算する前に考え、工夫してほしかった

この問題の出題意図からお話いただけますか。

小松先生 この問題は最初の大問です。受験生が取りかかりやすいように、計算を中心とした問題を出題しました。例年、心がけているのは、単純な計算だけでは終わらない問題を作るということです。もちろん最終的には計算して答えを出すのですが、計算する前にどうすれば問題の条件をクリアできるだろうか、と考えて、実際に手を動かして計算しながら組み合わせなどを工夫できるような問題を作りたいという意図をもって作成しています。
分数の和で考える問題は過去になかったので、少し条件をつけて、その条件に合うものを探し出す問題を出してみようか、ということになりました。

須田先生 ともすると小学生の範疇を超えて、難しい問題を作りがちですが、この問題はほどよい計算量と、わかりやすく試行錯誤ができる題材ではなかったかと思います。(問2では)小さくなるにはどうするのだろう。(問3では)どういう時に整数になるのかな、ということを、考えてほしいという気持ちがありました。

問2にはどのような解答がありましたか。一番小さな数を書く子が多かったですか。

小松先生 そうですね。計算は大変になりますが、パターンとしては一番小さな数を書いた子が多かったです。中には計算を少し簡単にできないかなと考えて、工夫して答えを導き出している受験生もいました。

須田先生 最初に一番小さいものをみつけて、どこかを入れ替えて、計算しやすいところで答えを求めていくことになると思います。正答が1つでない問題です。小学生は答えが1つの問題を解くことが多いので、そういうことを考えるのもいいかなと思いました。

数学科主任/小松 道治先生

数学科主任/小松 道治先生

受験生の出来は想定内だった

須田先生 問3では7をどう処理するかということがポイントになると思います。5つ(の分数)とも整数にするのは、そんなに難しいことではないと思います。7の場合、1分の7にすれば整数になるのですが、5つの分数の中で整数にならないものがあるけど、和が整数になるものを考えてほしいと思いました。

家に持ち帰って、もう一度考えたくなる問題ですよね。実際にそういう受験生もいたのではないでしょうか。

須田先生 そうだとありがたいですね。

受験生の出来は予想の範囲内でしたか。

須田先生 最初は単純な計算問題ですから手をつけやすかったと思います。

小松先生 問4からかけ算になりますが、こちらは少し難しく、最後の問題は正答率が下がりました。

須田先生 (受験生の様子を見ると)作業はきつそうでした。試験で問うことではありませんが、問3の答えは何通りあるのかを数えてもらうと、それはそれでおもしろいと思います。

栄光学園中学校 校舎

栄光学園中学校 校舎

受験生がおもしろがる問題を作りたい

入試問題全体に話題を広げてお話いただけますか。

小松先生 例年、心がけていることは、大問1の1番は手をつけやすい問題にして、その後の問題も実際に手を動かしながら試行錯誤してもらえる問題を作成するということです。条件が少しわかりにくい問題については丁寧に説明しています。問題に立ち向かう中で、いろいろな気づきを得られるような問題になるよう、意識して作っています。
例えば、すごろくとルーレットを用いた問題も、最初は動きがわかりにくいのですが、それがわかって、手を動かしながら見えてくるものがあるとおもしろくなるのではないかと思います。実際に、そのあたりは手を動かしながら解いている受験生が多かったです。

すごろくの問題ではサイコロ(正四面体)ではなく、ルーレットで進行する形をとっています。その意図を教えてください。

須田先生 正四面体は出た目がどこになるかわからないじゃないですか。それを説明しないと迷ってしまいます。それが本質ではないので外しました。入試ですが、受験生におもしろがってほしいんですよね。そのためには我々がおもしろがらないと届かないと思うので、きちんとおもしろがることを大事にしています。また、いろいろなことを調べて、小学生がどこまでできるかを把握して作問することを心がけています。ここまでなら良い問題になるだろうという手応えをもって出題しています。

受験生は試験時間の最後まで全力で走っている

大問4題という構成についてはいかがでしょうか。

小松先生 4題と決めているわけではありませんが、どのくらい解く時間が必要かを考えた上で問題数を決めています。

須田先生 受験生の様子を見ると、時間をもて余している受験生はいないですね。試験時間の最後までみんな全力で手を動かしていて、終了の合図で「ハァ」という感じでした。

小松先生 自分なりの答えを出して満足するのではなく、まだ工夫ができるのではないか、別の考え方もできるのではないかと考え続けたり、後からでも考えたりすることができるような問題を作りたいと思っています。

須田先生 そのまま解くというよりは、先ほどの計算問題のように、工夫をすると計算がだいぶ楽になる、というようなことを散りばめているつもりです。

入試が終わった後に、在校生と入試問題を解く機会はありますか。

須田先生 特に時間を設けているわけではありませんが、勝手に解いて持ってくる生徒はいますね。入試を楽しみにしていて、次の登校日に(算数の入試問題について)講評を言いに来る生徒もいます。あるいは問題に自分なりの工夫を加えたものを持ってきます。「こういう思考をするなら、こういう数字にしたほうがもっといい」というような言い方をしてきます。

栄光学園中学校 掲示物

栄光学園中学校 掲示物

入試問題には数学科の英知と愛情が詰まっている

作問にかかわる中で、ご自身の考え方、作問の仕方などに影響を受けているところはありますか。

小松先生 作る側になって、よりおもしろくするにはどうすれば良いかということを、みんなで考えて練り上げる作業はすごく大変だなと感じています。

須田先生 私も、自分が作問する立場になって初めて、こんなにも教員たちが熱意をもって入試問題づくりに取り組み、メッセージを込めた問題を作ろうとしていることを知りました。作問している時はすべて予想に過ぎないですし、我々の中で予測したことが常に当たるわけではないです。きちんと受け止めて、次につなげていくことが大事であると感じています。

インタビュー1/3

栄光学園中学校
栄光学園中学校1947(昭和22)年、イエズス会運営の中学・高校として横須賀に創設。初代校長はグスタフ・フォス師。1957年に設立母体の上智大学から独立、学校法人栄光学園となり、1964年現校地に移転する。当初はしつけの厳しさで知られたが、1970年代からは進学校として一躍全国的に知られるようになった。
キリスト教的価値観に基礎を置き、「生徒一人ひとりが人生の意味を深く探り、人間社会の一員として神から与えられた天分を十全に発達させ、より人間的な社会の建設に貢献する人間に成長するよう助成すること」を教育理念とする。ただし正課として宗教の授業を設けたり、礼拝を義務付けたりすることはない。6年間完全中高一貫教育、通学時間の制限などを堅持している。
2017年、新校舎が完成した。低層2階建てで、2階部分は木造校舎。教室から容易に大地へ降りられ、人が自由に集えるスペースを設けられていることで、仲間や先生との交流を自然に育める環境づくりがされている。豊かな自然環境を生かしながら、先進のコンセプトを取り入れた「みらいの学校」である。約11万m2の校地は、首都圏私立中学校のなかでも有数の広さ。トラックフィールド、サッカーグラウンド、テニスコート、バスケットコート、野球場などを備える。そのほか、コンピュータルーム、聖堂、図書館などがある。丹沢札掛には山小屋がある。
中高6年間を初級・中級・上級の3ブロックに分け、各発達段階にふさわしい指導目標を掲げ、適切な指導方法を工夫しつつ教育を実践。決して「進学校ではない」としながらも、カリキュラムの内容はレベルが高く、進度も速い。英語は『ニュートレジャー』を使用。初級では日本人教師と外国人教師のペアで行う授業があり、中学2年~高校2年ではGTECの受験を義務付けている。高校1年では週1時間、必修選択の「ゼミナール」があり、中・韓・スペイン語の講座、マジック研究、料理研究、プログラミングなど、授業では扱わないテーマの講座も行っている。その中には、毎週異なるOBを招き、多角的に話を聞く講座もあり、放課後は他学年も聴講ができる。
イエズス会運営の学校独自の「中間体操」のほか、30kmを踏破する「歩く大会」など体を鍛える行事が多い。大船駅からの、通称「栄光坂」を通学することも鍛練の後押しになっているようだ。「愛の運動」と呼ばれるボランティア活動では養護施設などへの訪問や、クリスマスの施設招待など、カトリック校らしい多岐にわたる運動を実践。
課外活動としての聖書研究会への積極的な参加も呼びかける。フィリピンの姉妹校との交流は単なる語学研修ではなく、アジアの国に住む人とのふれあいから、自らを振り返り、成長する機会としている。また、イエズス会の運営する大学のボストンカレッジで、アメリカの高校生とともに学ぶカトリック・リーダー研修もある。クラブ活動は原則として全員参加。活動は週2回だが、工夫して熱心に活動している。