シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

香蘭女学校中等科

2022年12月掲載

香蘭女学校中等科の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.考えるための基礎力を身につける

インタビュー2/3

日常生活の中にも科学はたくさんある

理科の入試問題で大切にされていることを教えてください。

中島先生 まず基礎力が身についていることです。教科書レベルの知識は最低限持っていてほしいですね。知識は丸暗記するのではなく、知識を使って考えてみましょう。
また、周辺分野にも目を向けるようにしましょう。例えば、アサガオを育てていると虫(害虫)がついていることがあります。1つのことをやっていると、それに伴って見えてくるもの、気づくことがあると思います。

日常生活でも身の回りの事柄にアンテナを張って、興味を持ってほしいと思います。明るく輝く月を見て、「光はどうなっているの?」と思考を広げていきましょう。家庭の中にも科学はたくさんあります。料理や洗濯など特に化学は豊富です。日常生活の中の科学に興味を持って生活しているかも入試で問うようにしています。

香蘭女学校中等科 化学室

香蘭女学校中等科 化学室

親子の会話で子供の視野を広げる手助けを

熊澤先生 保護者の方からよく「どんな問題を練習したらいいですか」ということを聞かれますが、「親子の会話を増やしてください」「新聞やニュースの内容をかみ砕いて話をしてあげてください」とお答えしています。
机に向かうだけが勉強ではありません。お父さんやお母さんが見つけたこと、気になったことを一緒にあれこれ話す中で、お子さんは気づいたり、考えたりするようになります。
子供はまだ視野が狭いので、親御さんがお子さんの興味関心のアンテナを広げる手助けをしてほしいと思います。

中島先生 11月8日に皆既月食・天王星食がありました。そのとき、親御さんが「見てごらん」と声をかけて、「見たい!」とベランダに出るような、今起きている現象に興味津々なお子さんに入学していただきたいなと思っています。

香蘭女学校中等科 図書室

香蘭女学校中等科 図書室

文字量が多いのはプロセス重視のメッセージ

大問3のリード文が会話形式になっていますね(理科クラブの課外活動での先生と生徒の会話)。

熊澤先生 会話形式にすることで取り組みやくなると思います。

中島先生 会話文から、ストーリー(状況)を思い浮かべてほしいですね。

熊澤先生 入試問題は意識的に文字量を多くしています。生徒を見ていると、文章を読み飛ばす傾向がありますし、すぐに答えを出そうとします。正解にたどり着くまでのプロセスが大切だということを伝えたくて、あえて文字量を多くしています。

選択肢もきちんと読まなければと感じます。読む力が求められていると感じます。

中島先生 生徒を見て読む力は一朝一夕には育たないと感じ、入口のところで読む力を試そうと数年前から少しずつ文字量を増やしてきました。

小問集合問題にも手強い問いを出題

中島先生 大問1の小問集合問題に難易度が高めの計算問題を出しましたが、正答率はかなり低かったと思います。
入試問題全体を見て、すぐに解けそうかの判断力や、限られた時間で問題を解く計画性も試そうと、手強い問題を大問1に配置しました。受験生の多くがその問題に時間を使ってしまったようでした。順番に解いていく受験生が多いように思います。

その問題は、一見、さほど難しく見えません。大問の最後の問いなら「難しいかも」と身構えますが、小問集合問題は手がつけられそうなイメージがあるので、解いてみたら意外と手間取ったのではないでしょうか。

中島先生 小問集合問題にも難易度が高めの問いをいくつか出したいと思っています。解いてみて、これは時間がかかりそうだと思ったら、「飛ばす」ことも選択の1つだと思います。時間が足りなくて最後まで手をつけられなかったということがないように、戦略は自分でよく考えましょう。
5~6年前は無答がちらほらありましたが、最近はほとんどありません。間違えたとしても何かしら書いていますし、何とかして答えようという頑張りが見えます。

香蘭女学校中等科 図書室

香蘭女学校中等科 図書室

基礎知識があると考えることが楽しくなる

受験生の基礎力についてはどのように見ていらっしゃいますか。

中島先生 概ねできていると思います。基礎的な知識が身についていないと、科学のおもしろさがわからなくなってしまうでしょう。科学を考える際の材料として最低限の知識があれば、楽しく学べるのではないかと思います。
小学生の段階で一定の基礎力があると、中学で探究学習など発展的な学習にも取り組みやすくなります。入試問題で基礎力を重視しているのは、そうしたねらいもあります。

インタビュー2/3

香蘭女学校中等科
166_香蘭女学校中等科香蘭女学校は、英国聖公会のE・ビカステス主教による聖ヒルダ・ミッションの信仰の証しとして、「女子の教育」のために建てられたミッションスクール。1888(明治21)年に創立して以来130有余年に渡り、本校はキリスト教の信仰に基づく全人的な関わりをもって女子を育てるという伝統を守り続けてきた。香蘭女学校の欧名St. Hilda’s Schoolは、守護聖人 聖ヒルダの名に因んでつけられた。ヒルダ祭、ヒルダ賞、聖ヒルダ記念館など、学校の大切な行事や建物の名称には守護聖人 聖ヒルダの名を冠している。
校門を入ると、アプローチの左右を囲むように築山があり、そこには多くの草木が生い茂り、季節を問わず1年を通して色とりどりの花々が咲き誇る。校舎は落ち着いた雰囲気で、レンガの校舎が木々の緑と見事に調和している。テニスコートのほか、陸上競技用のトラックとしても整備され、体育の授業や運動部の活動のみならず、朝や昼休みには生徒たちが元気に走り回っている。すべてのホームルーム教室には電子黒板が設置されており、効果的に使用されている。また、中等科1年生からiPadをBYOD(Bring Your Own Device)方式で1人1台持ち、授業やホームルーム活動などの他、自宅学習でも使用。ほとんどの教科でiPadが活用されている。
英語教育では、ネイティブの先生との授業、洋書多読、オンラインスピーキングなど、多様なアプローチにより抵抗なく話せるよう自信をつける。希望者が参加する英国やカナダ・プリンスエドワード島での研修では、語学と同時に環境問題・多民族社会・キャリアについて学ぶ機会を持つことで国際社会を生きる女性としての意識を高める。また、国内および校内での国際交流・異文化理解プログラムを始めており、2021年度はオンラインを活用し、中学生はオーストラリアとニュージーランドの学校との交流、高校生はアイルランドの語学学校や在日大使館と繋ぎ「女性のキャリア教育」について英語で学んだ。
SEED = Self-Enrichment EDucationは、2004年から実施のSE(Self-Enrichment)授業の主旨を引き継ぎつつ、内容を更に深化させたプログラムだ。SEEDには「種」という意味があり、香蘭女学校ならではの有形・無形の産物を活かした様々な取り組み(種まき)を通して学んだことが実を結び、一人ひとりが賜物を発見し、卒業後に「香蘭での6年間が自分の礎を形成した」と実感できるように、という願いも込められている。
22の文化部、8の運動部に加え、クワイヤー(聖歌隊)、園芸係があり、それぞれの興味関心にあわせて幅広い活動の中から選ぶことができる。他校ではあまり見かけないスケート部もある。部活動は任意だが、ほとんどの生徒が部活に所属し、活動を楽しみにしている。同じ目標のもと中高一緒に活動をし、自然とリーダーシップや協働する力が培われる。なお、香蘭女学校が日本の「ガールスカウト」発祥の地であり、伝統を受け継ぐガールスカウト部は東京第一団としてとして活動している。