出題校にインタビュー!
神奈川大学附属中学校
2022年12月掲載
神奈川大学附属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.現代文の授業で培われる、根拠をもって意思表明をする力
インタビュー3/3
授業では多角的な視点からアプローチすることに重点
中川先生 僕はここ10年くらい中学生を担当していませんが、中学を担当している教員は生徒の思いや考えを引き出して、その発言に対して自分はどう思うのかを考えさせるために、意識的に生徒に問いかけていると思います。中1の夏休み明けからタブレットPCを持つようになるので、資料作りや発表をする機会もあります。ですから生徒は話すことがすごく上手です。
高校生になってもそういうことを継続していきます。J-popや映画、アニメーションなどを題材に、作り手が言わんとしていることは何かを現代社会と重ね合わせて考えます。たとえば、ある映画が流行ると、流行った理由を当時の時代的な状況と重ね合わせて考え、発表してもらいました。描かれている背景と物語との関係性などについても、正解を求めるのではなく、生徒が自分なりに解釈して話す機会を設けています。その際は極力、1つの解釈に到達することを目指すのではなく、いろいろな視点から見るということを大切にしています。国語ではテクスト論的なところに立場を置きたいので、文字面から「こういう解釈もあるのでは?」と問いかけて広げています。教科書やそれ以外の文章を読む時も、そういうアプローチをしたほうが良い授業になると思っています。
神奈川大学附属中学校 図書室
さまざまな教材を使い、考えさせる授業を工夫
どんな教材を使っていますか。
中川先生 授業で扱わなければいけない素材やテーマはありますが、国語科として「この学年ではこれをこういうふうにやってください」という縛りはほぼありません。ですから学年によって教材も扱い方もさまざまです。思考力や表現力の向上を前提に、各教員が知恵を絞って授業を行っています。
その内容は教科会で共有しています。ですから、いいなと思えば真似することもできますし、自分なりにアレンジを加えることもできます。例えば「メディアリテラシー」をテーマに授業を行う場合、教科書に載っていますから、それを使ってもいいのですが、メディアリテラシーをうまく説明している文章をどこかから引っ張ってきてもかまいません。関連する動画があればそれを見せてもいいのです。メディアリテラシーについて考えることができれば教材は自由なので、教員の力量が問われます。
授業のやり方はそれぞれでも向かう目標は同じ
中川先生 「担当者が目の前の生徒を見て、必要性を感じた授業を展開したほうが効果があるのではないか」と言い続けた結果、国語科ではそうなっていきました。
岩佐先生 私は社会科ですが、社会科でも学年ごとに年間を通して扱う単元は決まっています。ただ、どういうアプローチをするかは教員に任されています。それは教員がどのような問題意識をもっているのかによって変わります。そういう意味では国語科と少し近いところがあるかもしれません。
先生方に任されていることが多いのですね。
岩佐先生 混沌とした中にも統一されているところがあります。例えば自分で考える、多様な視点を持つなど、目指しているところは同じです。目の前にいる生徒たちに合わせて、この子たちにはこういうことを考えさせたいという判断のもとで授業を組み立てているので、やり方はいろいろですが同じ目標に向かっています。パッケージ化されていれば、生徒は試験に出るからやるか、ということになりますが、そうではないスタイルの場合、(興味づけから始まるので)教員も鍛えられるのではないかと思います。
中川先生 生徒は意外と素直で面白がって取り組んでくれます。良い意見を言ってくれた時に「おお、いいじゃないか」とほめると自己肯定感が高まり、さらに前向きに頑張ってくれます。それを見て、あいつがやるなら自分もやる、というように連鎖が生まれる場合もあります。同じ部活仲間で固まって、やってやろうぜ、というような雰囲気になることもあります。
広報部長/岩佐 賢史先生
意見には明確な根拠が必要
いろいろな答えが出てくると思うのですが、どのように進めていますか。
中川先生 意見を求めると言っても、なんでもいいわけではありません。根幹がテクスト論的なところにあるので、根拠を重視しています。生徒には「自分の意見を貫くには、本文のどこにその根拠があるのかを探してごらん」と言っています。
たとえば「こころ」を読んだ後、生徒は好きなように言います。その根拠を突き詰めていけば、文学的な新解釈になるかもしれません。「それってかっこいいよね」と言うと、生徒たちは頑張ります。そういうことを中学段階からやっていきます。最初は「読みとはこういうものだよ」「根拠はここにあるでしょ」という手順を教えて、高校生になったら「あの時のあの方法を使えば、新しい文章でこんな解釈ができた」ということを共有できるといいなと思っています。それが入試対策の演習につながっていきます。基本的に本文中に手がかりがあります。本文のここと選択肢「あ」は同じだとか、「い」は違うとか。そういう遊び感覚で取り組んでいる作業も、結果的に大学入学共通テストなどに生きるのではないかと思っています。
国語は閉ざされたものではなく身近なもの
中川先生 高3では授業で入試問題に取り組むことになります。ですからそれまでは文学や評論に触れて、いろいろな体験をしてもらいたいというか、生徒と遊びたいというのが僕の個人的な気持ちです。高1、高2の授業が楽しかったと思ってくれれば嬉しいなと思って取り組んでいます。
以前、東大を狙えるくらい学力のある生徒から「なぜ、高1あたりから大学入試問題をやらないのですか」と聞かれたことがありました。その生徒は現役合格できず、浪人して東大に進学したのですが、「テクニックではなく、学校で学んだ教養を広げることの大切さを実感した」と言ってくれました。今でもその子とはつながりがあり、本校で後輩たちに向けて自分の気づきを話してくれています。
先生は貴校に在学中から、国語を身近に感じていたのですか。
中川先生 社会の先生が興味関心を引き起こす授業をしてくれました。例えばフランスの勉強をする時に臭いチーズを持ってきて食べさせるとか。そういう授業は教養を広げるというか、知性があっていいなと思っていました。
身近な題材を活用して考えさせる授業をするようになったのは、大学や大学院の先生の影響です。子どもたちをいかに国語の世界に引き込むか、を目的に研究していて、「生徒にとって身近なものを題材にして、国語が閉ざされたものではなく身近なものであることを知ってもらうことに意味がある」と言っていました。確かにそうだな、という思いと、教科書の内容をそのまま学んでもつまらなかったな、という記憶によって、あえてそこにはないもので授業をしたいという気持ちが根底にあります。本校の生徒はパソコンを持っているので、動画編集や絵を描くなど、表現の方法も変えると、さらに面白くなるのではないかと思っています。
神奈川大学附属中学校 くすの木
大学受験もみんなで頑張る雰囲気がある
昨年は進学実績が好調でしたね。
岩佐先生 中学3年生ごろから意識が高くなり、高校2年生あたりから数字も伴ってきて、多くの生徒が希望する大学に合格することができました。
中川先生 塾や予備校に通うのではなく、仲間を誘って学内で勉強するような生徒はいい結果を出しています。3階にホワイトボードのシートを貼って、生徒が自由に使えるようになっています。そこに集まってみんなで問題を解き、みんなでわからないところを考えるのです。昨年は理系文系に関わらず、チームで戦うことにより自分の未来をつかみ取るぞという高い意思を持つ生徒がたくさんいました。
岩佐先生 本校のような1学年約200人、メンバーが変わらずに6年間を過ごす学校は、そういう雰囲気が作りやすいのだと思います。ただ、高校生になればそれができるかというと、そうではありません。中1から授業でいろいろなやりとりをしたり、学校行事や部活動の中でみんなと1つの目標に向かって取り組んだりする中で、成功体験に限らず、失敗体験からも学んでいます。みんなで頑張るという土壌がベースにあるからできるのだろうと思います。
インタビュー3/3
「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」を建学の精神に掲げ、真面目で、サバイバル能力があり、何事も進んで行う人間性豊かで有能な人物の育成に努める。「足を大地に手を大空に」という学校のモットーは平成10年に生徒会の提案で決められた。多様な教科をバランスよく学ぶ「生涯学習」の立場、すべて男女共修の「ジェンダーフリー」の立場をとりながら、国際化と情報化への対応や個性本位の進路指導を教育理念の柱とする。