シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

神奈川大学附属中学校

2022年12月掲載

神奈川大学附属中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試問題の素材文には必ず狙いがある

インタビュー2/3

どんな時も「自分はどうしたいのか」を考えてみよう

中川先生 高校2年生は今年、修学旅行に行けなかったので関西方面に行こうと考えていて、自主行動では班ごとに行き先や行程を話し合って計画を立てます。その際にまずパソコンで調べます。すると大阪に行くならここに行くべき、食べるべき、というリストがたくさん出てきますよね。その中から選びがちですが、知らない人が言っている「すべき20」のような情報からこれがいいな、と選んで行くのはもったいないなと思っています。

どこかに行く時、大学受験をする時、就活する時…。すべてにおいて、自分はどうしたいのか、を起点に考えることが大切であり、みんながここに行くから行くのですか?という疑問をもっていました。自分自身も「みんながこう言っているから」など、「みんな」を盾にとって「空気を読め」というような意味合いのことを言われた記憶があります。こうした画一的にしたがる風潮は、今もあるのではないかと思います。ですから小学生に対しても、自分が苦しんだ体験などを書いてほしいのです。

神奈川大学附属中学校 先生

神奈川大学附属中学校 先生

中高時代に培われたクリティカルな視点

先生がこうした問題を作る背景の1つには原体験があるのですね。

中川先生 僕は本校の卒業生です。中高をここで過ごしました。ここには当たり前のことを当たり前としない教員がたくさんいます。「ものごとを正面から見ない」と言うか。「クリティカルな視点で捉える」と言えば格好いいですかね。そういう人たちから刺激を受けて、そのつど立ち止まって考えるような教育を受けたことが要因かもしれません。

当たり前の考え方ではなく、自分の価値観で測って選ぶということが心地よくて、自然と人々が同調している考えを疑うようになりました。今回の素材文のような文章と出会うと、子どもたちにも聞いてみたいなとうずうずしてしまうのです。
きちんと物事を捉えて考えて自分の人生をつかみとってほしいということは、恐らく多くの教員が思っていることだと思います。それを強調するということは、そうではない現実があるということですから、変えていかなければいけないと思っています。これから入って来る子どもたちにもそうした姿勢を求めています。

「今」に沿った問題を作りたいから素材文探しに努力

素材文を選ぶ際に気にかけていることを教えてください。

中川先生 中学入試であれば小学6年生に、定期考査であれば対象となる学年の生徒に読んでもらうことにより、価値のありそうな文章を努力して探します。高校生の定期考査では大学入試の過去問で使われている文章を使っても良いのですが、入試問題として出題された時が最も良い状態ですから鮮度は落ちますよね。2022年にどこかの大学入試で出題された問題であっても、2021年、あるいはそれ以前に出た文章です。2023年の大学入試に出そうな文章は前年の過去問にはないので、余力があれば「今」に沿った問題を作りたいじゃないですか。

中学入試の小説であれば、作家が描き出す世界や物語の中で起こる事件から、12歳の子どもたちが何を感じ取れるか、ということを意識しています。入試で問う、問わないは別として、私だったらどうするだろう、と考えることができそうな文章や、入試を終えてから、文章の続きが気になるので本を購入しようと思えるような文章が選ばれている気がします。論説では本校の生徒の日頃の活動に近いテーマが選ばれているように思います。

神奈川大学附属中学校 図書室

神奈川大学附属中学校 図書室

問題には作問者の個性が反映される

中川先生 何年か前の入試では、「螢川」(宮本輝)を出しました。何十年も前の作品です。お祭りで500円を落としてしまい、血相を変える登場人物の気持ちを受験生は想像できないかもしれませんが、あえてあなたには時代環境や家庭環境を考える想像力がありますか、ということを聞きたくて出しました。
論の展開や、どういう原因で何が起きたのか、登場人物はどんな気持ちか。そういうことが分かる文章を選んでいます。教員は日頃からアンテナを張っていて、日頃からもやもやっと思っていること、気になっていることが書いてあるぞと気づくと入試で使いたいなと思います。そういう作品と出会うことができると、受験生にとっても我々にとっても悪くないと思える設問が浮かんできます。

国語は設問のパターンもそんなにあるわけではないので、一見同じように見えるかもしれませんが、作り手の興味関心の所在をはじめ、思考の流れや選択肢の作り方は異なるので、統一感はないかもしれません。作問した人の個性が出ます。

高2の授業では「こころ」と「舞姫」

中川先生 僕の授業(高2)では夏休み明けから「こころ」(夏目漱石)に、年明けから「舞姫」(森鴎外)に集中的に取り組みます。「舞姫」はいくつか映画がありますが、郷ひろみが出ている、ドイツ語も使われている作品をご存じでしょうか。それを使って映画とのテクストの違いや、なぜ変えているのか、どういう効果があるのかなどを議論します。大学受験とは関係ありませんが、大学に入学後に文学や批評などに関心をもって取り組んでくれたらいいなという思いをもって行っています。

「こころ」を題材にすると、その後、他の作品も読むようになるものですか。

中川先生 「こころ」を読んで「漱石、面白いなあ」と感じて、他の作品にも手を伸ばす生徒はごく少数ですね。図書委員の生徒の中には太宰治や芥川龍之介などを好んで読む生徒もいます。1学年200人いたら、10人くらいはそういう生徒がいます。ただ、受験期の生徒は「こころ」から学んだことを励みにしています。登場人物Kの「精神的に向上心のない者は馬鹿だ」という一文をキーワードに頑張っています。私たちもそのキーワードを使って励ましています。

神奈川大学附属中学校 校内

神奈川大学附属中学校 校内

インタビュー2/3

神奈川大学附属中学校
神奈川大学附属中学校「質実剛健」「積極進取」「中正堅実」を建学の精神に掲げ、真面目で、サバイバル能力があり、何事も進んで行う人間性豊かで有能な人物の育成に努める。「足を大地に手を大空に」という学校のモットーは平成10年に生徒会の提案で決められた。多様な教科をバランスよく学ぶ「生涯学習」の立場、すべて男女共修の「ジェンダーフリー」の立場をとりながら、国際化と情報化への対応や個性本位の進路指導を教育理念の柱とする。
「教科学習」「進路指導」「生活指導」「校外学習」等のすべては、2年ごとにきざむ3段階でゆとりを持って積み上げられており、保健体育科・音楽科・美術科・技術家庭科の充実度は大きな特色の一つとなっている。体育も家庭科も男女混合で行われており、体格差、得意不得意の差があるからこそ助け合いの大切さを学べるという考えのもと、社会性が養われている。部活動も盛んであり、広大な敷地と、その中にある多様な施設を使って、10の運動部と8つの学芸部が活動している。顧問の他にコーチ制度も設けられ、専門的な技術指導が受けられる体制も整っている。
神奈川大学への推薦入試制度はⅠ期とⅡ期の二度あり、Ⅱ期では、ある程度の私大入試が終わってからの出願になる。一人ひとりの可能性を見逃さないきめ細やかな指導による6年間で、大学合格実績や現役での合格率も、年々向上している。学校にある「くすのき」はシンボル的存在であり、合格祈願のために「くすのき」の前で手を合わせる受験生も多い。