出題校にインタビュー!
清泉女学院中学校
2022年11月掲載
清泉女学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.中1から取り組む「答えが1つではない」あるいは「答えがない」問題を考える
インタビュー2/3
公民の授業では議論の脚本のようなものを書く
授業で工夫されているところはありますか。
野村先生 私は今年、高校生の公民を担当していますが、必ず両面から考える機会を作っています。2学期の提出課題では、2、3人のチームを作り、議論の脚本のようなものを書かせています。生徒たちはほとんどがA対Bという形式をとりますが、1人がAを、1人がBを考えてもいいですし、2人でAとBの両方を考えてもいいということにしています。20分くらいの間に1つのお題でいかに議論を深めていけるかを観点とし、チームとして評価して、携わった人全員に同じ評価をつけます。
どのように評価していますか。
野村先生 気づきが多いと良い評価になります。触れなければいけないことにどれだけ広く、あるいは深くアプローチできるか。広さと深さのバランスはどうか。そういうところを鍛えようとしています。
清泉女学院中学校 校内
SDGsと世界遺産を結びつけて考える
北宮先生 例年、中1の地理の授業ではSDGsと世界遺産を結びつけて考える授業を行っています。生徒たちは小学生時代にだいぶSDGsに触れてきているので、自分が気になっているSDGsのゴール(開発目標)が1つくらいはあります。小学生だと13番「気候変動に具体的な対策を」か、14番「海の豊かさを守ろう」、15番「陸の豊かさも守ろう」あたりが多いので、生徒たちには、11番「住み続けられるまちづくりを」や12番「つくる責任 つかう責任(ものづくり)」、8番「働きがいも経済成長も(イノベーション)」あたりも自分の視点に取り込んでいこうよと、声をかけています。
世界遺産については、「世界遺産とは何か」というところから始まり、夏休みに自分のお気に入りの世界遺産を選んで、そこにSDGsと関連のある問題はあるか、という課題に取り組みます。みんなヨーロッパが好きで、最初はヨーロッパの世界遺産を選ぶことが多いですが、授業で多くの世界遺産に触れるうちに、イスラム圏、アジア、アフリカ…というようにさまざまな地域の世界遺産にも目が向いていきます。冬休みあたりになると、今度は世界遺産が抱えるSDGs関連の問題について、解決するために活動している人物や団体を調べたり、自分にできることはないか考えたりします。そして1年生の3月には、スライドを作り、4分以内で全員発表します。そういう機会を作っているので、一つの世界遺産から学べる内容はものすごく広がっていきます。
広報部長・社会科/北宮 枝里子先生
一方向ではなく双方向から考えることが大切
おもしろそうな授業ですね。
北宮先生 中1から答えが1つではない、あるいは答えがない問題について激論しています。例えばリバプールが世界遺産から外れました。原因は歴史的な景観が損なわれたからなのですが、背景に何があったかというと高齢化問題なんですよね。再開発をしないと若者がやってこないという危機感から、「世界遺産から外されますよ」という警告を受けていたにもかかわらず再開発を進めたのです。世界遺産委員会による警告内容やリバプールの財政状況なども見たうえで、「あなたがリバプールの市長だったらどう考えましたか」と問いかけて議論します。
SDGsから世界遺産を考えるだけでなく、世界遺産からSDGsを考えるという、双方向的に結びつける授業に全生徒が取り組んで上の学年へ上がって行くので、結びつきを柔軟に考えることができる生徒は多いと思います。
山内先生 そういう力が野村の公民分野の授業における議論にも生きてくるのではないかと思います。
野村先生 そうですね。素地はできているという感じはあります。そういう社会問題に対して、とっつき方がわからないということにはなりません。内容は稚拙なものから巧みなものまでありますが、議論はできています。高校生になるとメンバーをシャッフルし、誰とでも議論ができるようにしています。そういうことにもじわりじわりとですが慣れてきていると思います。
答えはまとまらなくていい。それが社会科
北宮先生 世界遺産の授業では、65分間(同校の授業時間)、激論を交わしても答えがまとまらないのですが、それでいいのです。それが社会科だからです。当初は「数学のように正解が出ないから気持ちが悪い」という生徒もいますが、そういう生徒も次第に1つに決めてしまうことが逆に危ない、ということを身につけて上の学年に上がっていきます。答えは1つではないので、いろいろな視点で探っていかなければいけません。そういう意味では探究する力もつくと思いますし、公民分野でもその学びを発揮できるのではないかと思います。
山内先生 カトリックの学校ですので、倫理の授業やロングホームルームなど、いろいろなところで他者の立場に立って考える機会があります。そのため、他者を受け入れることも、自然とできるようになっていきます。「ライフオリエンテーションプログラム(自らの力をどのように活かして生きるかを考えるプログラム)」なども行っていますから、社会科というよりも学校教育全体で、そういう議論ができる力を育てていると言えると思います。ですから考えが違っても、けんかにはなりません。
清泉女学院中学校 図書館
異なる価値観を受け入れるベースがある
山内先生 進路も幅が広いです。本当にさまざまな方面に興味を持っている生徒がいます。本校には特進クラスはありません。音楽が盛んですが、音楽の授業を選択するというだけで音楽クラスがあるわけではありません。それでも一般的な学部に進む生徒だけでなく、音楽、美術系の進路に進む生徒もいます。今年の高3は4クラス中、 2つが文系、2つが理系と文系の混合クラスです。その中には何人か音楽や美術系を志望する生徒もいます。生徒にとってはそれが当たり前であり、「他者を受け入れる」というベースがあるのでうまく共存できているのではないかと思います。
それは生徒に限らず教員にも言えることです。作問をする時に「それは違う」とストレートに言える関係性を築くことができています。年齢や経験に気を遣いません。そういうところもより良い問題づくりにつながっていると思います。
野村先生 良い議論ができていますよね。
北宮先生 歴史・公民・地理、各分野に作問者がいますが、1問1問、分野の垣根を超えて議論して作り上げています。我々も楽しんで作っているという感じがあります。
山内先生 同じ社会科の中でも自分の専門外の議論になるとわからないことがありますが、むしろ専門外からの指摘がとても良い刺激になります。
北宮先生 入試問題は、どうすれば小学生に伝わるか、というところが大切です。
野村先生 それを考えて改良しますよね。場合によっては問題が丸々ボツにもなることもあります。
問題作成のきっかけは生活の中にあり
問題作成の糸口を見つける手段はそれぞれですか。
野村先生 各自で作ってきた問題を出し合うところから始めています。僕は、頭を使ってもらおうと思って作問しています。もう一つ意識しているのは、なるべく受験対策ができない問題を作ろうと思っています。そういう問題を1つ2つは必ず入れています。
そのために日頃から行っていることはありますか。
野村先生 報道など、さまざまな情報の中から取捨選択して、切り貼りしたりまとめたりしています。ずっと何かを定点観測するようなことはないです。
山内先生 僕は自分の身近にある題材で問題を作ることが多いです。
北宮先生 社会科は身近な教科なのでそうなりますよね。私はその年にたまたま起きたことや自分が感じたことをきっかけに作ることが多いです。例えば、「ああ、さんまが食べたいなー。でも最近、高いなー」と思って「魚」をキーワードにしたことがあります。アメリカで広大すぎるとうもろこし畑を見て度肝を抜かれ、とうもろこしに関連するデータを探しまくった年もあります。
山内先生 総じて生活の中で発想することが多いですよね。だからこそ作問会議では互いに「これを出してきたのか」という感じで盛り上がることが多いです。
清泉女学院中学校 グラウンド
インタビュー2/3
1877(明治10)年に創立の聖心侍女修道会(本部はローマ、世界20か国に約50の姉妹校)により、1938年、前身の清泉寮学院創立。47年に横須賀に中学、翌年高校を設立。63年に現在地に移転し、2023(令和5)年に創立75周年を迎える。進学率のよさから「鎌倉一の女学校」の座を堅持している。