出題校にインタビュー!
清泉女学院中学校
2022年11月掲載
清泉女学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.世の中で起きていることについて自分の頭で考えて、自分の意見をもつことが大切。
インタビュー1/3
物事を批判的に見る目は養われているか
この問題の出題意図から教えてください。
野村先生 できる限り頭を使って欲しいということと、メディアリテラシーの実践力を問えたらいいなという思いでこの問題を出しました。小学校5、6年生になれば物事を批判的に見る目が育ってきていると思うのですが、大人の説明に対しては「ああ、そうなのか」と、耳を傾けるにすぎない子が大多数だと思います。柔軟なとらえ方をしてほしいという思いから、こうした問題を出しました。
問1と問2、片方ではなく、両方出題した意図を教えてください。
野村先生 検討しましたが、どちらも出したほうがいいのではないかということになりました。答えが模範解答以外にもあり得る問いは、やはり出したいのです。なぜなら、小学校6年生が最終的にこの答えで提出しようと決断するには度胸がいると思うからです。多少の不安を抱えながらも、それでいくんだ、という強さみたいなものを持っていてほしい、立ち向かってほしい、という思いから両方出題しました。
社会科/野村 佳史先生
総合的な力が反映される問題ができた
解答を見ていかがでしたか。
野村先生 正答となった解答は概ね想定内でした。突飛なものもありましたが、ロジックがおかしかったり、さすがにそれは言えないだろうというものだったりしていたので、ある程度、用意していた答えに収まる問題になったのではないかと思います。
一方だけ正答した受験生はいましたか。
野村先生 印象としては両方か0かという感じでした。「2つ説明しなさい」とあるので、1つ書ければ、もう1つはその反対を考えてくれれば正答に近づきます。それがわかっているかどうかで得点に差がついたのかなという感じはします。
問1は、ひらめく子は書けたけれど、ひらめかない子は書けなかったのではないか、そんな印象をもったのですが、いかがでしたか。
野村先生 ひらめくかどうかは社会科だけのことではなく、数学的なセンスもかかわります。あるいは理科の実験が好きな子や国語の力がある子は答えやすかったかもしれません。社会科の試験問題ではありますが、いわゆる総合的な力が反映される問題ができたのではないかと思っています。
清泉女学院中学校 校舎
入学後に必要となる「日常生活で得られる知恵」
山内先生 日常生活や家庭の中で会話が生まれていたら、自分なりの視点を思いついて書けるかもしれません。本校には「日常生活を大切にする」という考え方が受け継がれており、日頃よりニュースなどを題材に授業を行っています。
野村先生 受験勉強で得た学力も必要ですが、入学後のことを考えると、それだけではきついと思うんですよね。
山内先生 社会科が、知識も問いつつ、いろいろな問題形式を入試に取り入れているのはそういう意味合いです。知識は必要なのですが、入学後に伸びるのはむしろ今回のような問題が得意な子かもしれません。
野村先生 この手の問題ができる子は、生活するために必要な頭の良さがありますよね。そういう期待もあって出題しています。
白紙もそれなりにあり、正答率は3割程度
「2つ説明しなさい」としたのは、多角的な視点を持ってほしいからですか。
野村先生 大人は「批判的に見る」「吟味しながら見る」「相対化する」などの概念を理解できていると思います。しかし、小学生にはまだ難しいと思うので、入試で経験してもらえたらいいなと思いました。
正答率はどの程度でしたか。
野村先生 3割程度だったと思います。時間的要因であったかどうかは分かりませんが、白紙がそれなりにありました。5割いくかいかないかあたりという想定で出題していたので、もう少し書けてもいいかなと思いました。ただ受験勉強をしてきたから答えやすい、という問題ではなかったからかもしれません。
社会科の問題には受験生が初めて見るような資料が満載です。その意図を教えてください。
山内先生 問題演習に取り組んだから解けるというのではなく、初見の問題であってもいかにそれを見て考えて判断できるか。知識だけでなく、それこそ学力の三要素と言われる思考力・判断力・表現力も身につけてほしいという意図をもって、さまざまな資料を使って作問しています。どの先生も主体的により良い問題になるように発想力を尽くしていますので、私たちも時々問題を見直しては、この問題はすごく深いなと思うことがあります。
清泉女学院中学校 聖堂
「決めつけないこと」を大事にしてほしい
過去にも、巻網と一本釣りの漁法に関する、よく見つけられたなという資料が載っていました。
北宮先生 その問題はまさしく社会科が普段意識していることを問う典型的な問題です。社会科では「決めつけない」ということを大切にしています。それは「偏見を捨てなさい」ということです。この問題はそのメッセージを感じ取ってもらいたかった出題でした。
受験生の答えは「排他的経済水域」か「高齢化による後継者問題」、ほぼこの2つしかありませんでした。「漁業」と「問題点」から導きだしたのでしょう。おそらくそう習ってきているのだろうと思います。もちろんそれも大切な知識ですし、見過ごせない問題点ではあるのですが、かつお漁の問題点は別にもあります。
巻き網とはどういうものか、竿釣りとはどういうものかを絵で示しました。文章中には南からカツオがのぼってくるということが書いてあります。受験生には、それらの情報を複合して、赤道付近に巻き網漁が集中して小さい魚を全部獲ってしまうということに気づいてほしいと考えていました。巻き網と竿釣りを比べて、持続可能な漁業はどちらなのかを考えてほしいと思っていました。
「排他的経済水域」「漁業専管水域」など漁業に関連のあるワードを書いている受験生にも、漁業に関して勉強してきているんだな、と受け止めて途中点をあげましたが、満点は1人しか出ませんでした。知っていることだけで決めつけないでほしい、というのはそういうことなのです。
清泉女学院中学校 図書館
座学ではないところに突破口を持とう
北宮先生 よくニュースを見ている、という子でも、音では聞いているのですが、示された数字を見比べることはあまりないと思います。社会科はデータに基づいてシステムなどを考えていく科目なので、小学生もなんとなくとらえるのではなく、しっかりデータを見て理解し、考えてほしいという思いが強くあります。
どういう学び方をすれば、先生方が求めている力が身につきますか。
山内先生 授業で初めて触れる知識をそのままにせずに、地理なら地図帳を開いて眺めてみるとか、公民なら新聞やテレビのニュースに耳を傾けてみるとか、このようなことが楽しく感じられるかどうかが分かれ道になります。ニュース番組を退屈だと思うのか、それとも「こういうこともあるのか」と思いながら見るのか。つまり座学ではないところで学ぶ、突破口を持っていることが大事なのです。突破口の数が多いほど、結果的に受験では強くなると思います。
北宮先生 授業では資料を提示して、そこから考えられることを発言したり、1つの新聞記事から相反する意見を出したりしています。清泉の授業で行われていることが入試問題に継承されているので、問題がわからなくても楽しんでくれた子はおそらく入学していると思います。過去問などでこのような問題に触れた際には、データや解答例を丸々暗記するのではなく、資料のどこにヒントがあったのだろうか、と丁寧に見てください。そういうことをしているうちに、問題が変わっても同じように丁寧に資料を見る力がつくと思います。
清泉女学院中学校 掲示物
インタビュー1/3