シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

清泉女学院中学校

2022年11月掲載

清泉女学院中学校【社会】

2022年 清泉女学院中学校入試問題より

各新聞の報道内容を見ていると、同じ出来事でも新聞社によって受け止め方が違(ちが)うことがあります。①例えば、衆議院議員総選挙の結果について、全465議席のうち与党(よとう)が240議席を獲得(かくとく)したとします。このとき、「与党にとって良い結果であった」と報道されることもありえるし、「与党にとって悪い結果であった」と報道されることもありえます。
また、同じデータでも何と比較(ひかく)するかによって、その意味合いが違ってきます。②例えば、ある日の新型コロナ新規感染者数が、日本全体で1000人だったとします。この数値について「新規感染者数が増えた」と報道することも可能だし、「新規感染者数が減った」と報道することも可能です。もちろん、どちらの報道も内容に誤りはありません。

(問1)下線部①について、次の問いに答えなさい。
(1)「与党にとって良い結果であった」と報道する新聞社は、選挙結果のどのような点を指して、良い結果と受け止めたと考えられますか、2つ説明しなさい。
(2)「与党にとって悪い結果であった」と報道する新聞社は、選挙結果のどのような点を指して、悪い結果と受け止めたと考えられますか、2つ説明しなさい。

(問2)下線部②について、(A)「新規感染者数が増えた」、(B)「新規感染者数が減った」と報道できるのは、どのような場合ですか。(A)・(B)について、それぞれ説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この清泉女学院中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(問1)
(1)

  • 与党が過半数を確保できたこと。
  • 以前よりも議席を増やせたこと。

(2)

  • 目標ほどは議席をとれなかったこと。
  • 立候補者のうちの当選者の割合が低かったこと。

(問2)
(A)と報道できるのは、ある日よりも感染者数が少ない日と比べたとき。
(B)と報道できるのは、ある日よりも感染者数が多い日と比べたとき。

解説

(問1)
同じ結果であっても、目的や目標を何とするのかによって、「良い」「悪い」といった受け止め方は変わってきます。結果の数値だけではなく、与党のこれまでの議席獲得数や、立候補者のうちの当選者の割合など、その数値に関連することがらと結びつけることで、多角的にその数値を評価することができます。その視点のひとつとして、衆議院の総議席数に占める与党の割合に着目し、議決をとることを想定して解答を考えることもできるでしょう。たとえば、衆議院において与党が過半数の議席を獲得していることに着目すれば、「内閣総理大臣の指名」や「法律案の可決」といった、多数決によって決められることがらに対しては、この議席数は有利であると言うこともできます。一方で、与党の議席数の割合が3分の2には届いていないことに着目すれば、衆議院において3分の2以上の賛成を必要とする「法律案の再可決」や「憲法改正の発議」は難しいと言うこともできます。

(問2)
新規感染者数については、前日との比較や、1週間前の同じ曜日との比較、また流行のピーク時の数の多さなど、日常の報道でさまざま見聞きしていることでしょう。文章の下線部②の直前に「同じデータでも何と比較するかによって、その意味合いが違ってきます。」とあることも手がかりとなります。「増えた」「減った」については、「ある日」と「過去」の2つを比べたときに言えることです。「ある日の新型コロナ新規感染者数」を、「ある日よりも感染者が少ない日」と比べれば増えたと言えますし、「ある日よりも感染者が多い日」と比べれば減ったと言えます。

日能研がこの問題を選んだ理由

日頃、私たちが見聞きする報道では、選挙における与党の獲得議席数や、ある日の新型コロナ新規感染者数といった、あらゆるできごとが取り上げられています。しかし、同じ結果やデータであっても、その受け止め方や意味合いは報道によって異なることがあります。清泉女学院中学校のこの問題は、こうした報道について、どのような背景によってその内容が変わってくるのかを、さまざまな視点から説明するものです。

この問題では、ひとつの報道の受け取り方について、複数の背景を説明したり、真反対にも見える2つの報道の受け取り方ができる場合において、その受け取り方の両方について背景を説明したりすることが求められています。受験生はこの問題に取り組む中で、視点を変えながら、多角的にものごとを見ることにチャレンジしたことでしょう。そして、同じ事実でも、どう意味づけするか、どこに着目して報道するかによって、受け手の印象は全く違ってくることに気づいたのではないでしょうか。発信する側の背景を多角的にとらえることで、報道には「発信する人の意思や意図」が含まれていることを知った上で情報を受け取るきっかけにもなる問いかけであると感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。