シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

浅野中学校

2022年11月掲載

浅野中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.その場で考えさせ、具体化して言葉で表現する力を見る問題

インタビュー1/3

この問題を通して受験生のどのような力を試そうとされたのでしょうか?

山崎先生 解法の暗記や知識を問うということももちろん必要ではありますが、それだけではなくその場で考えさせ、具体化して言葉で表現する力を見たいと思って出題しました。長方形の面積を二等分する方法を問題文の前半で説明してあるのですが、もちろんこれがなくても問題としては成立します。しかし、説明された内容を知っている生徒だけが答えられるということだと、結局知識問題と同じになってしまうので、そうならないように受験生全員に「まずこれを使うよ」と伝えているわけですね。それを伝えた上で、純粋に図形を眺めながら解法を思いついて、言葉で説明してもらうというような設問形式にしました。

それと「数学の解法は一通りではない」という意味も込めています。「よくわからない」「言葉で説明できない」「自分ではこんな感じだと思う」というレベルでの作図ではなく、きちんと理解した上で作図できているかを確認する、もちろん説明も含めてと、いうところですね。

そうすると、先生のおっしゃった最初の説明があることで知識を持っている受験生だけが解けるのではなく、それがなくても思考すれば解けるということを体験してほしかったのですね。
自分の考えを表現するのは算数の大切な一つだと思うのですが、小学生が説明する際に悩んでしまうこととして、頭ではわかっていても「どうやって書けばいいのか」ということがあると思います。

山崎先生 ものすごく長く説明する受験生もいますし、逆に空欄という子もいるんですね。どこがポイントなのか平等な状態から始めないと「二等分することが重要だ」と、前提条件の説明に力をいれてしまう子も出てくるので、作問意図として結論までの間に何を説明すれば簡潔に答えられるか、という力を見たいというのはありました。この問題は結構出来が良かったのですが、きちんと説明する力を見ることができたと思います。

数学科/山崎 哲弘先生

数学科/山崎 哲弘先生

授業を展開しているかのような設問

具体的な予想はされているのだと思うのですけど、出来が良かったっていうのは、予想よりも良かったということですか?

山崎先生 いや、予想通りという感じです。今、大学受験でAO入試とか、一部では大学の授業を見せてその知識でテストがそのまま行われるものなどがありますが、この問題はそのミニ版というか「授業をしているみたいな感覚」というんでしょうか。この授業を聞いて「どこまで理解できていますか?」といった小テストをやってるみたいな感じの設問となっているように思います。

ここ数年は説明形式の問題が増えてきています。これからも説明系を大事にしようというお考えなのでしょうか?

山崎先生 その考え方が今の時代に合っているかな、というのもありますね。我々としては、今の出題内容や形式を変えるつもりはありません。

また、解答欄を見るとかなりスペースが大きいと感じます。どの程度書いたらOK、といった許容範囲というのは細かく決めていらしたのでしょうか?

山崎先生 細かく決めてはいません。ただ、内容として正しいかどうかという部分を見ているので、細かいところまでは言えませんが、解答欄に比例して点数が大きくなるかというと、そこまででもありません。

長く書いている割に何を書いているか、よく分からないものもありますよね?

山崎先生 確かにありますね。もちろん間違っていなければよいですが、結果的に正解であったとしても、長く書いてしまうことで無駄な時間を使ってしまい、不利になっているのかな、という気はします。点数が、減るのではなく、時間が減っているという場合があると思います。一回書いて文書を何度も推敲していたら時間もなくなってしまいます。ただ、我々も書いているのが「論理的な証明を習っていない小学生」という前提で採点はしています。

浅野中学校 校舎

浅野中学校 校舎

解答は3パターンを想定

この問題の答えっていくつあるのでしょうか?

山崎先生 我々が用意している解法としては「縦に一本線を入れて長方形を二個にするパターン」と「横に一本線を入れて長方形にするパターン」あとは「右上部分を補う方式で引き算して出すパターン」の3つを主に予想していました。間違っていなければもちろん〇にするつもりでいたのですけれど、予想しない答えが出てくると、採点中にちょっと手が止まったり、採点側で共有してやっぱりダメだよねって確認し合ったりすることはしました。

結果的には最初に予想した3種類ということですか?

山崎先生 正解はその3つにおさまっていますね。縦線を入れて分割するのが多かったですね。とはいえ、思っているよりも引き算型のものも多かったです。「あまりいないよ、そんなの」って出題前は言っていたのですが、こういう問題を見たときに引き算が多いっていうのは、かなり、この手の問題の経験があるのかもしれないと感じます。よくわかっていないけど、考えているうちに理解してきて「そういうことか」って書いてくる子も、もちろん、多かったと思います。

浅野中学校 図書館

浅野中学校 図書館

インタビュー1/3

浅野中学校
浅野中学校1920(大正9)年、事業家・浅野總一郎によって創立。当初はアメリカのゲイリー・システムという勤労主義を導入し、学内に設けられた工場による科学技術教育と実用的な語学教育を特色とした。戦後間もなく中高一貫体制を確立し、1997(平成9)年に高校からの募集を停止。難関大学合格者が多い進学校として知られているだけでなく、「人間教育のしっかりした男子校」としても高い評価を受けている。「九転十起・愛と和」を校訓とし、自主独立の精神、義務と責任の自覚、高い品位と豊かな情操を具えた、心身ともに健康で、創造的な能力をもつ逞しい人間の育成に努めることを教育方針とする。校章は、浅野の頭文字で「一番・優秀」の象徴である「A」と「勝利の冠」である「月桂樹」から形作られており「若者の前途を祝福する」意味が込められている。
横浜港を見下ろす高台にある約6万平方メートルの広大な敷地の約半分を「銅像山」と呼ばれる自然林が占めている。Wi-Fi環境が整い、中学入学後に購入するChromebookで授業や行事、部活動を展開している。2014(平成26)年には新図書館(清話書林)、新体育館(打越アリーナ)が完成、2016(平成28)年にはグラウンドを全面人工芝とし、施設面が充実している。
中高6年間一貫カリキュラムを通して、大学受験に対応する学力を養成することが目標。授業を基本とした指導が徹底している。中学の英語では週6時間の授業に加えて、毎週ネイティブスピーカーによるオーラルコミュニケーションの授業もある。数学では独自の教材やプリントが使われていて、中身の濃い授業が展開されている。高校2年から文系・理系のクラスに、高校3年では志望校別のクラスに分けてそれぞれの目標に向けた授業を行う。進路選択は本人の希望によるが、理系を選択する生徒の方が多くなる傾向がある。全体的にハイレベルな授業が展開されているが、高度な授業展開の一方で、面倒見のよいことも大きな特徴。授業をしっかり理解させるために、宿題・小テスト・補習・追試・夏期講習などを行い、授業担当者が細かく目を配っている。一歩ずつゆっくりと、しかし、確実に成長させるオーソドックスな指導方針が浅野イズム。
「大切なものをみつけよう」ーこれは学校から受験生へのメッセージ。生徒にとって学校は、一日の内の多くの時間を過ごす場所。勉学に励むことはもちろん、部活動や学校行事にも積極的に参加して、その中で楽しいこと、嬉しいこと、悔しいことや失敗をすることも含めて多くのことを経験してもらいたいと考えている。学校でのそのような経験が、学ぶことの意味、みんなで協力することの大切さと素晴らしさ、生涯、続いていくような友人関係、そして、決して諦めない強い心を育んでいくことになる。浅野中学校、高等学校という場を思う存分活用して、人生において大切なものをたくさん見つけ、成長してほしいとの願いが込められている。
部活動と学習を両立させる伝統があり、運動部の引退は高校3年5~6月の総合体育大会、野球部は甲子園予選までやり通す。中学では98%の生徒が部活動に参加している。ボクシング、化学、生物、囲碁、将棋、ディベート、演劇が全国レベル。柔道、ハンドボールやサッカーも活躍している。また、5月の体育祭と9月の文化祭を「打越祭」として生徒実行委員が主体となって運営する。これをはじめ、学校行事も盛んで生徒一人ひとりが充実した学園生活を送っている。
「銅像山」は、傾斜がかなりきつく、クロスカントリーコースとして運動部の走り込みに使われるだけでなく、中学生たちの絶好の遊び場所となっている。また、各学年のフロアに職員室を配置してオープンにすることで、生徒と学年担当の先生が日常的に対話を行っている。こうしたメンタルケアにも力を入れている。