シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

浅野中学校

2022年11月掲載

浅野中学校【算数】

2022年 浅野中学校入試問題より

[図1]のように長方形の2本の対角線が交わった点をPとし、点Pを通る直線を引くことによって長方形を2つの部分に分割します。もとの長方形は点Pに関して点対称(たいしょう)な図形であるので、長さを測ることなく、分割された2つの部分の面積は等しいとわかります。このことを用いて、後の問いに答えなさい。

問題図1

(問)[図2]のような図形の面積を二等分する1本の直線を、必要な補助線も含(ふく)めて解答用紙の図に描(えが)き入れなさい。ただし、補助線は点線……、面積を二等分する直線は実線――で描くものとします。また、描き入れた方法で面積を二等分することができる理由を説明しなさい。

問題図2

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この浅野中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(例)

解答例

(理由)
(例)図のように、図形を2つの長方形に分ける。どちらも、2本の対角線が交わった点を通る直線で面積が等しい2つの部分に分けられる。よって、どちらの長方形も作図した1本の実線によって、面積が二等分されているとわかる。
左側の長方形の上部と下部の面積が等しく、右側の長方形の上部と下部の面積も等しいので、図形全体で見ても上部と下部で面積が等しくなる。よって、作図した直線によって、図形全体の面積が二等分されていることがわかる。

解説

(作図の説明)
長方形の2本の対角線が交わった点を通る直線は、必ず長方形の面積を二等分する線であることは前半部分に示されています。よって、[図2]の図形を長方形に分けて考えていきます。
例えば、[図2]の図形を次のように分けます。

解説図1

そして、それぞれの2つの長方形の2本の対角線が交わった点をどちらも通るように直線を引きます。これで、[図2]の図形を二等分する直線が作図できました。

解説図2

他にも、[図2]の図の分け方を変えることで、以下のような二等分線の作図なども考えられます。他にも二等分線はさまざまなものが考えられます。

解説図3

(理由の説明)
左右に分けられた長方形それぞれについて、2本の対角線が交わった点を通るように直線を引けば、左右どちらの長方形も上下に二等分することができます。

解説図4

左右どちらの長方形においても、上側の部分と下側の部分の面積は等しいため、上側全体と下側全体の面積も等しくなります。
よって、この作図した直線によって[図2]の図形が二等分されていることがわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題は、示された図形の面積を二等分する線を作図し、その作図の方法で図形の面積が二等分される理由を説明する問題です。算数の作図問題としては、比較的珍しくない問題ですが、ただ単に作図の仕方を問うているだけではないのが、この問題の魅力的な点です。

この理由を説明するときに大切になってくるのが、この問題の前半部分です。
この問題の前半部分は、「長方形を二等分する線の作図の方法とその理由」について書かれています。この部分がなくても中学入試の問題として成立するため、このような情報提供がある問題はかなり珍しいといえます。この前半部分を問題に載せた作問者のねらいは、「長方形を二等分する線の作図とその理由」を前提として受験生全員に渡すことで、その前提をもとに理由を説明してほしいということでしょう。この前提をもとに理由を説明するプロセスは、数学で学ぶ「証明」につながっているといえます。

浅野中学校の算数では、ここ最近、理由を説明する問題が出題されています。今年のこの問題からも、入試問題を通して定義や定理をもとにした数学の「証明」にチャレンジしてほしい、という出題校の先生方の想いが伝わってきます。入試問題の1問を通して、出題校の先生方が算数から数学へと誘っているのではないでしょうか。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。