出題校にインタビュー!
ドルトン東京学園中等部
2022年10月掲載
ドルトン東京学園中等部の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.自分の学びは自分でデザインする
インタビュー3/3
アサインメントを見て自ら学習計画を立てる
貴校の学びの特徴を教えてください。
風間先生 ドルトン東京学園の学びは、「アサインメント」という学びの羅針盤に沿って展開していきます。アサインメントには単元・テーマごとに目的や到達目標、学習の方法、手順、課題を具体的に示しています。これを見て、生徒は何を、どのように学んでいくかを把握し、自ら学習プランを設計します。
伊東先生 理科は生徒自身がやりたい実験を選び、計画を立て、材料も実験器具も準備して、教員のアドバイスを受けながら実験を進めていきます。学期末には実験成果を発表します。普段の授業が探究的な活動になっています。
ドルトン東京学園中等部 ラーニングコモンズ
「1人でできることは1人で行う」が基本
風間先生 実験は基本的に個人で行うようにしています。他人任せにならないように、「1人でできることは1人でやろう」というスタンスです。あまり実験に積極的ではない生徒も、個人でやらざるを得ない環境になると、ああでもないこうでもないと手を動かすようになります。
伊東先生 “やらされた”実験はあまり覚えていませんが、自分で試行錯誤した実験は自分の言葉で説明できます。理科があまり得意ではない生徒も、自分の実験を熱心に語ってくれます。
風間先生 理科の授業は一律に展開していないので、同学年の同じクラスでも、化学反応の実験をしていたり、顕微鏡で観察をしていたり、座学をしていたりという風景も当たり前です。
ほとんど“実験漬け”という生徒もいます。実験は学校でしかできないので、知識の習得は自宅で行い、その分の時間を実験に充てているようです。
伊東先生 理科の授業は基本的には2時間連続で組んでいるので、自分のやりたい実験にしっかり充てることができます。
風間先生 ある生徒は、醤油から塩を取り出す実験を1カ月くらい行っていました。何度も実験を繰り返した結果、他の生徒に比べはるかに純粋な塩の結晶を得ることができたようで、とても喜んでいました。本校は生徒のやりたいことがとことんやれる環境だと思います。
ドルトン東京学園中等部 理科室
単元テストを受けるタイミングも各自で違う
風間先生 本校は定期試験を設定していません。試験があるから勉強するのではなく、自発的に勉強してほしいのです。テストは単元ごとに行います。いつ受けてもよく、準備ができたタイミングで申告して受けます。単元テストは再チャレンジを認めています。
伊東先生 教科の特性上、どこから取り組んでもいいものと、そうはいかないものがありますが、理科は自由度が一番高いと思います。
風間先生 中学理科は比較的自由な順序で学習をすることができます。学ぶスピードや深さは生徒によって異なるので、自分でどんどん学び進める環境も、教員の解説をしっかり聞きながら取り組む環境も、どちらも用意しています。
ドルトン東京学園中等部 理科室
実験の過程はすべて「実験ノート」に記録
伊東先生 中1から大学生が使用する「実験ノート」を使っています。実験の内容は目的に適っているか、目的に沿った考察ができているか、文章記述の言葉遣いなどを教員がチェックします。再提出を求めることもあります。
実験を始めたばかりの中1は結果と考察の区別がつきません。感想になっていることもよくあります。どこまでが結果なのかをはっきりさせて、結果からわかることを1行でも書こうとアドバイスしています。実験ノートの活用によって、考察を導く力、表現する力がついてきているように思います。
新校舎に3つの実験室が誕生
風間先生 今年の9月から新校舎「STEAM校舎」が稼働しました。3階の「サイエンス・ラボラトリー」の3つの実験室は個人実験を想定した造りになっています。危険なものは別に管理しますが、ある程度安全な試薬や実験器具などは生徒がすぐ取り出せるように、収納棚のある実験台を設置し、実験の準備が効率よくできるようになっています。
まるで大学の研究室のような雰囲気ですね。
風間先生 「実験したい!」とやる気が起こる、ワクワク感のある実験室にしたいと思っています。
普段の授業で異学年が一緒に実験する環境
伊東先生 また、本校では違う学年の生徒が隣同士で同じ実験していることも珍しくありません。実験中は声をかけ合ってやっています。
とてもユニークな環境ですね。どんな効果が見られますか。
伊東先生 期末ごとの実験成果の発表は授業中に行うので、違う学年が混在しています。中2は中1を意識して先輩らしく振る舞うようになり、質疑応答では鋭い指摘も出てきます。
風間先生 同学年は居心地がいいけれど甘えも出てきますから、異学年の目があることはいい刺激になっています。
伊東先生 本校には「ハウス」と言って、複数の学年でコミュニティを形成する活動があります。普段から異学年と過ごす時間が多いので、授業でも違和感があまりません。
風間先生 今年度は同学年が多い授業編成でしが、やってみるといろいろな学年がいる方が、相乗効果が起こりやすいとわかりました。
伊東先生 中学生は同学年の目が何かと気になってしまうので、個人の興味関心に向き合うには異学年編成が適しているように思います。
風間先生 今後は上級生が下級生をどんどんサポートしてほしいですね。目線が近い生徒同士で教え合う方が理解しやすいですからね。学年が違うことによる経験値の差が上手い具合に教えやすさ・教わりやすさにつながるのではと期待しています。
ドルトン東京学園中等部 理科室
受け身だった生徒が主体的になってきた
1期生が高校生になりました。ここまでふり返っていかがですか。
風間先生 「これを知らないと説明できない」ということに気づき始めて、知識を進んでインプットするようになっています。
教科書には一般的な事実が中心に示されています。もっとわかろうとすると「なぜだろう?」と疑問が湧いていきます。こちらもなぜ?を問いかけたり、疑問を解くヒントを与えたりします。すると、生徒たちは自分で学び進みます。1期生は、ここへ来て学ぶ姿勢が大きく変わってきました。受け身だった生徒が「なぜ?」「どういうこと?」と積極的な姿勢を見せています。彼らの大きな成長を感じています。
伊東先生 自ら進んで学ぶ力がついてきたのは、中学のときに時間をかけて勉強の方法や勉強に向かう姿勢を育んできた成果ではないかと思います。
待っていても何も起こらない。「自ら動く」がドルトン流
1期生がまだ高1ですが、大学受験に向けてはどのようにお考えですか。
風間先生 本校の理科の学習形式において、知識の習得の部分が課題と考えています。そこは手探りでやってきましたが、1期生は主体的に学ぶようになってきています。勉強が楽しくなってくると、土日や長期休暇の使い方が変わってくるはずです。そうなれば成績も伸びてくるのではないかと期待しています。
伊東先生 母体である河合塾との連携があるのも、大学受験においては大きな強みになるはずです。
1期生を見ると、自分の興味関心とは違うけれど、進路に必要となれば前向きに取り組もうとしたり教員に質問したり、意欲的な姿勢が見えるようになってきています。入学当初は「教えてくれないからできません」という生徒もいましたが、中学を卒業する頃には、教えてくれるのを待っているような生徒は皆無になります。
風間先生 大学に進学してからもさらに学び続けられるように、そのための素地を中高6年間で養いたい。生涯にわたって学び続けられる人物を育てたいと思っています。
ドルトン東京学園中等部 校舎内
インタビュー3/3