シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

ドルトン東京学園中等部

2022年10月掲載

ドルトン東京学園中等部【理科】

2022年 ドルトン東京学園中等部入試問題より

図は、世界で発生した台風の経路を地図上に表したものです。台風は発生する地域(ちいき)によって、ハリケーンやサイクロンという名称(めいしょう)を用いますが、この問題ではすべて「台風」という名称を用いています。これを見て次の問いに答えなさい。

問題図

(問1)台風について図から読み取れることは何ですか。2つ以上挙げなさい。

(問2)(問1)で挙げたものから1つ選び、なぜそうなっていると考えられるか説明しなさい。選んだものが分かるように、(問1)の解答に下線を引くこと。また、その考えが正しいことを示すために必要な情報は何ですか。例にならって答えなさい。

例:世界各国の人口データ

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このドルトン東京学園中等部の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(問1)

  • 台風は赤道上では発生していない。
  • 台風は赤道を越える移動をしていない。
  • 台風の大部分は赤道付近の海で発生している。
  • 台風は南大西洋ではほとんど発生していない。

など

(問2)
(選んだもの)台風は赤道を越える移動をしていない。
(説明)台風を動かす上空の風は赤道を越えない。
(必要な情報)赤道および赤道付近の風の動き

解説

示されている図から読み取れる「台風は赤道を越える移動をしていない」ことを例にあげて考えてみましょう。台風は風の影響によって移動することが多いので、台風が赤道を越える移動をしないということから、「台風を動かす上空の風は赤道を越えない」という仮説を立てることができます。この仮説が正しいことを示すためには、赤道および赤道付近の風の動きの情報が必要になります。

他にも、「台風は南大西洋ではほとんど発生していない」ことを例にあげると、台風はあたたかい海水がエネルギー源になって発生するため、「南大西洋は他の地域と比べて海水の温度が低い」という仮説を立てることができます。この仮説が正しいことを示すためには、世界の海の海水の温度の情報が必要になります。

このように、「図から読み取れること」「図から読み取ったことの原因と考えられること(仮説)」「仮説が正しいかどうかを判断するために必要な情報」の3つが、論理的につながっていることが大切です。

日能研がこの問題を選んだ理由

毎年夏から秋にかけて、日本は台風の影響を受けます。ニュースでは、これまでにないほど大きな勢力を持ったスーパー台風や不規則な経路をたどる迷走台風、立っていられないほどの強い風や雨、洪水や高波といった大きな被害等が報道されることがあります。私たち日本人の生活と台風による影響は切っても切り離せません。その台風を、世界的な規模の現象としてとらえ、たくさんの台風が移動した経路をまとめてみると、どのようなことがいえるでしょうか。この問題と向き合うことを通して、子どもたちは自分の中にある知識や身近な体験を、より俯瞰的な目で見てとらえることにチャレンジします。

これまでとは違った視点でとらえたことを言葉にする。とらえたことが起こる理由を推測して仮説を立てる。立てた仮説を検証するためにどのような情報が必要なのかを検討する。このような考え方は、科学が発達していくプロセスの中で大事にされてきたものごとのとらえ方とぴったり重なります。科学的に思考する力を育て、課題に対する解決の道筋を探り、広げたり深めたりしたことを仲間と共有して発信していく。まさに科学者そのものの思考を、この問題を通して実感することができるでしょう。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。