シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

芝浦工業大学柏中学校

2022年10月掲載

芝浦工業大学柏中学校【国語】

2022年 芝浦工業大学柏中学校入試問題より

形声文字と呼ばれる漢字は、意味をあらわす部首と音をあらわす部分でできています。
この音をあらわす部分を音記号と呼ぶことにします。

(問)先生が生徒にいくつかの音記号を示しました。生徒達は、その音記号のうちいずれかを使ったある漢字について考えています。その漢字を理解するために、音記号に様々な部首を付けてみました。部首の意味をふまえて、それぞれの生徒の説明を読みながら、生徒(A)〜(C)が考えているある漢字を答えなさい。また、(D)の問に答えなさい。

例:音記号『成』
この漢字は食べ物をきれいによそうという意味だから、『うつわ』をあらわす部首がついているんだね。」
答え:
音記号 『交』『音』『早』『里』

(A)「この漢字は習ったことないけど、部首を見たら『けもの』を表していることがわかったよ。音記号は、読み方だけでなく、この『けもの』が生活している場所を指しているんだろうな。」

(B)「僕はこの漢字が表している場所が大好きだよ。最近はあまり見ないけど、きっと昔は木で作られたものが多かったんだろうね。」

(C)「この漢字の意味って、ほとんど部首に込められているよね。音記号と部首の役割がとてもわかりやすい漢字だなあ。」

(D)生徒達が次のような話し合いをしています。
「『飴』という漢字は訓読みだと『あめ』と読むけど、音読みだとなんて読むのかな。」
「音記号が『台』だから『ダイ』と読みそうだな。あれ、辞書には『シ』と読むって書いてあったよ。」
「そうなんだ。そういえば、同じ音記号のこの漢字は『シ』と読むね。この漢字が表す動作って、女性が担(にな)っていたのかな?」
生徒達が話しているこの漢字を含む熟語を、自分で考えて書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この芝浦工業大学柏中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(A):狸 (B):校 (C):草 (D):(例)開始

解説

(A):「部首を見たら『けもの』を表していることがわかった」という説明から、部首は「けものへん」であることがわかります。また「この『けもの』が生活している場所」とあり、示された音記号の中に「場所」を表しているものとして「里」があります。そして、「けものへん」と「里」を組み合わせると「狸」という字になります。

(B):「この漢字が表している場所が大好きだよ」という説明から、場所を表す漢字もしくは場所を表す言葉に使われる漢字であるということが予想できます。そして、「きっと昔は木で作られたものが多かったんだろうね」という説明から、部首として「きへん」を使うことが考えられます。「きへん」を示された音記号と組み合わせていくと「校」という漢字ができあがり、この字には「学校」という意味合いがあるので、「この漢字が表している場所が大好きだよ」という説明にも合致します。

(C):(C)の説明から、(1)部首と漢字の意味がほぼ同じである (2)この漢字の読みと音記号となっている部分の読みのつながりが強い という2点がわかります。また、(1)から漢字の訓読みと部首のつながりが深いことも手がかりになるでしょう。漢字の意味とほぼ同じになりそうな部首としては、「きへん」「もんがまえ」「あめかんむり」などが考えられますが、いずれも部首がそのまま漢字になるものです。こうした部首の可能性を外していくと、「くさかんむり」と音記号の「早」を組み合わせた「草」があることに気づくことができます。

(D):(D)にある生徒たちのやり取りから、音記号が『台』、『台』を使ったこの漢字の読みは『シ』、そして『女』という部分を持つことが考えられます。読みについては『シ』とカタカナで表記されていることから、『シ』が音読みであることも手がかりになるでしょう。こうした情報に合致するのは「始」という字です。「始」という字を使った熟語には「開始」「始動」「始発」などがあります。

日能研がこの問題を選んだ理由

生徒の発言や、生徒どうしのやり取りを読んで、提示された音記号を使った漢字や、その漢字を使った熟語を作って答える問題です。子どもたちは、自分が持っている、音記号と読み、部首と意味などの漢字に関する様々な知識と、問題で示された情報をもとに思い浮かべた形を、パズルのように音記号と組み合わせながら漢字をさぐっていくのだと思われます。

この問題に取り組んだ受験生の中には、ピタッとはまる漢字をなかなか見つけられず、悶々とした子もいたことでしょう。しかし、そうした苦しさにくじけることなく、自分なりの答えをさがしつづける粘り強さが、この問題では求められているのだと考えられます。さらに、(A)の答えである「狸」のような、小学校では学習していない漢字も出題されていることから、未知と出あったときに、不安や心の揺らぎにも動じず、示された情報に基づいて論理的に思考する力が求められているように思います。

この問題は、子どもたちが今まで持っていた漢字の学習観という過去をふり返る機会になるのと同時に、これからの漢字学習の展望という未来に目を向けた気づきを得る機会にもなる、子どもたちの今までとこれからをつなぐ内容であるといえます。また、漢字を切り口として、「『知識を身につける』とはいかなることか」と、世の中に一石を投じるものであると考えます。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。