今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
海城中学校
2022年09月掲載
2022年 海城中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
(問)《資料1》は時代劇『名奉行 遠山の金(きん)さん』のあらすじです。実際には自分で捜査(そうさ)し証拠(しょうこ)をつかんでくるような町奉行はいませんでしたし、ヒーローのような人物とも限りませんでした。そのようなことを除いたとしても、現在の裁判のやり方からみると、町奉行である遠山景元(「金さん」とよばれる)が裁判をおこなうことには問題があります。その問題はどのようなことかを述べた上で、それによって裁判の被告人にどのような影響があるのか、《資料1》・《資料2》・《資料3》を参考にして、130字以内で述べなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この海城中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
遠山景元は検察官として被告人の有罪を主張しながら、裁判官として判決を言いわたしている。これでは、捜査のやり方や内容が適切であるか検討されないで判決がくだされるおそれがあり、被告人を弁護する人もいないため、被告人が不利な立場におかれる。
解説
問題では、時代劇のあらすじの説明と、現在と江戸時代における刑事裁判のようすが図で提示されています。あらすじをふまえて刑事裁判のようすの図を見比べると、江戸時代には被告人の利益を守る弁護人がおらず、町奉行である遠山景元が、被告人の有罪を主張する検察官と、判決をくだす裁判官を兼ねていることが読み取れます。
このような状況を現代の裁判のしくみと照らし合わせたとき、遠山景元が裁判をおこなうことにはどのような問題があり、それによって裁判の被告人にどのような影響があるのかを、問題の本文や学んできた知識をもとに考えます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
海城中学校の今年の入試問題の文章は、古代から現代にかけての裁判のあり方の変化をテーマとしています。この問題を考えるために必要な、刑事裁判のしくみや被告人の人権といった現在の制度については受験生であれば学んでいますが、本文や〈資料2〉からも読み取ることができます。一方、江戸時代の裁判のしくみは、受験生は入試の場で初めてくわしく知ったことでしょう。知識と、文章や資料から読み取れることを組み合わせていくことで、今回の「金さんが裁判をすることの問題点」が明らかになっていきます。
入試問題の本文は、次のような文章で締めくくられています。
「長い年月を経て、裁判のあり方は、多くの人々がより納得できるものへと変化してきました。もちろん、いまだ不十分な点もあります。みなさんも当事者の一人として、今後の裁判制度の変化に注目してみましょう。」この問題は、文章や資料を活用しながら江戸時代の裁判を現代の裁判の制度と照らしてその問題点を考えることで、未知のことがらに対する気づきが生まれるきっかけとなるでしょう。また、知識としてだけでなく、現代の制度の意味や人権について、当事者として改めて考えることにつながっていく問いかけであることが魅力だと感じました。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。