シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

富士見中学校

2022年09月掲載

富士見中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.統計を出題していこうと満を持して臨んだ問題

インタビュー1/3

この設問の出題意図を教えてください。

斉藤先生 これまで統計の問題というのは、小学校の旧課程ではあまり入ってなく、どちらかというと出しづらかったというのがあったのですが、新課程になって小学校でも統計学習が始まったことから、統計を出題していきたい、というのが1つです。

もう1つ、これは中学・高校もそうですが、数学という教科の中に統計が入ると、計算して答えを出すという目的ばかり指導してしまいがちですが、統計って、計算して答えが出てそこから何が言えるかとか、その分析が大事だと思い、そういう意図も含めて出題しました。題材はなんでもよかったのですが、身近な話題が良いと思いまして、本をテーマに出題しています。

正答率はどうでしたか?思ったよりできたと思いますか?

斉藤先生 この問題に関しては、あまりできないのではないかと心配でした。もしかしたらそういう話を全く聞いたことのない小学生もいるのかな?という風にも思っていましたが、半分位はできていたと思います。
一応、小学校の教科書を見ての「考えてみよう」みたいな課題のところに、こういった「外れ値」のような話が載っていたので、このような出題ができるかな?と思って作成しました。

この問題は一人の先生がパッとひらめいて出来あがった設問なのか、対話や議論を重ねていく中でこの形が見えてきたものなのか、どちらでしょう?

斉藤先生 最初は私が原案を作りました。その後、何回も教科での会議を重ねた上で最終的にこのような形になりました。

福田先生 内容や4択で選ぶというのは斉藤先生が作って、他の教員は出てきたものの言葉尻を調整したり、解いてみたりといった具合ですね。今回はおそらく全員新しい傾向に思ったと思います。

数学科/斉藤 翔平先生

数学科/斉藤 翔平先生

新しい傾向に踏み切った問題形式

問題を作る場合、何グラムとか何人みたいな形で、計算して答えを出すものが多いと思うんですが、選択肢として出すというのはあまり多くはないと思います。文章を選択するといった形式で出すのは、数学科の中で話題に上がったりしたのでしょうか?

福田先生 選択肢のタイプは、あまり多くはないですが、たとえば、「○○はどのような図形になるか」を選ばせる問題がありますが、状況を選ばせる問題というのはとても新しい傾向です。

斉藤先生 この問題を見た小学生がどう考えるか?どう思うのか?というのを、いつも会議でも考えています。我々から見たら当たり前の問題ですが、小学生から見たらどう見えるのかな?と話し合ったりするんですよ。

論理性を意識した問題を例年出題

論理性を見るのが、ねらいとしてあるのでしょうか?

斉藤先生 そうですね、論理性に関しては例年出題時には意識しているところでもあります。最近は、情報を読み取るということがかなり重視されているなと感じます。大学入試でもそうですし、それを踏まえて本校の中学入試でも、かなり情報がいっぱいの問題の出題が増えていると感じます。

最近センター試験から共通テストにガラッと変わり、それを解くことができる生徒を育てるにはどうするのがいいか?と日々試行錯誤していますが、たとえば、定期試験なんかにも会話文を入れてみたり、少し長めの文章入れてみたりとか、いろいろな工夫をしてはいます。

たとえば、単純な問題を生徒にやらせてみて、その問題は誰でもできるようになったとします。次にその問題を数学的な処理は全く変えず、少し状況を日常的なものに当てはめたりしたりするんです。そうすると数学的には全く同じ問題なのに、文章が長くなったり、見慣れない文章になったりするだけでもう混乱してしまいます。

富士見中学校 校舎

富士見中学校 校舎

生徒との対話の場を持つことが重要

塾で教えている中で思うのは、つるかめ算ってありますよね。つるかめ算は解けるようになるんです。つるとかめとかであれば。でも、つるやかめが100円、150円の鉛筆になると急にできなくなることがありますね。

斉藤先生 やはり何年も前から行っているアクティブラーニングという対話の場が重要です。教員と生徒の対話もそうですし、生徒同士の対話もそうです。対話からお互いのいろいろな考え方を学んでいく、体で身につけていく、そのような機会を多く持つ必要があるのかな、とは思っています。

時間はかかりますか?

福田先生 すぐポンと伸びるんじゃなくてゆっくりと、といった感じですね。中高生の授業で気をつけなくてはいけないのは、単調な授業だと答えを待つ生徒が育ってしまいます。先日もちょうど「一学期どんな授業してた?」って数学科みんなで盛り上がったんですが、本当にこの4、5年ぐらい、ただ解かせるというよりも、対話しながら考える機会を増やしている先生方はとても多かったですね。そういうことを地道にやっていくと、読解力や論理的に考える力などが育つのかな、というのがありますね。

富士見中学校 校舎

富士見中学校 校舎

インタビュー1/3

富士見中学校
富士見中学校1924(大正13)年に富士見高等女学校として発足。40(昭和15)年に財団法人山崎学園が経営を引き継ぎ、47(昭和22)年に富士見中学校、48(昭和23)年に高等学校を設立。山崎学園は、山種グループの総帥・山崎種二(初代理事長)が教育事業に進出するために設立。
「純真・勤勉・着実」を建学の精神とし、「良識ある判断力、自主・自律の精神、協調・連帯の精神」を持つ国際的な現代女性の育成を目指している。大学現役合格を目指す進学校として、基本は勉強に置くが、進学実績だけでなく生徒の個性と可能性を伸ばすことを重視し、一人ひとりの生徒を大切にする。教育=人間として、生徒と教師の信頼関係も厚く、自由でのびのびとした雰囲気がある。休み時間や放課後では、いたる所で生徒が質問している姿が見られる。
駅から徒歩数分の環境にある。現在の校地には、中高校舎、体育館のほか地下温水プール、高3自習室、学習ホールなどを備えた50周年記念館、550名収容の山崎記念講堂、百人一首なども行われる茶室・和室などがある。各教室は冷暖房完備で校内はすべて無線LANになっている。探究学習に適した図書館 ”Learning Hub”(略してL-Hub/エルハブ)は別棟となっている。また校内には様々な絵画・彫刻が飾られ、情操教育に役立っている。
6年後を見据え、学校の勉強だけで希望大学へ進学できるように組まれているカリキュラム。高1までは全教科を幅広く学習。教科によって学習速度を早めた先取り授業を行い、中3で高校課程に入る数学、英語は2クラス3分割の習熟度別授業を行う。また、中3では、調べ学習の集大成として卒業研究をまとめる。授業では各教科の先生によるオリジナルのテキストを使用。あえて特進コースを作らず、高校は文系・理系の2コース制で、国公立大学・難関大学にも対応。さらに、選択制による授業に加え、放課後や夏期・冬期の講習、朝に行う週1回の英語、国語の小テスト、放課後の英会話講座、予習・復習のサポートなどバックアップ体制も充実。
自主性が重んじられ、校則は常識的な範囲。生徒会活動やクラブ活動が活発。中1のクラブ活動参加率は100%以上。また、全ての教員がクラブ顧問を務めている。ダンス部は全国大会などで活躍。フットサル部もある。
中1では学びに向き合う姿勢を育み、中学では保護者や社会人OGによる講演、中2~高校では大学の各学部の教授の講義を体験する「模擬授業ウィーク」なども行う。他にも、文化祭、スキー教室、また山崎記念講堂で狂言、京劇、音楽などの鑑賞会、合唱大会などがある。体育祭での高3の創作ダンス「扇の舞」は圧巻。教師や生徒同士の協力のなかで、交流を深め、体を鍛えることに役立っている。高1の希望者には、夏休みにアメリカとオーストラリアでのホームスティがあるほかに、ニュージーランド・オーストラリアへの短期留学・長期留学、台湾への教育旅行、ヴェトナムへのグローカルリーダー研修などがある。中学の制服はセーラー服、高校の制服はブレザー。2021年度より中高共にスラックスも導入。