今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
富士見中学校
2022年09月掲載
2022年 富士見中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
富士見中学校に通うひなたさんは、クラスの友人19人に対して「先週1週間に本を何冊読んだか」の調査を行ったところ、最も多い人で17冊の本を読んだ人がいることがわかりました。ひなたさんは、調査結果を次のようなドットプロットにまとめましたが、1人分の結果を見落としてしまい、図には18人分の結果しか反映されていません。
このとき、次の問いに答えなさい。
(問)19人が読んだ本の冊数の平均値と中央値のどちらが大きいかは、上のドットプロットを見れば平均値や中央値を計算せずに判断することができます。その判断の理由として最も適切なものを次の(ア)〜(エ)のうちから1つ選び、記号で答えなさい。
(ア)0冊または1冊の本を読んだ人が少ないから。
(イ)2冊、4冊、7冊のように、ドットプロットの「山」が複数あるから。
(ウ)5冊、6冊のように、ドットプロットに「へこみ」があるから。
(エ)11冊、17冊のように、極端(きょくたん)に多くの本を読んだ人がいるから。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この富士見中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(エ)
解説
平均値は、「合計値÷個数」で求められます。また、中央値は「真ん中の順位(この問題では上から10番目)の値」です。
この問題のデータでは11冊と17冊の2つは、他と比べて極端に値が大きいものです。平均値を考えるときは、この極端に値が大きいものをふくめて考えなければなりません。一方、中央値を考えるときは、11冊や17冊の2つは、1位や2位でしかありません。
例えば、下の図のように、極端に値が大きいものがないときとあるときを比べます。
極端に値が大きいものがあると合計値も大きくなるので、それに伴い平均値も大きくなります。
しかし、中央値は、順位のみを考えるので、1番目や2番目の値が極端に大きくても、真ん中の値の大きさは影響しません。
よって、この問題でいえば、中央値よりも平均値の方が大きくなると判断できます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
この問題は、示された数値データから平均値・中央値のどちらが大きいかを考える問題です。平均値も中央値も、求め方さえ知っていれば、それぞれの値を求めてどちらが大きいか判断することができます。
しかし、この問題では、平均値と中央値のどちらが大きいかは、ドットプロットを見れば「計算せずに判断することができます」と子どもたちに投げかけています。この投げかけがあることで、この問題では、上述のように知識として代表値の求め方を知っているかどうかではなく、代表値の意味や本質を問うているといえます。このデータが持つ特徴が、平均値・中央値にどのような影響を与えるのかを考えることで、平均値とは何か、中央値とは何か、と子ども自身がそれぞれの値の、本来の意味や役割をとらえることにつながっていくでしょう。もしかしたら、この問題で示されたようなデータの場合、「1人が読む本の冊数の代表値として、どちらの値を用いるべきなのか」という新たな問いを作る子もいるかもしれません。
このような統計の問題は、近年の中学入試で出題が増えています。その中でも、ただ定義にあてはめて数値を求めるだけではなく、それぞれの代表値の意味や役割に触れていくこの問題は、子ども自身の「データと向き合う力」を問うていると言えそうです。情報化社会と呼ばれるこの世の中で必要となる「データと向き合う力」と「数学的判断力」を大切にし、育てようという学校の先生方の想いが伝わってきます。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。