出題校にインタビュー!
世田谷学園中学校
2022年08月掲載
世田谷学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.大問3題構成で最後まで取り組めるように
インタビュー2/3
勉強してきたことが発揮できる問題を出題
理科の入試問題としてどんなことを大切にされていますか。
瀬川先生 基本的なことをきちんと勉強しているかどうかを問うことが大前提になります。基本が身についていればある程度は得点できるように作問しているつもりです。中でも実験・観察を大切にしています。初見の内容でも、これについて観察したらこんなことがわかりました、こんな実験をしたらこのような結果になりましたという情報を基に、その場で考える力、学習してきたことを活用する力を測っています。
理科主任/瀬川 祐先生
大問3題構成はリード文を読んでほしい意図も
2019年度入試から大問を4題から3題の構成に変更されました。変更後、受験生の解答状況に変化はありましたか。
瀬川先生 大問4題のときは最後の方になると無答が目立ち、時間が足りなかったことがうかがえました。3題になってからは文章記述問題に無答はありますが、最後までたどり着けなかったというのは少なくなっています。
生物・地学の問題は読んで解く問題なので、しっかり読んで考えられるように、時間内に読める長さにしているつもりです。3題構成にしたのはリード文を読んでもらいたいという意図もあります。理科でもリード文や設問文、選択肢の文章を「読む力」を重視しています。3題構成にしてから読む時間が取れるようになっていると感じます。
柏原先生 大学の入試問題を見ると、長いリード文が結構出されています。国語の読解力は理科をはじめ他の教科の土台になると感じています。読む力が重要ですから、国語の力も大切ですね。
初見でも持っている知識を活用すれば解ける
貴校の問題を見ると、読み取った情報と身につけた知識を組み合わせて考える力が求められていると感じます。
瀬川先生 リード文を読んで考えるのはもちろんのこと、初見の内容でも学習してきたことを当てはめて考えてもらおうと思って作問しています。
リード文では、「アイボール・アース」という惑星は「中心にある恒星に対して、いつも同じ面を向けて公転する」ということを説明しています。この特徴を、星Sの周りを公転している星Pが持っているとき、同じ値になっているものを選ぶ選択問題を出しました。これは地球と月、太陽の関係を当てはめて考えます。
柏原先生 この問題も太陽系の8つの惑星の太陽から近い順番を知らなければ解けません。初見の問題は、自分の知っていることをとっかかりにしながら、問題文から情報を読み取っていってほしいですね。
世田谷学園中学校 化学講義室
合格者の正答率が受験者を下回る問題があった
瀬川先生 基本問題として、物質を選んだり名前を書かせたりする問題を出しています。正答率は例年高い傾向です。しかし、2022年度の第1次試験では、合格者の正答率が受験者をわずかですが下回った問題がありました。
「重曹を加熱して発生した気体の名前」を答える問題の次の次に、「重曹水にクエン酸を加えたときに発生した気体の名前」を答える問題を出しました。どちらも「二酸化炭素」が正解です。後者の正答率が低かったのは、同じ答えが続いて「二酸化炭素ではないのかも」と不安になったかもしれません。
クエン酸を知らなかったということもあるでしょうが、塩酸のように「○○酸」という物質の名称から想像してほしかったのです。アンモニアといった見当違いな答えが目立ちました。
「こうだから、こうだ」と確固たる自信を持って答えられなかったのですね。選択問題も、同じ記号が続くとさすがに次は違うだろうと頭から思い込みがちです。心理的な部分が解答に影響することはありますね。
他の教科の知識をうまく活用しよう
柏原先生 生物・地学の問題で、文中の空欄Yに当てはまる語句として「多様(性)」を書かせる問題を出しました。身近な話題や最近のニュースなどには目を向けておいてほしいなと思います。
空欄Yはリード文に2カ所あって、「星の環境」と「生命」から、多様性でいいのだと確認できるようになっていますね。
柏原先生 多様性は日常的によく耳にする用語ですから、世の中のことに興味を持っていれば正解できると思っていました。それでも正答率は合格者が38.3%、受験者で32.2%と意外に低かったのは、理科の問題で多様性を答えることがあまりなかったためかもしれません。
「一貫性」や「新規性」のように全く違う答えのほか、「複雑性」は言いたいことはわかりますが的確ではありません。
「多様性」は社会科ではよく使うけれど、理科ではあまり使いません。「生物多様性」は理科の範囲ですが、引き出せなかったのでしょうね。
柏原先生 教科で知識が縦割りになっているのは生徒を見ていても感じます。これは受験生に限らず入学してからも課題の一つです。
小学生は食塩水の問題がそうです。算数の食塩水の問題と計算方法は同じはずなのに戸惑う子どもがいます。縦割りを打破して教科を横断して活用できるようにするアプローチの必要性を感じています。
世田谷学園中学校 掲示物
文章記述問題は聞かれたことに的確に答える
受験生の答案を見て、何か気になることはありますか。
瀬川先生 用語を漢字で書かせる問題を出していますが、漢字は苦手そうですね。漢字指定は物質名など「これくらいは書いてほしい」というもので、社会科の人物名などに比べれば難易度は高くないと思います。
字数指定の文章記述問題は「書けない」とあきらめてしまうのか、無答があります。
柏原先生 大問3では、リード文中の空欄Xにあてはまる文を考えて15字以内で答える問題を出しました。地球とは環境の全く異なる星(アイスボール・アース)について想像してもらうのですが、空欄Xの直前に「言い換えれば」とあるので、アイスボール・アースについて説明している部分をまとめてもらえばいいのですが、(この星は)「地球ではないのです」「生物がいないのです」というような見当違いや、「いつも昼なのです」と文中の説明そのままの答えがありました。
瀬川先生 落ち着いて見返せば「おかしい」と気づけても、入試で客観的に見直す余裕がなかなかないのかもしれませんね。
柏原先生 大問3題になったとはいえ、文章記述など手強い問題もあるので、丁寧に見直す時間はあまりないでしょう。一発で要求されていることに的確に答えるには、設問の意図を読み取る力が必要です。
瀬川先生 そうなると基本問題にあまり時間をかけてはいられません。確実に得点できる問題は効率よく答えることです。本校の理科入試は30分ですから、自分が解きやすい問題から解くようにして、考える問題に時間を充てられるようにしましょう。
インタビュー2/3