シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

フェリス女学院中学校

2022年08月掲載

フェリス女学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.素材文を咀嚼しながら読むことからすべてが始まる

インタビュー1/3

文章をきちんと読むことが大切

出題意図からお話しいただけますか。

先生 この文章(素材文)は対話と会話の違いを述べています。文章をきちんと読むことができれば、会話と対話の違いを押さえることができると思います。外からインプットした情報だけでなく、自分の中でどれだけ咀嚼できるか。自分の中でどれだけ具体性を持たせることができるか。そうした力を問いたいと思いました。論説文や評論は、ただ単に知識を得るために読むのではなく、自分の生き方やポリシーなどとどのようにかかわっているかを考えながら読むことがとても大切だと思います。

子どもたちは対話と会話が違うということに驚いたのでは?

先生 小学校6年生が、いきなり「対話と会話の違いは何ですか」と聞かれても、答えられないと思います。ですから素材文があるのです。やみくもに「会話ではなく対話をしたい関心事は何ですか」と聞くのではなく、この文章をきちんと読めば「あぁなるほど。そういう違いがあるのか」ということがわかると思います。

知らなかったことを喚起するのが評論や論説です。会話と対話の違いに気づいてくれれば、ある程度の考えに至るのではないかと思います。また、論理的に考えたことを言葉にできるかどうかも、この問題に限らずいつも気にしているところです。インプットとアウトプットは両輪であり、インプットだけでは素材自体を自分のものにしにくいところがありますが、アウトプットすることによりインプットしたことへの理解が深まるというか、良い相乗効果を生むと思います。

書いてみないと、自分の納得する答えが出てこないのです。書くことによって整理する力、解答にたどりつく力が養われます。それが分かってくると、書くことがとても楽しくなりますし、長い字数が苦ではなくなるはずです。

フェリス女学院中学校 中庭階段

フェリス女学院中学校 中庭階段

記述問題の採点基準は厳格に設けている

印象に残っている答えはありますか。

先生 具体的にはお答えできない事項ですが、ただ、1つ言えるのは、素材文から読み取ったものと自分の引き出しの中にあるものとを照らし合わせて答えを導き出してほしかったのですが、無理やり本校のモットー「For Others」と結びつけたり、世界共通の「SDGs」と結びつけたりしている解答が目につきました。きちんと機能していれば問題ありませんが、強引に結びつけても自分で論理立てて考えてアウトプットした解答にはならないのではないかなと思います。思考力といっても、やはり読解力がベースです。何もないところから、自分の考えを述べるのは難しいことだと思います。

曖昧な部分についてはどのように採点していますか。

先生 採点基準を具体的に言うことはできませんが、1つ言えるのは、入試ですから基準は厳格に設けている、ということです。人の人生がかかっていますからね。採点基準については、その問題を採点する者だけがわかっていればいいということではありません。国語科内で徹底的に議論して全員で共有しています。

フェリス女学院中学校 カイパー講堂

フェリス女学院中学校 カイパー講堂

インタビュー1/3

フェリス女学院中学校
フェリス女学院中学校フェリス女学院の教育理念“For Others”は、誰か特定の人によって提案されたものではなく、関東大震災後に、誰が言い出すともなくキャンパスに自ずとかもし出され、フェリス女学院のモットーとして自然に定着したものだということです。フェリス女学院では、“For Others”という聖書の教えのもと、「キリスト教信仰」・「学問の尊重」・「まことの自由の追求」を大切にしています。そして、生徒一人ひとりが、6年間の一貫教育を通して、しなやかな心を育み、つねに与えることができる、“For Others”の精神を持った者へと成長することをめざしています。校章には、盾に創設時の校名Ferris SeminaryのFとSの二文字がデザインされています。盾は外部の嵐から守る信仰の力を表し(「エフェソの信徒への手紙」6章16節)、白・黄・赤の三色は信仰、希望、愛(「コリントの信徒への手紙一」13章13節)を表しています。
外国人墓地や歴史的な建造物の多い異国情緒あふれる地域にある、落ち着いた雰囲気の学校です。創立者メアリー・E・ギターがこの地に開学して以来の歴史が、校舎を包む木々などから感じられます。2000年の創立130周年において新校舎建築となり、2014年には新体育館、2015年夏には新2号館が完成しました。中高の図書館には、図書・視聴覚資料・雑誌・新聞などの94,000点を超える資料があります。授業の課題制作や調べものや自習のほか、昼休みや放課後にも多くの生徒が利用しています。書庫は開架式で、図書を手に取って自由に選ぶことができます。
クラブ活動がたいへん盛んで、同好会、有志も合わせると約60近い団体が活動しています。中学生では、ほぼ100%の生徒がクラブに参加しています。ほとんどのクラブが中1から高2まで一緒になって活動し、同学年だけでなく、先輩・後輩という他学年との人間関係が築かれています。中3からは、クラブ以外でも、気のあった仲間同士で同好会や有志を結成して文化祭に参加するなどの活動もあります。