今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
フェリス女学院中学校
2022年08月掲載
2022年 フェリス女学院中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
次の文章を読んで後の問に答えなさい。
(略)
対話とは、真理を求める会話である。対話とは、何かの問いに答えようとして、あるいは、自分の考えが正しいのかどうかを知ろうとして、だれかと話し合い、真理を探求する会話のことである。ただ情報を検さくすれば得られる単純な事実ではなく、きちんと検討しなければ得られない真理を得たいときに、人は対話をする。それは、自分を変えようとしている人が取り組むコミュニケーションである。
ショッピングや仕事でのやり取りは、自分の要望と相手の要望をすり合わせようとする交しょうである。友人や恋人との会話は、よい関係を保ち、相手を理解し、たがいに話を楽しもうとする交流である。これらの会話は有意義かもしれないが、真理の追求を目的としてはいない。対話は、何かの真理を得ようとしてたがいに意見や思考を検討し合うことである。
(略)
(河野哲也『人は語り続けるとき、考えていない 対話と思考の哲学』岩波書店)
(問)あなたがだれかと会話ではなく対話したいと思う関心事と、その関心事についてのあなたの意見を二百字以内で書きなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このフェリス女学院中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
解答例1
私は、どこでどのように暮らすのかということについて家族と対話したい。今、コロナ禍にあり、両親は在宅勤務が多いが、出勤の日は通勤ラッシュで、神経をすり減らしている。また、集合住宅住まいのため、周囲に気をつかい、心を煩わされながらの生活に、家族は皆疲れている。だから、私の進学を機に、今後の人生を豊かに過ごすためにも、どこでどのような生き方をするかを家族で対話し、我が家の幸せを見つけたいと私は思う。
解答例2
私は、制服について先生方や保護者の皆さん、全校の仲間と対話したいと思う。私の通っている学校では制服があり、靴下やセーターなども全て指定のものだ。確かに、制服に袖を通すと気持ちが引き締まり、愛校心もわく。一方、指定されたものだけでは温度調節が難しく、成長期にある私たちが消耗品として買い替えるのには費用がかかり、不便も多い。だから、制服の存在意義や細かい指定の理由について、皆で対話するべきだと思う。
解説
提示されている論説文の中で、筆者は「対話」と「会話」を異なるものとしてとらえ、「対話」とは、真理を求める会話であると説明しています。そして、日常生活の中でも、「会話」ではなく、真理を得るための「対話」をするべきだという主張を述べています。
今回取り上げている「問」は実際の入試問題では「問三」で、その前には、問一、問二があり、設問どうしにつながりを見出すことができるでしょう。問一では、文章に書かれている内容を八十字以内で要約することを通して、まずは筆者という他者の考えを理解し、表現していきます。続く問二では、筆者の考える「対話」に合った具体例を選ぶことを通して、筆者という他者が書いた文章と自分自身の体験や現実の世界と照らし合わせていきます。そして問三で、「あなたがだれかと会話ではなく対話したいと思う関心事と、その関心事についてのあなたの意見を二百字以内で書きなさい。」という問題と向き合い、自分の意見を表現します。文章中や問二の中で取り上げられている具体例も参考にしながら、自分が真剣に他者と「対話」したいと思う題材を取り上げ、それについての自分の意見を述べましょう。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
「あなたがだれかと会話ではなく対話したいと思う関心事と、その関心事についてのあなたの意見を二百字以内で書きなさい。」という問題と向き合う中で、フェリス女学院中学校を受験した子どもたちは、どのようなことを感じたり、考えたりしたのでしょう。「会話ではなく対話」という、聞き慣れないであろう問いに、とまどった子どももいれば、「フェリス女学院中学校らしさ」を感じた子どももいたのではないでしょうか。日能研は、私学の入試問題を、私学の最初の授業(0時限目の授業)という視点でとらえたいと考えています。この問題からは、フェリス女学院中学校に入学後の、対話を大切にした授業が想像されるとともに、この問題自体がまさに先生と受験生の「対話」だとも言えそうです。
日能研では、この問題を上記のようにとらえさせていただきましたが、フェリス女学院中学校の先生方がどのような思いや意図を込めて出題されたのかを実際にうかがってみたいと考えました。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。