シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

逗子開成中学校

2022年07月掲載

逗子開成中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.単に知識を問う問題だけではなく、さまざまな観点から問える問題で構成

インタビュー2/3

全体の構成に関してはいかがですか?

鈴木先生 問題数を減らしました。それでもまだちょっと多いかな?という議論はあります。やはり記述を出している以上、記述の時間的配分をしっかり取った形での問題作成をしています。やはりしっかりと解いてもらいたい、40分ぴったりで終わるような形にしたいと思っています。

あと、資料やデータなどいろんな観点からただ1問1答の単発知識を問うだけではなく、いろんな見方で問題を問うことにより、多様性を確認したいですね。

コンセプトとしては基本問題を中心に70%みんなが頑張れば取れるようなという形での作問を行なっています。この部分に関しては、昔から変わっていないです。近年は、単純な一問一答ではなく、少し考えさせられるような問題が多くなったかもしれませんね。大事にしているのはバランスであって、難易度よりも40分の中で論述も含めてしっかりと解き終えることができる問題を作ることは意識しています。

社会科主任/鈴木 賢司先生

社会科主任/鈴木 賢司先生

歴史用語を「漢字」で書く意味

当たり前のことが、用語の漢字指定にも現れているのかな?と思ったのですが。

鈴木先生 漢字指定についてはよく質問があるのですが、その際には「自分の名前を平仮名で書かれたらどう思いますか?」と質問を返したりします。要するにこれは歴史用語であって、漢字の書き取り問題ではないんですね。ですから、平仮名をマルとしてしまうと、しっかりとした正しい知識を勉強してきた答案と差がつけられなくなってしまいます。だから頑張ってしっかりと勉強しようね、と子どもには励ますようにしています。

とはいえ、「ア」と「マ」、「ク」と「ワ」とか、カタカナが判読できないのは困りますね。これは本校に入学してきた子ども達、それも大学受験を目の前にした子達にも口を酸っぱくして言っています。漢字よりカタカナですと。綺麗・汚いではなく、読める字を書いてください、と。非常に好意的に採点をしているつもりですが、あまりにも読めないのは涙を飲んでバツをしています。

Google Classroomを活用した授業

授業を中心とした学校の中身の話に移りたいと思いますが、前回の取材と今との大きな違いに、コロナがあると思います。コロナ禍で変わってきたことや、新しく始めたことなどはありますか?

鈴木先生 どこの学校もそうだと思いますが、デジタル活用をするようになっています。本校の場合にはGoogle Classroomを利用しており、宿題の配信、提出ができるようになってきました。休校中は我々も動画を一生懸命作っていましたが、それを一過性に終わらせるのではなく、現在通常に戻りつつある中でも継続的にやっていこうとは考えています。もしまた休校になった場合にすぐ対応できるような危機意識は持っています。

でも、「やっぱり対面がいい」という意見が大半で、対面の重要視を再認識しましたね。子ども達も表情が明るいですし、質問ができますし。デジタル利用で、子ども達にとっては面白いかと思ったのですが、意外と反応がなかったです。最初のうちは授業がなくて不安だから動画を見るものの、一方通行ですしオンデマンドですから、好きな時に見れるものだと子ども達の勤勉度が落ちてくるんですね。そういう意味で授業をしっかりやっていかなくてはならないなと、という感覚を持ちました。
やはり対面授業で、子ども達が生き生きしてますよね。

逗子開成中学校 教室

逗子開成中学校 教室

想定する答えに導くために下線・波線を引くことも

資料の出し方や見せ方が親切で優しいイメージがあります。

鈴木先生 問題文に下線部を引くようになったのは、全体の文章で選択させることがかなり厳しい問題の場合は下線、波線を引いて、そうすることで難易度は下がると思います。この問題をどうしても作りたい、でも難易度が高いんだといった場合、工夫をします。

資料を出す以上はこちらが想定する答えを導くために、子ども達がどうしたら答えを書いてくれるかを逆算していくんですね。そこで、下線があった方が子ども達は書いてくれるだろう、ということで資料によってつけたりします。大学入試までには「資料は大事、よく読め」と我々が指導します。そうすると思い返すのか「そうだった、ちゃんと見よう」となり、自分で訓練をしながら欠点を補って資料をよく読むようになっていきます。

資料についても定期試験で出題はするのですが、同じミスをしてしまってその度に我々が指導して「よく読めよ」「分かりました」の繰り返しです。しかし、その繰り返しの指導の積み重ねが、大学受験につながってくれればよいかな、という思いで指導はしています。

内海先生 普段の課題を出すときも、中学1年生の最初の頃は与えられた課題に対して自分の言葉で答えられるようにということをメインにレポートを書いてもらったりするのですが、中学2年生では「資料のこの辺りを参考にしてまとめなさい」といったものや、中学3年生だと資料がいきなり与えられ、「自分でその題を認識して、自分なりに考えて意見を述べなさい」といった具合に難易度が上がっていきます。論述する際の強度と負荷を少しずつ高めていき、最終的に高校2~3年生では「今までやってきたように資料ってこうやって読んだらいいよね」という仕上がり部分まで持っていけるように、段階的なステップを踏んだ指導をしています。

鈴木先生 中学になると、いろいろなデータを見る機会も多くなってきますので、今後自分で何を勉強するにしても、行動するにしても、自分で気付きながら、資料を見ながらやらなければいけないことは増えてくると思います。

秦先生 家族で旅行したりすると地理で覚えた知識で「この場所はこういう歴史があってね」と親が知らないような事を楽しそうに話してくれたりしますよね。見た事のない資料を読み取る中で、学んだことが、そうした場面で役立てられていると、学ぶことって楽しいと思いますね。

広報部長/秦 健二先生

広報部長/秦 健二先生

インタビュー2/3

逗子開成中学校
逗子開成中学校1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。
建学の精神『開物成務』にのっとり、「真理を探究し、目標を定め、責務を果たす」ことのできる人材の育成が教育の目標。レベルの高い学問を修めさせると同時に、独自の海洋教育や映像教育、コンピュータ教育等を駆使し、国際社会で活躍すべく、単なる進学校にとどまらない21世紀の新しい教育の創造を目指している。
逗子海岸に臨む校地には、ヨット工作室や宿泊施設もある海洋教育センター、本格的映写機と音響システムを備えた徳間記念ホール、コンピュータ棟やセミナーハウス、研修センターなどの充実した各施設が並ぶ。自習室も完備している。教育環境を見事に整備し、高い塀を廃した開放的な発想から、世界にはばたく人材が育っていく。
逗子開成の授業には演習が多く取り入れられている。問題を解く力や表現する力を、すべての教科・科目で身につけ、バランスのとれた基礎学力を育成している。学年によって教科、レベルは異なるが、習熟度別授業を実施。補習だけでなく、通常授業の効果をさらに上げる「特習」もある。中3から選抜クラスが新設され、学年ごとに入れ替えがある。高2からは文系・理系にコース分けをする。土曜日には各種講座や行事を実施するが、教師、保護者、生徒の好奇心がぶつかり合う土曜講座は進学・世界・体験・達成・地域の5分野100講座以上とバラエティ豊か。
中1の時にヨットを製作するのは有名で、中3までの全員が逗子湾で帆走実習を行う。海洋教育と並び映像教育をも柱とする同校では、年5回映画鑑賞会が行われており、学校にいながらにして名作を鑑賞できる。中3では全員がニュージーランドに。高2の研究旅行はマレーシア・ベトナム・韓国・沖縄・オーストラリアのコース選択制で実施。中2~高2の希望者にはフィリピンセブ島の英語集中研修、1週間のエンパワーメントプログラムのアメリカ研修、3ヶ月間の短期交換留学、1年間の海外長期留学がある。また、中1・中2では、校内における異文化英語プログラムなどがあり、語学以外に様々な体験ができる。奉仕活動にも熱心。