シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

逗子開成中学校

2022年07月掲載

逗子開成中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.近年のトレンドワードを取り入れた問題

インタビュー1/3

まずは、この問題の出題意図について教えていただけますでしょうか?

内海先生 近年のトレンドとして情報や人工知能が話題になっていますが、そういった情報をいかに駆使していくのかが人間に求められていくべきものではないか、といった問題意識を私自身がずっと持っていました。中学受験をする子ども達は、問題を見て自分の知識で答え導き出すのを得意としていると感じますが、これからは、分からないことや今答えがないものに対し、いかに答えを出していくかが大事となります。AIに全て頼っていくのではなく、いろいろな情報や条件を組み合わせ、全く新しい価値観やサービスを生み出していく人間に将来なってほしい、そういった子達が逗子開成に入学してほしいという気持ちで今回の問題を作問しました。

社会科/内海 飛洋先生

社会科/内海 飛洋先生

「気づき」が重要

鈴木先生 実はもっと資料は多かったんですね。実際のスーパーシティ構想はいろんなジャンルに分かれていて、AIを駆使してより良い公共サービスを提供したりするような形を作っていたものの、やはり小学6年生が解くにはあまりにも資料が多すぎるだろう、という事で教員の方で話をした結果、かなり絞ったものになりました。本校の過去問を研究してもらえれば、身近にあるものが題材になっていることに気づいてくれるだろう、であればその部分に絞れば自ずと子ども達は何らかの答えが導き出せるはずと考え、この作問となりました。

3つ書くのがこの部分の解答になりますが、1つはできる、2つも頑張ればできる、3つできたらすごいね、という感覚です。3つ必ず答えなさいではなくて、どういう気づきができますか?ということがポイントです。私は「気づき」という言葉を重視していまして、身の回りにあることをどれだけ気づけるか?人に対してどれだけ気づけるか?問題で提供されている資料からどれだけ気付けるか?という事を大事にしました。かなり教員同士で喧々諤々の議論をした結果、一番身近にあるものを駆使することにしたんですね。

たとえば、医療福祉だと高齢者の問題がありますし、自分が医療にかかる事もあります。将来的に自分が高齢者になった時のこともあるでしょう。また交通に関してですが、逗子開成は電車で通う生徒がほとんどですから、登下校中に気づく事はないかな?という視点で2つのテーマに絞り、3つ書かせる問題になりました。

内海先生 正答率は1つ答えられる生徒で30%程度、2つ答えられた生徒は25%程度、3つ答えられた生徒となると15%位です。1つだとこちらが想定していた答えを書いてくる子は多いのですが、2個目3個目となるとなかなか組み合わせが思いつかないようでした。2個目はなんとか書いたものの、3つ目は書けずに終わってしまったようなものも見受けられました。しかしこちらの狙いとしては、正しい答えを得るよりも、与えられた資料から自分なりに考えて答えを出してくれるかどうかが重要でした。難しかった問題でも、少しでも書いてくれる子ども達がいて、そういった子ども達に将来活躍して欲しいな、という気持ちはありました。

小問を減らし、論述を重視する傾向へ

鈴木先生 2つをうまく組み合わせて意味の通る文章にするという作業は相当難易度が高かったとは思います。
実は今年度から小問数を減らしています。今までは50問以上あったのですが、それを45~50問くらいとし、その分論述にかかる時間をちょっとでも増やそうということにしたため、目に見えて空白というのがぐっと減った印象です。我々からすると、一文で書かせるよりも箇条書きで書いた方が何かを書いてくれるのではないか?という期待がありました。しっかりと読み取って、一行二行で伝えられる力を我々としては見てみたいというところが大きな特徴かもしれません。

言いたいことを簡潔に言えたり、確信を突いて伝えたりするのも大切な事ですよね。意外とそれができない子が多いと感じます。

鈴木先生 ダラダラと書いて最終的に何が言いたいんだろうというのはよくあります。意欲は買うのですが、入試という場においてはそれだと評価も難しくなりますね。すごく端的に伝えるということの難しさも我々は見ているところです。
こちらが求める解答が書けたかどうかが重要で、組み合わせがうまくできなくても、こちらから読み取れる要素が多少あれば部分点はつきます。ゼロか満点ではない、ということです。

逗子開成中学校 校門

逗子開成中学校 校門

問題の意図を読み取れる能力があるかないかが成否のポイント

この問題の場合、2つを組み合わせて、ということがポイントですね。

鈴木先生 問題文の「組み合わせることによって」という所に架線を引いたり、太くしたりすることも検討はしました。しかし、定期試験ならまだしも入学試験ですので、そこまでしっかりと自分で意識して解いてほしいという事で、敢えてやりませんでした。

鈴木先生 なるべく資料に基づいた解答を導くような問題方式にしています。「自由に書いてください」というのが10年以上前はあったのですが、そうすると意外と書けないんです。我々としても「空白をなくしたい」という思いがありましたので、なるべくこちらの意図を理解する形での解答を期待し、このように絞った出題がここ数年行われていると思って頂ければと思います。

小学生でも身近に体験できる分野からの出題

膨大なジャンルからこの医療福祉と物流交通に絞られたと問題を見て思ったのですが、どうしてここに絞られたのでしょうか?

鈴木先生 小学6年生が生活する中で感じるところ、経験した事があるところで2つの分野に絞りました。たとえば、ピザの宅配とかも使えばそれが物流になります。駅は通学に利用しますし、病気なら病院にも行きます。高齢者問題とかも身近な話題にのぼりますので、テレビ見たり身近で体験したりすることがこの2つの分野ならあるだろう、というところから選びました。

内海先生 医療福祉や物流・交通は、小学生の身近な所やニュースでよく話題になっていると思います。昨今では、医療福祉だと、新型コロナウィルスの話題で病院のベッドが足りないとか、どこに搬送したらいいのかとか、救急車の搬送時間がどんどん伸びているという話もあります。独居老人の話もあります。

物流交通だと、目の見えない方が駅のホームで危険な目に遭われたりとか、通学路に車が突っ込んできて事故になってしまったりといったニュースは日頃溢れています。そういった日頃の課題にある程度アンテナを張って、単純に知識だけを持つのではなく、身近な所から組み合わせでこういうのがあったらいいんじゃないか?といった新しいサービスを考えてくれたら、こちらの狙いとしては良かったのではないかと思います。

鈴木先生 普通に生活している中で、昨今身近に起きている様々な諸問題を考える方が、小学校6年生での目で見た時に読んでくれますし、親しみを持って答えてくれますし、本校に入学したらこういう問題や話題を授業でもやってくれるのかな?と期待を持ってもらえるようにしたいと思っています。

よく受験生の親御さんには「時事問題は勉強した方がいいですか?」と質問されるのですが、「お父さん、お母さんと食事の時に話す程度でいいです。そんな細かい知識はいりませんし必要としていませんから、是非身近なところで話をしながら、笑いながら話をしてください」と言っています。時事問題に関しては、最新の動向を頭に入れなければならないというのはないです。問題をよく読んで、今まで勉強した成果を素直に出せるようなものだけです。我々としては、70%の正答率をみんなが取れるような問題を作るようにイメージしています。

逗子開成中学校 グラウンド

逗子開成中学校 グラウンド

インタビュー1/3

逗子開成中学校
逗子開成中学校1903(明治36)年創立の神奈川県下最古参の男子私立中学校。東京の開成中の分校「第二開成中」として設立されたが、ほどなく独立。中学募集は一時中断したが、86(昭和61)年再開。近年の目覚ましい学校改革の試みは、バランスのとれた学校像の確立を目指すものとして注目されている。2003年(平成15)年に創立100周年を迎えた。
建学の精神『開物成務』にのっとり、「真理を探究し、目標を定め、責務を果たす」ことのできる人材の育成が教育の目標。レベルの高い学問を修めさせると同時に、独自の海洋教育や映像教育、コンピュータ教育等を駆使し、国際社会で活躍すべく、単なる進学校にとどまらない21世紀の新しい教育の創造を目指している。
逗子海岸に臨む校地には、ヨット工作室や宿泊施設もある海洋教育センター、本格的映写機と音響システムを備えた徳間記念ホール、コンピュータ棟やセミナーハウス、研修センターなどの充実した各施設が並ぶ。自習室も完備している。教育環境を見事に整備し、高い塀を廃した開放的な発想から、世界にはばたく人材が育っていく。
逗子開成の授業には演習が多く取り入れられている。問題を解く力や表現する力を、すべての教科・科目で身につけ、バランスのとれた基礎学力を育成している。学年によって教科、レベルは異なるが、習熟度別授業を実施。補習だけでなく、通常授業の効果をさらに上げる「特習」もある。中3から選抜クラスが新設され、学年ごとに入れ替えがある。高2からは文系・理系にコース分けをする。土曜日には各種講座や行事を実施するが、教師、保護者、生徒の好奇心がぶつかり合う土曜講座は進学・世界・体験・達成・地域の5分野100講座以上とバラエティ豊か。
中1の時にヨットを製作するのは有名で、中3までの全員が逗子湾で帆走実習を行う。海洋教育と並び映像教育をも柱とする同校では、年5回映画鑑賞会が行われており、学校にいながらにして名作を鑑賞できる。中3では全員がニュージーランドに。高2の研究旅行はマレーシア・ベトナム・韓国・沖縄・オーストラリアのコース選択制で実施。中2~高2の希望者にはフィリピンセブ島の英語集中研修、1週間のエンパワーメントプログラムのアメリカ研修、3ヶ月間の短期交換留学、1年間の海外長期留学がある。また、中1・中2では、校内における異文化英語プログラムなどがあり、語学以外に様々な体験ができる。奉仕活動にも熱心。