シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院女子中等科

2022年07月掲載

学習院女子中等科の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.作図などで手を動かすことも重視

インタビュー2/3

中1の履修範囲に関わるところを意識して出題

堀江先生 本校の入試問題は、例年B4サイズ3枚に6題程度を出題しています。出題内容は、計算問題に始まり、速さ、割合・比、図形(平面・立体)のほか、数の性質、規則性、場合の数など、複数の要素を絡めながら全般的に出題しています。

堀江先生 特に中1で学習する内容に関わるところは意識して出しています。方程式を習うと、速さや割合、比の問題は方程式を使って解くようになります。小学校で習った比例と反比例も、平面図形と空間図形も、中1でさらに深く学習します。
中学入試は、中学で困らない力が身についているかどうかを測ることが大原則です。中1で学習するところの土台ができていれば、中学の数学の学びも比較的スムーズにスタートできるでしょう。

学習院女子中・高等科 物理教室

学習院女子中・高等科 物理教室

自分の考えを伝えようとする答案が増えた

吉村先生 本校の問題はどれも途中の式や考え方を書かせます。受験生が今まで勉強してきたことを発揮してほしいと思います。

堀江先生 答えが間違っていても、考え方が正しければそれに応じた部分点をあげています。逆に、正解しても考え方に間違いがあったり、考え方が読み取れなかったりした場合は点数をあげられません。
正解した、間違えたというだけでなく、普段から答えを導くプロセスも大切にして、自分の考え方、解き方が他者に伝わるように書く練習をしておきましょう。
うれしいことに、最近はプロセスを書ける受験生が増えてきました。きちんとした文章でなくても、ここは何を求めているのか一言添えたり、図をかいたりして、何とかして採点者に伝えようとする姿勢が見られるようになっています。

数学科/吉村 崇弘先生

数学科/吉村 崇弘先生

コンパスや三角定規を使う作図問題に慣れよう

山本先生 本校の入試問題の特色の1つが、図形問題の作図です。手を動かす、自分で試してみるということを億劫がらずにやってほしいと思っています。普段からコンパスや三角定規を使った作業に慣れておきましょう。
時間の制約がある入試で丁寧に作図するのは難しいかもしれませんが、丁寧に作図すると見直しがしやすくなります。また、情報が整理されるので、次の問いを解く際に考え方が組み立てやすいというメリットがあります。
2022年度B入試の平面図形の問題は、(1)で円盤が通過した部分を作図して斜線で示し、(2)でこの部分の面積を求めてもらいました。斜線を引くべきところを引いているか、引いてはいけないところ(円盤が通らない部分)は斜線が止まっているかどうかを見ました。正誤に関わるところは丁寧に、そうでないところは厳密でなくても構いません。そうしたメリハリをつけられる受験生は作図をかき慣れているなと感じます。

学習院女子中・高等科 校内

学習院女子中・高等科 校内

コンパスがぶれないよう工夫した受験生も

試験中の受験生の様子を見て、コンパスや三角定規をうまく使えていますか。

吉村先生 概ね正しく使えています。対策をしているなと思います。

山本先生 作図問題の多くは問題用紙の3枚目です。ある受験生は、1枚目と2枚目の問題用紙を折って、それを作図問題のある3枚目の下敷きにしてコンパスを使っていました。そうすることで紙がすべりにくくなり、コンパスもぶれずに回して作図できます。自分なりの工夫をして準備してきたのだと感心しました。
ここではこういう円をかきたかった、こういう直線をひきたかったということを読み取ることができれば、作図ができていると判断します。作業上の多少のずれは許容しています。

動画の内容を追体験して自分のものにしよう

山本先生 今は「見る」ということがとても多くなっています。ネットの動画はわかりやすいものがたくさんありますが、それを自分でやってみると、さらに自分のものにできると思います。
実際に自分で図をかくことで図形の感覚を養ってほしいですね。動画の内容を自分でやってみて追体験すると、「本当にそうなるんだ」と納得できるでしょうし、「ここはどうなの?」という疑問も出てくるでしょう。動画を見るだけでなく、活用することで学びが発展してくれるといいなと思います。

堀江先生 中学の授業では、作図や立体模型を作るなど作業を多く取り入れることで、具体的なイメージから抽象的な概念を構築できるようにしていきます。

学習院女子中・高等科 生徒ホール

学習院女子中・高等科 生徒ホール

応用問題は身につけたことを使えば対応できる

吉村先生 後半の応用問題は初めて見るような問題であっても、勉強してきたことを活用すれば解けるようにしているつもりです。
2022年度B入試の時計の問題は、(1)で長針と短針のつくる角の大きさから時刻を求め、(2)は(1)をヒントに、短針と秒針のつくる角の大きさを求める応用問題です。秒針を扱う問題は初めて見るかもしれませんが、長針や短針と同じように考えれば全く手が出ない問題ではないと思います。

インタビュー2/3

学習院女子中等科
学習院女子中等科1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立130年を越える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。
重要文化財でもある鉄製の正門を入ると、四季折々の自然が望める6万6千m2の広大な敷地に女子中・高等科と女子大学の校舎がある。理科・芸術科・家庭科は科目ごとの専用教室があり、コンピュータ室や、2つの体育館、温水プール、テニスコートなど施設も充実。沼津游泳場など校外施設もある。官立から普通の私立として再発足してから70年を越える歴史をもつ。「広い視野、たくましい創造力、豊かな感受性」を教育目標とし、世界的視野に立って、広く国際社会に貢献できる積極的な女性の育成をめざす。同窓会には皇族妃殿下が名を連ねるが、校内は気取らず明るく活発な雰囲気。
実験や実習を多く取り入れた授業を展開。特に創造性に富む表現力、情報を的確に伝える論理的構成力を育てるため、国語の作文、理科や社会のレポート作成などに力を入れる。中1の国語(古文・表現)、中1の数学(数量)・中2の数学(図形)・高1の数学Ⅰ、中1の技術家庭では1クラスを2分割。中1・中2の保健体育(水泳)、中2の技術家庭、中3の社会(公民)では1クラスに2人の教員が入るT.T.の形をとっている。また、英語はすべての学年で少人数制の授業。帰国生を除き、中1・2では均等分割をして基礎力を強化し、中3からは習熟度別授業を行う。高等科ではドイツ語・フランス語も履修できる。高2で文系・理系のコース制を導入。高3では卒業レポートを作成。60%程度が学習院大学・学習院女子大学へ推薦入学するが、最近は国公立大や早慶上智大への合格者も伸びている。海外の大学への進学者も増えている。
校長を科長、ホームルーム担任を主管と呼び、あいさつは、常に「ごきげんよう」である。「ことば」の尊重とともに芸術教育も盛ん。道徳の時間には、正式な作法教育も取り入れている。林間・臨海学校、運動会、文化祭、学芸会、スキー教室など行事も多い。クラブは文化部20、運動部11、同好会3と活発。特にテニス、ブロックフレーテ・アンサンブルは好成績を収める。運動部1と文化部1、または文化部2の合計2つまで入部可。オーストラリアの姉妹校メソディスト・レディーズ・カレッジで英語を学ぶ研修旅行や中3・高2希望者対象のイギリス・イートン校でのサマースクールがある。