シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

渋谷教育学園渋谷中学校

2022年06月掲載

渋谷教育学園渋谷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.生徒の良質な質問に答える時間を大切にしている

インタビュー2/3

授業でも身近なものを使って仕組みを説明する

授業について工夫されていることはありますか。

小野先生 僕はそうでもないのですが、本校の理科にはすごくユニークな教員が多いです。教員それぞれに特徴があって、同じ科目、同じ単元でもまったく違うアプローチをしているのではないかと思います。授業を行う上で、もちろん軸はありますが、どう進めるかは個々により異なります。

先生が授業で心がけていることを教えてください。

小野先生 やはり身近なものに落とし込むということですね。できるだけ身近なものを使って、子どもたちが理解しやすい授業を心がけています。身近なもので説明すると、生徒が後で考える際に、それを眺めながら考えることもできると思うので…。

例えば、高校生の授業で「SP3 混成軌道」の仕組みを説明する時は、水風船を使います。水風船を3つぶらさげて、こすって静電気を起こすと、パーっと足が開いて正四面体の形が見えてくるんですね。それを見せるとわかりやすいのです。

渋谷教育学園渋谷中学校 教室

渋谷教育学園渋谷中学校 教室

わかりやすく説明するために「たとえ話」を用いることも多い

小野先生 たとえを使って説明することも多いです。生徒から「それは的外れじゃないですか」と言われることもあるのですが…(笑)。「でも、そんな感じなんだよ」と言って、理解を求めています(笑)。

例えば「単体」を説明する時には「『ハンバーグを単品でください』『単価はいくらですか』というように、『単』という字は『1つ』という意味で使うよね。化学でも『単』という字は同じ意味なんだ」という感じで説明しています。

高校生の授業でも、高校生にも難しい話をする時には、ついつい余計な話(たとえ話)をしてしまいます。僕は食べ物が好きなので、「また、食べ物の話!?」と言われたりもしますが…。それは気にしていません。

生徒さんの反応は?

小野先生 水風船の時は「おおおーっ」と言って喜んでくれました。でも、全員が喜んでくれるわけではありません。大学入試に関係がないので、そういう話に反応してくれない生徒もいますが、他のことを理解する上でも知っておいたほうがいい知識として、挟むようにしています。

渋谷教育学園渋谷中学校 実験室

渋谷教育学園渋谷中学校 実験室

生徒の良質な質問により授業が深まる

小野先生 最近は授業中の質問がすごく多くて驚いています。説明していると、「先生、先生、それってー」という感じで、生徒が声を発するのです。その指摘が結構おもしろいところを突いて来るので感心しています。

先生の話を聞いていて、ひらめくのでしょうか。

小野先生 そうなんでしょうね。こちらが一瞬困ってしまうような、良質な質問が多いです。疑問を抱くことは大切なので、その時間を尊重しています。

生徒さん同士のやりとりなども見られますか。

小野先生 そうですね。高校生はよく話しています。二人で話をしているところに、私も入ることがあります。他の生徒も巻き込んで盛り上がります。

中学生はよく話すけれども、高校生になると黙ってしまう、という話をよく聞きますが、そうではないのですね。

小野先生 そうですね。本校では高校生もわりと話します。高3もそういう感じで質問してきます。すごくよく考えているなと感心させられることもあります。息を飲むような、実に良いところに気づく質問をされると、とても楽しい授業になります。しっかり話を聞いて考えてくれているな、という実感もわきます。

中1は毎回のように実験があり、考察する

実験はどのような形で行っていますか。

小野先生 生徒には1つの実験に対して、少なくとも1つは疑問を持ってもらい、1. 疑問点について考える。2. それを調べる。3. 結論(どういうことがわかったか)を書く、というステップで、答えも自分で考えてもらうという感じで進めています。

中1が一番実験をやっているかもしれません。中1は毎回のように実験をしますが、その答えが難しいようです。こうあるべき、というものがあって、実験結果を修正しようとする生徒もいます(笑)。予想もしない結果が出てきた時が逆にチャンスで、それはなんでだろうね。なぜそういう結果が出てきたんだろうね、ということを考えてほしいので、「それはしないで」と言っています。「結果は違っていいんだよ。大切なのはそれがどうして違ってしまったのかということ。そこを考えて」という話をしています。

渋谷教育学園渋谷中学校 実験室

渋谷教育学園渋谷中学校 実験室

インタビュー2/3

渋谷教育学園渋谷中学校
渋谷教育学園渋谷中学校地上9階・地下1階の校舎は、地域との調和と快適な環境をコンセプトとして設計されており、都市工学の先端技術が駆使されています。これからの新世代にふさわしい、充実した学校生活を提供されています。教育目標は、21世紀の国際社会で活躍できる人間を育成するため「自調自考」の力を伸ばすことを根幹に、国際人としての資質を養う、高い倫理感を育てる、という3つです。
学習面における「自調自考」を達成するために、シラバス(学習設計図)が活用されています。シラバスは、教科ごとに1年間で学習する内容と計画が細かく書かれたもので、家づくりにたとえるならば設計図にあたるものです。シラバスをもとに、生徒自身が「いま何を学んでいるのか」「いま学んでいることは何につながるのか」ということを常に確認し、自ら目標を設定することで学習効果が上がるように指導されます。「何を学び、学んでいることは何につながるのか、全体のどのあたりを勉強しているのか」を確認しながら、授業に目標を持ち積極的に参加して、毎日の学習に取り組むことができます。外国人教師による少人数英語教育が実践され、さらに、中学3年生から、希望者は英語以外にもうひとつの言語を学ぶチャンスがあります。ネイティブの教師と一緒に自分の世界を広げてみましょう。開講講座は、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語です。海外研修は希望者を対象に、中学のオーストラリア研修、高校のアメリカ・イギリス・シンガポール・ベトナム研修があります。研修の目的は若者交流です。異文化理解や語学研修など、さまざまな経験を通して交流の輪が広がります。海外からの帰国生も多数在籍しており、留学生も受け入れています。
自分を律する心を養い、一人ひとりの人生をより豊かにし、人のために役に立ちたいと思う人間を育むため、生徒の発達段階に合わせたテーマで、6年間で30回にわたる「学園長講話」が行われています。