出題校にインタビュー!
渋谷教育学園渋谷中学校
2022年06月掲載
渋谷教育学園渋谷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.文章を読み取り、理解を深めながら仕組みを学んでいく問題
インタビュー1/3
問題作成の起点は絵の具屋見学
出題意図からお話いただけますか。
小野先生 「温度が上がると体積が増える」「液体が気体になった時に、より膨張する」という2点を受験生に問いたいと思い、出題しました。その辺りを広く理解していてほしいという気持ちで出題しましたが、気体になるところまで書いた受験生は少なかったです。単純に「温度が上がると体積が増える」そこまでの解答がほとんどでしたが、それでも部分点という形で点数はあげています。
プリンターを題材に選んだ理由を教えてください。
小野先生 受験生の「身近なところ」を大切にしたいと思っているからです。コロナ禍でオンライン授業を経験したことにより、小学生もパソコンやプリンターを使う機会が増えていると思ったので、子どもたちにも身近なものとして、プリンターを題材に出題させてもらいました。
私はモノクロ印刷を選択することが多いので、黒のインクを消耗します。そういう人が多いので、黒のインクは容量が大きいのだと思っていました。
小野先生 私は理科部の顧問をしています。生徒が「合宿をしたい」と言うので、「実験をするなら学校の理科室のほうが設備は整っているから、工場見学をしよう」と言って、コロナ前はよく行きました。その1つが、この問題のタネになりました。埼玉にある絵の具屋さんです。そこで「顔料」と「染料」の勉強をさせてもらいました。より理解が深まり、これはおもしろいな、と興味を持ちました。
水彩絵の具は水に溶けると思いがちですが、顔料が散りばめられている状態で、それがおもしろく、何かの題材にできないかなと思っていました。
理科/小野先生
絵の具を題材に問題を作りたかった
入試問題にしてみたいと思ったのはいつ頃ですか。
小野先生 5、6年前あたりです。何度か問題を作成しましたが採用されず。ようやく今回、日の目を見ました(笑)。
それはなぜですか。
小野先生 最初はプリンターのインクではなく、単純に絵の具の話でした。薬師寺の朱の門などを取り上げて、ベンガラなどいろいろな色素を切り口に問題を展開していこうとしたのですが、振り返るとあまり身近ではなかったのかもしれません。
今回は会話の中で仕組みを学べる出題の仕方でした。それが子どもたちにとってわかりやすかったのではないかと思いました。
小野先生 問題も、他にもいくつか考えていました。例えば、年賀状の表面にクジ番号があります。そこに使われているインクはきっと顔料だろうと思い、確認を取りたくて問い合わせたのですが、教えてもらえませんでした。企業秘密のようです。このように明確な答えを用意できなかったことから出題に至らなかった問題もあります。
インク関連の問題は比較的よくできていた
身近なものを起点に問題を作ると、分野(物化生地)を融合した問題になると思います。分野の融合については普段から意識していますか。
小野先生 他科目との連携は普段から意識しています。そんなこととつながるのか、ということがわかると、生徒の反応がいいからです。
先日も高校生の化学の授業で「共有結合」を扱い、「不対電子」「非共有電子対」という言葉が出てきた時に、不対電子の「不」という字と、非共有電子対の「非」はなぜ違うのか、という話をしたら、「これ、やりました!」と、すごく生徒の反応がよかったんですよね。2コマあたり前の古典の授業で「不」と「非」を学んだようです。そういうつながりが明るみになると、直接のつながりではないのですが、過去に勉強したことがここでも活かせる、ということにすごく感動してくれます。ですから、授業で教えるべきことだけではなくて、視野が広がるような話を絡めていきたいと考えています。
冒頭で、「液体が気体になった時に、より膨張する」というところまで書けていた解答は少なかったというお話でしたが、正答率はいかがでしたか。
小野先生 広い視野で見れば、正答率はかなり高いほうでした。
渋谷教育学園渋谷中学校 校舎内
大問数を減らし、記述問題を増やしている
入試問題はどのように作成していますか。
小野先生 入試問題は1年くらいかけて作るものなので、教員が何人かのグループになって、お互いにアドバイスをしながら作っています。言い回しについても、複数でチェックします。
過去の入試問題にもカラスやジャムなど、子どもたちに身近な素材を取り上げています。それは理科全体で意識されていることなのでしょうか。
小野先生 身近な現象を題材にする、ということについては意識しています。そのほうが子どもたちが問題に入ってきやすいと思うからです。ジャム作りも、おもしろいんじゃないかな、と意見があり出題することになりました。
構成の意図について教えてください。
小野先生 少し前までは物化生地、4つの分野においてすべて出題することを意識していたので、大問を3、4題、出していたのですが、新しい現象を扱うと説明を入れなければいけません。文章が長くなってしまうので、大問の数を減らしました。
「文章はいいから、まず問題を見なさい」「問題から該当しそうな文章を探って、答えを見つけ出していきなさい」といった指導は、入試なので、解くことを優先すればそれもアリなのかもしれませんが、作成する側としては悲しい気持ちになります。そこで時間をしっかりとって、文章をしっかり読んでもらい、そこから汲み取って解答を導き出してもらえるような問題を作りましょう、ということで現在(大問2、3題程度の構成)に至っています。1つの問題に対して集中して精査できるようになり、設問だけでなく、文章をしっかり読み取って解答してもらう記述の問題を少し増やしています。
大問数は減っても4分野のバランスは意識
大問の数が減っても、4分野を網羅したいという意識はありますか。
小野先生 できるだけ全分野から出題したいとは思っています。ですからテーマを決めたら、物化生地のどの辺に位置する内容なのか、ということを書き出して、問題のボリュームを見ながら組み合わせを考えています。明確に4分野に分けているわけではありませんが、チャートのようなものを描きながら、そのバランスを考えて入試問題を作成しています。
身近な題材で入試問題を作成する際に、小学校での履修範囲との兼ね合いが難しいという話をよく耳にしますが、そのあたりも意識されていますか。
小野先生 小学校の教科書を確認して、習っていない事柄については説明を入れるようにしています。例えば「気圧」のようによく知られている事柄であっても、教科書に掲載されていなければ、出題する際には説明を入れています。今年の問題にも「圧力」を扱った問題があったと思うのですが、実はもう一段階難しい問題も用意していました。出題しなかったのは、「気圧」を履修していない小学生には難しいのではないか、と考えたからです。小学校での履修範囲かどうか、というところは、今後もしっかりと見ていくつもりです。ただ、本校を受験する子どもたちは、学力が飛び抜けている子が多いので、採点をしてみると「心配していたけれど、結構わかっていたね」ということが多いです。
渋谷教育学園渋谷中学校 校舎内
記述問題は理解度が明確に出る
記述問題はどのような意図をもって作問をしていますか。
小野先生 問題が集まった時は全部が記述問題で、これは採点できないぞ、という状態です。その状態から、これは選択問題にしよう、と形式を変えていきます。
記述問題は、ある程度自由に書けるようにしています。とはいえ、完全に自由にすると解答があちこち行ってしまい採点が大変になるので、言葉を用意して、ある程度の範囲に収まるように作成しています。
確かに、記述問題は採点が大変ですよね。
小野先生 採点している間に許容範囲が変わって、何回かやり直しをしたことがあります。採点が進んでいくと、これも許容範囲ではないか、と、考えさせられる解答が出てきます。それを許容すると、「これまで×にしてきたこの表現も許容すべきでは?」という疑問が出てきます。そうなったら最初からやり直しです。
採点は1人で行うのですか。
小野先生 記述問題の採点は理科の教員が行います。選択問題は他教科の先生にお願いしています。どちらも複数名で行っています。
記述問題を出題する意味をどのようなところに感じていますか。
小野先生 問題にもよりますが、本当にわかっている子と、そうではない子が明確にわかります。理解度は、記号を選択する問題では測れないところだと思います。選択問題であれば、適当に「イ」と答えて、「合ってた、ラッキー!」という子がいるのではないかと思いますが、記述問題ではそうはいきません。理解している子と、理解していない子がしっかり分かれる問題を作ることができると嬉しいです。たまに作問者の予想を超える名解答をしてくる子がいます。「これは受け取り方によっては◯だよね」というレアな解答もたまにあります。作問する側としては、それがおもしろいです。
インタビュー1/3
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