出題校にインタビュー!
山脇学園中学校
2022年06月掲載
山脇学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.入試問題の素材選びは入念に
インタビュー2/3
入試問題全体の構成や、学校としてお考えのことなどをお聞かせいただけますか。
小泉先生 出題としては小説1題・評論1題に加えて語句の問題があります。そこに意見論述を足すことで、受験生の自由な発想や論述力を見たいと考えています。評論や小説は、そこに書かれていることを読み取っていく形ですが、意見の論述は「自分の言葉で書く」ということになります。そうすると、既成作品だと分量も限られていますし、制約もかなりありますので、その中で「短い文章を書き起こす」という作業ぐらいから始めるようにしています。
文章題としては、記述と選択肢のバランスを考えています。複数名で作っているので、それらを組み合わせ、なるべく記述だけが重くならないように工夫しています。選択肢に関しても検討会で意見を出し合っています。作っている時は「これが一番だ」と思っていますが、検討会を重ねる上で「こういう視点が足りなかった」といった気付きがあります。
常により良い問題にしていきたいと思っていますし、その先にはこの学校で学びたいと思ってくれている受験生がいますので、その子たちに対し、かけがえのない読書体験を提供していきたいです。本当に短い時間の中で出会いがあり、入学してきてからも、入試問題の文章を覚えている子がいます。そういったことが、この上ない喜びだと感じています。ですから、素材選びからかなり時間を取ってやっています。
評論や小説は「こういうテーマにしよう」と最初からテーマや方針があるわけでなく、持ち寄ってから決まるものなんですね。
小泉先生 発行年度もあまり古いものは入れないようにはしています。似通うときもあるのですが、それを集約してなるべく重ならないよう切り取り方を工夫したり、文量を調節したりしています。尻切れトンボになってもいけないし、中略がたくさんあってもやっぱり読む側がわからないと思いますので、いろんなことを考えながら選んでいます。選ぶのも大変ですし、書き起こすのも大変です。限られた中で結論までもっていかなければならないので本当に身を削る思いです。
国語科主任/小泉 智子先生
きちんとした日本語が使われている文章を選定
素材文を選ぶときに、これは良いと思う基準はありますか。
砂口先生 それはケースバイケースですね。ただ評論文で言えば、日本語として格調高いというか、きちんとした日本語を使っている文章を使いたいなというのがあります。それが中学入試の国語の問題として、最低限譲れないところです。
中学入試の受験生や小学生にも読めるような易しめの文章だと、変に崩している文章も少なくはないので、そのあたりの見極めが重要になってくるかなと思います。
小説については、決められた分量の中で、ある程度まとまったストーリーの展開があって、心情の動きがあって、そんなに中略をしなくて済む、というものを探すのはとても難しいです。そのあたりを見極めて、「これは!」というものに出会ったときはなんとも嬉しいものがあります。小説は選ぶのが難しいです。
今回の2番の問題は、まさに「これは」って感じの存在だったということでしょうか。この文章は、多様さが感じられる素材ですし、心情の起伏もかなり現れるので、多分子どもたちも読み入る感覚があったのではないかと想像します。
砂口先生 これは障害を持った女性とその恋人との関係っていうのが軸になっているのですが、障害というとデリケートなテーマでもあるので、これまであまり出題してきませんでした。ただ我々としては、中学受験といえば多様な読書体験の場であって欲しいということで、できるだけ新しいテーマも含めて、ちょっと果敢にチャレンジした素材文を出していきたいと思ったものです。
検討会のときには、記述問題をどうするかなど、みんなで悩んだ問題ではあるのですが、結果的には学校としてはチャレンジした問題になったのではないかと思います。
山脇学園中学校 イングリッシュアイランド
「知の技法」で自ら考える力と発想力を育む
ここまでお話をお聞きしていて、この入試問題に学校のカリキュラムポリシーが表れていると感じました。そうしたことも踏まえて授業の特徴などを教えていただけますか。
小泉先生 特徴的な授業というと、「知の技法」です。これは中学1年生と2年生で取り扱っているのですが、多岐にわたるテーマや文章・本を読んで自分の意見を述べるといったことをしています。今はiPadを持たせているので、各自の意見を瞬時に共有でき、それを読んで自分はどう思ったか、様々な視点・捉え方を養うとともに、どう伝えるか、といった部分を情報共有しています。これが中学3年生での探究基礎に繋がっていきます。今年の中学1年生からは「知の技法」をセクションの枠を取り払ってやっています。
砂口先生 基本的には、教員がセレクトしたさまざまな文章・絵画などを通じて読み取りし、それに対しての意見の出し合い、共有、話し合い、プレゼンテーションをするといった形で展開しています。ですから教材はオリジナルです。
鎗田先生 今までの「知の技法」も全部オリジナル教材でしたが、以前は答えのない問いに対して答えを出すようなところが中心でした。しかし、今年からは「総合知」ということで、国語だけの取り組みではなくて6年間を見通した取り組みとして統合再編しました。役割としては、発表する・議論する・自分の意見を書くというだけでなく、グループワークを充実させていこうとなり、今は教材を一から作り直ししているところです。
砂口先生 こういう活動で毎回難しいなと思うのは、「システムとして作っていく部分」と「目の前にいる生徒たちの顔を見て作っていく部分」との両方を意識していないと、システムとして硬直する形になってしまいますので、絶えず見直していく必要があります。そのためには、探究的な取り組みの中に位置づけ、「知の技法」でやっていくことを全体の中で検証しよう、と学校として取り組んでいます。国語は国語の時間としてあるんですが、それにプラスして週1回程度「書道」と「知の技法」を交互に展開しています。
なんとなく教科の中で完結するっていう教育が限界にきている感じがしているので、今年度からは、今まで以上に教科連携のあり方に関する様々なシステムを立ち上げて、教科連携を進めていくのが学校方針となっています。
「知の技法」は、新しい知や技を身に付けるようなプログラムですが、あえて国語というネーミングを使わず、言語技術を身に付ける、論理的に対話する、考えを表現するために何が必要か、という点にスポットを当てた形で授業を進めるもので、生徒にもそういう意識を持って「知の技法」に取り組んでもらっています。
研究していく中でも使えるような、汎用性が高いネーミングですね。
砂口先生 そうですね。言語を使ったプレゼンテーションの力をこの時間内で養って、探究的な活動に繋げていきたいと考えています。
中学教頭/鎗田 謙一先生
iPadを活用した授業
通常の授業においては各先生にやり方は任されているのですか。
砂口先生 今は生徒全員がiPadを持っているため、そのiPadを使った共有の仕方や、生徒に対する投げかけをどうするかについては、科目ごとに統一的なやり方を持って臨んでいます。「最終的にここまでいけばいいですね」というところは共有し、あとは生徒の顔を見ながらやっていく部分が必要になると思いますので、担当の先生方が生徒に合わせて作っていくようにしています。
iPadを使うようになって授業のやり方とか教材の作り方が変わってきたっていうのはありますね。生徒の顔を見て「ここでこれを聞くべきだ」という時にダイレクトに反応できるなど、「生徒の顔を見た投げかけ」がやりやすくなりました。今までプリントを集めて、それを見てそれを集約してプリント作り直して、印刷してというタイムラグがなくなったのでそこはよいですね。生徒たちをもう一歩先のステージに上がらせるための答えがパッと出てくるので、そういう意味でiPadはシステムだけではなく、生徒の顔を見た投げかけをするのにすごく効果的なツールだと感じています。
小泉先生 意見の集約が素早くできるので、意外な意見を聞くことができるだけでなく、それをフィードバックできるのは良いですね。情報共有スピードが格段に速くなったと思います。
インタビュー2/3