シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

山脇学園中学校

2022年06月掲載

山脇学園中学校【国語】

2022年 山脇学園中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)

こうした欲望のあり方が、一方では人間社会を大きく発展させてきました。自然の根本的な原理やメカニズムを知りたいという欲望が科学技術の進歩をもたらし、人間同士が争うことなく平和に共存できる社会を作りたいという欲望が、民主的な政治や社会、国際的に対話する仕組みの構築につながってきました。

しかし他方では、現代人の大きくなった欲望が様々な問題を引き起こしました。豊かで快適な暮らしを追求することが、自然を破壊(かい)し資源を大量に消費する社会の仕組みを作り出しました。また、自らの民族や国家の利益を最優先することで生じる争いは後を絶ちません。

わたしたちは、どうしたら人間の欲望をコントロールして、自然や人々との共存を実現することができるのでしょうか。

(問)  線「わたしたちは、〜できるのでしょうか」とありますが、「人間の欲望」を「コントロール」するためには何が必要ですか。また、それによってどのようなことが実現できますか。例を挙げて自分の考えをまとめなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この山脇学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

自然について書かれたさまざまな本を読んだり、それについて多くの対話を重ねたりすることが必要だと思う。これによって、人間も自然の一部であるという感覚を持てるようになり、自然を大切にする街づくりや生き方を実現できる。

解説

傍線部には、「どうしたら人間の欲望をコントロールして、自然や人々との共存を実現することができるのでしょうか」と書かれています。自然と人間の共存、あるいは、人間と人間の共存をはばむ人間の欲望には、どのようなものがあるでしょうか。そしてその欲望をコントロールするには何が必要でしょうか。自分が持っている欲望にも目を向けて、例を挙げて説明してみましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

人間の欲望について書かれた文章を読み、条件に沿って自分の考えを記述する設問です。文章では、人間の欲望は生存に直接関係のないものごとにまでおよぶことが示されています。そして、無くても生きていけるけれども手に入れたい、という欲望が人間社会を発展させた一方、その欲望がさまざまな問題を引き起こしていると指摘して、文章は終わります。そのうえで、「人間の欲望」をコントロールするためには何が必要なのか、コントロールすることでどのようなことが実現できるのかを問いかけているのがこの設問です。世の中の状況を反映したような、子どもにとっても大人にとっても必要な問いではないかと考えます。

人間の欲望をコントロールする、という視点は、SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標のうちのいくつかとも関連しています。目標14「海の豊かさを守ろう」や目標15「陸の豊かさも守ろう」だけでなく、さまざまなつながりを考えることができそうです。こうした世界的な目標を達成するためにも、欠かせない視点を提示している設問でもあるといえます。

本問は、「例を挙げて」自分の考えをまとめることを求めています。挙げられる「例」は、さまざまなものが考えられます。答えがひとつに定まらないからこそ、取り組んだ後にも考え続けたり、考えた者どうしで対話をしたりして、さらに考えを深めていける設問です。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。