シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

神奈川学園中学校

2022年05月掲載

神奈川学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.社会科の学習を通して判断力や、社会を認識する力を磨こう

インタビュー3/3

テーマに関連づけながら今、世界で起きていることを考える

木村先生 授業では、生徒と一緒に考えることができるテーマを持たせられるか、というところを意識しています。2021年は本当にいろいろなことがありました。年明けからミャンマーが大変なことになり、8月にアフガニスタンが米軍撤退に伴ってタリバンが復活し、ウクライナの問題が起きたので、「2021年は国際的な環境を見ると激動の年なんだよ」と言いながら、ミャンマーとアフガニスタンは必死に教材を作り、授業で問いかけました。ウクライナ問題が起きた時には、ウクライナ問題を見る視点が備わっている生徒が結構いたので、教材に反映しませんでした。学年末試験が迫っている時期で、授業が早く終わったので質問の時間を作ると、テスト範囲内の質問にとどまらず、「ウクライナとロシアはどういう関係にあったのか」などという、テストとは関係のない質問を投げかけられました。

テーマに関連があるからといって、新しい知識を大量に入れるよりも、授業の端々で、「ニュースを見てどういうところに問題点があると思った?」などと聞き、問題意識を生徒の中から引き出しながら、視点を育てていくようなやり方でもいいのかなと思っています。ウクライナ問題では、既存の授業で使った教材をもとに、生徒たちがスライドを作って発表する、ということをしました。

神奈川学園中学校 カフェテリア

神奈川学園中学校 カフェテリア

4年間かけて社会が好きになってくれれば嬉しい

生徒さんは社会科が好きという印象ですか。

木村先生 中学1年生で授業を引っ張ってくれるのは、社会科がすごく好きな生徒たちです。入試もそれを生かして入ってきているので、積極性を持っている子、こちらが知らない知識を持っている子もいます。ただ、必ずしもそういう子ばかりではありません。高校1年生までは必修なので、私たち教員は4年間で1つのカリキュラムをやり切るという意識で授業に取り組んでいます。中には6年間、持ち上がる教員もいるので、生徒たちがどのように変化したかを見ることもできます。ですから、4年間かけて社会が好きになってくれれば嬉しいですし、それでいいのかなと思っています。

小川先生 テストの点数は取れなくても、ノートをきれいに書く生徒がいたり、あることについては人前で堂々と話せる生徒がいたり。得意なことがそれぞれあるので、それを生かして4年間でものの見方や考え方が培われていけばいいのかなという構えで取り組んでいます。

中1の世界史が社会科を好きになるきっかけ

小川先生 今、中1は世界を学ぶことから始めています。社会科の教員が「そもそも社会科がすごく好きで、入試でもそれを生かして入ってきている子が少ないのではないか」という前提で話し合い、世界を学ぶことから始めるようになったのです。ピラミッドの話からスタートすればみんなが知らないことから入れますし、始めてみると「みんなで一緒に学ぶよ」という雰囲気を作りやすかったので、今日に至っています。

女子に判断する力を

木村先生 高2から文理選択をします。受験科目に社会がない生徒は一切社会科を学ばなくなるので、高1の学期末試験を前に「私は高2から社会科を選択しないので、最後の試験、頑張ります」と宣言した子がいました。そういう子がいるととても嬉しいです。4年間やってきたことがどんな形でも今後に生きていけばいいと思います。

小川先生 社会科が担わなければいけないのは社会への興味関心を育てることです。中学段階では特に重要視して種まきをしています。

「自分の人生を自分らしく生きていく」という信念を持て

小川先生 フィールドワークの水俣の授業に、卒業生がたくさん参加してくれました。社会人が2人、大学4年生が1人、大学に入りたての子が2人、計5人です。水俣を社会科で学んだ子どもたちが、社会に出てどのように成長しているか、確認できるような面白い機会でした。卒業生と接して、私は「自分の人生を自分らしく生きていく」という信念を持てる人になってほしいと思いました。大変な時代なので紆余曲折はあると思いますが、「私の人生を生ききった」と言える判断力や、社会を認識する力を持ってもらいたいと思っています。

水俣の学習は公害から入るので、経済成長はどうなのか。近代とはなんなのか。そういう大局的な問題提起をします。それは現代社会を生きている人たちにとって身近ではありません。リアリティがないのです。ただ、そういう視点をもう1つ持つことで、社会の中で頑張っている自分を客観視できるようになります。例えば10年間、このままここで働いていけるだろうか。自分にとって幸せとは何だろうか。そんなことを映し出す鏡になるので、価値観を作っている時期にこういうことを学ぶことは重要だと思います。
今回、参加してくれた社会人は、しばらくの間、社長秘書をしていたようですが、自分の人生に疑問を感じて辞めたそうです。その子は水俣に移住して、アクセサリーデザイナーをやっています。オンラインで参加してくれました。特殊な例だと思いますが、自分の人生と社会とを照らし合わせながら選択ができる。そういう力が備わってくれると、社会科の学習が知識だけではない、生きていく力になるのではないかと思います。

神奈川学園中学校 校舎内

神奈川学園中学校 校舎内

都度、「なんで?」という疑問を挟んで学習しよう

小学生に社会科を学習する上でのアドバイスがあればお願いします。

小川先生 まずは学校で学習している社会科を大切にしてほしいと思います。ただ、ニュースで耳にする、今、起きていることと、授業で習っていることにはつながりがありますから、ぜひつなげてみてください。本校の入試も聞きたい知識を、本当に起きていることと結びつけて聞くということをしています。

木村先生 中学受験をしようと思ったら、たくさんの知識を習得しなければいけません。歴史の1つの事項を覚える時に、ただ覚えるのではなくて、「なんで?」という疑問を挟んでみましょう。本校の入試では、「なんで?」と聞きます。また、その設問で何を問われているのかを考える、反射神経につながるのではないかと思うからです。
理由に訴求した学習をしていると、全体像が見えてきます。そのほうが、結果的に得られるものが多いと思います。欲を言うと、知識として習得したものが知恵になってくれるといいと思います。

「人が人を育てる」「本物を伝える」がモットー

島先生 宗教のない学校では何をよりどころにしているか、何で成り立っているかと言うと、人と人です。本校では「人が人を育てる」ということと、「本物を伝える」ということ。その2つを大切にしています。社会科の教員は、今の社会のリアルを伝えてくれます。ただの知識ではなく、考え方を教えてくれます。考え続けるための土台を作ってくれます。理科の教員は、コロナ禍でもできるだけたくさんの実験をしようと、密にならないように工夫しながら生のものに触れる機会を作っていました。国語科の教員は調べ学習の発表をたくさん取り入れて、本物をできるだけ伝えていこうと頑張っていました。本校の教員は仲がいいので、いろいろなことをやる時に、一つの方向に向かいやすい傾向があります。教員が提示したものに、生徒は素直に反応し、自分なりの視点で吸収していきます。受験生や受験生の保護者の皆様には、生徒がプレゼンテーションをしている様子やグループ学習をしている様子、キラキラと授業に向かっている様子をぜひ見ていただきたいと思っています。説明会に足を運んでいただき、生で見ていただけると、生徒の反応がよくおわかりいただけると思います。

神奈川学園中学校 校舎

神奈川学園中学校 校舎

インタビュー3/3

神奈川学園中学校
神奈川学園中学校1914(大正3)年に、前身である横濱実科女学校が開校。建学の理念である「女子に自ら判断する力を与ふること」「女子に生活の力量を与ふること」を背景に「自立した生き方」を実現する教育をめざしています。
2000(平成12)年からスタートした「21世紀教育プラン」のもと、学力・人間力の向上を目標にさまざまな改革を実行。2008年からのセカンドステージでは、教育プランを深化するために週6日制、先取り学習を本格的に導入。改革の成果は年々表れ、早慶上智・MARCHなどへの進学実績が大躍進しています。2011年には高校募集を停止、改革はサードステージに入りました。サードステージでは学力の育成のほか、多様な地域から選択できる全員参加の海外研修など、行事改革も行いました。
5教科では、オリジナルテキストを使用。特進クラスを作らないことも特色。高2・高3では大幅な選択科目制となり、大学進学を強力にサポート。「理科実験100」「国内FW」「探究」など、興味深い取り組みもたくさんあります。「人と出会い、社会と出会う」という基本方針のもと、中学では2人担任制や入学直後のエンカウンター、プロジェクトアドベンチャーを実施。中3の海外研修ではホームステイや現地校の授業も受講。クラブでは、バトントワリング、そう曲が全国レベルで、コーラス部や新体操も活躍。