シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

神奈川学園中学校

2022年05月掲載

神奈川学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.小学生も政治に参加できる。身近なことに疑問を持とう。

インタビュー1/3

市長に声を届けることができる仕組みに着目

この問題の出題意図からお話いただけますか。

木村先生 選挙権年齢が引き下がったことに伴い、高校生の投票行動に注目が集まっています。いろいろな資料が届くなか、社会科としても主権者教育を行ったり、意欲喚起に取り組んだりしていますが、「18歳が選挙に行くか行かないか。そこにフォーカスするだけでいいのか」と感じていました。

「陳情」・「請願」というのは中学受験ではあまり出題されないテーマだと思いますが、選挙だけが政治参加ではない。政策立案の場に多様な声を届ける方法がある。小学生でも自分たちのリクエストを行政に届けることができるということを知ってほしいと思い、このテーマを選びました。
「議員さんと差し向かいに声を伝える」というと、ものものしくなりますが、例えば、「子どもが通う学童の環境をよくするために、みんなで陳情して署名活動をして届けましょう」など、地域、職場、学校…といったつながりのなかで声をあげ、フットワークよく賛同者を集めて、市長に届けることができるのであれば、やってみようという気持ちになります。そうすれば行政を身近に感じることができます。

「陳情」をテーマの一つとして思いついたのはたまたまではありません。伊藤千尋さんというジャーナリストの方が何度か講演に来てくださって、コスタリカに取材された時の話をしてくださいました。有名な話なのですが、コスタリカには子どもが遊ぶための環境が悪いということで、子どもたちが自分たちで訴状を書いて憲法裁判に訴えたケースがあるそうです。これが簡単な手続きで、司法が子どもの声をまじめに扱うという話を聞いて衝撃を受けたんですよね。日本にも一応「陳情」という方法がありますが、少し手続きが難しいので、この問題をきっかけに広げてみようと思いました。

社会科/木村 孝徹先生

社会科/木村 孝徹先生

実例を探すことが難しかった

木村先生 本校では、初見の資料などを活用して考え、表現する力を問う問題を、かなり前から出題しています。この問題でも陳情・請願がそれぞれどういうものかを説明したものを1つの資料としました。そして選挙権年齢に達していない人や、選挙権を持っていない外国籍の人が、どのように政治に関わっているのか。それを示す具体例をもう1つの資料としました。

実例も示していますよね。

木村先生 受験生にとって身近なのは自分たちと同じ「子ども」です。また、多様性が話題のなかで、「外国人が暮らしやすい社会」については子どもたちもたくさん習っているところなので、そういうところに合致した実例を、かなり苦労して探しました。
選挙権のない人たちが陳情することは、実際にはあまりないのです。「陳情・請願は大人のものになっている」ということが、この問題の隠れた問題意識になりました。

こうした問題では、18歳選挙権について論述させるケースが多いと思うのですが…。

木村先生 「選挙だけが政治参加ではない」というところからスタートしているので、型にはまった勉強をしている子にとっては難しかったかもしれません。30分の社会科試験時間で公民は最後の問題です。きっと余裕がないなかで、みんな一生懸命論述してくれていると思うので、採点する時はしっかり読んで採点しています。

神奈川学園中学校 教室

神奈川学園中学校 教室

私自身から社会全体に視座を上げて考えてほしかった

解答について教えてください。

木村先生 「多様性」という言葉を使っていようが使っていまいが、発想としてこちらが理解できる解答であれば加点をしています。満点(4点)をつけた解答はあまりなかったと記憶しています。ただ、4点満点で2点、あるいはそれ以上という受験生が一定数いました。
満点を取れなかった受験生に共通しているのは、「社会全体にとってどんな利点がありますか」という質問に対する答えが書ききれていない、ということでした。「私自身にとって」という視点になりがちで、「自分の遊び場が増えるきっかけになる」という答えから、もう一段階視座を上げて、そういう人たちを含む社会全体にとってどうなのか、というところを求めました。利害が対立する様々な人々があつまって社会はできていますが、いろいろな立場について考えることで良いものに変わる可能性があるというところまで、思い当たってくれたらいいなという思いで出題しました。

小川先生 書き方については説明会で話していることもあって、必ず書こうとしている意思を感じます。十分に考えることができる時間を取ってあげられるように、問題量を調節したり、公にアナウンスをしたりして、最後まで取り組んでもらう工夫をしています。

神奈川学園中学校 図書館

神奈川学園中学校 図書館

20年以上前からメッセージ性の強い問題を出題

各分野で論述問題を出していますが、かなり前からですか。

木村先生 初めは公民総合の中だけでした。

小川先生 ボリュームの大きい問題を1問、出題していました。各分野でも読み取ったことを表現する問題を出すようになったのは、ここ10年くらいです。

入試問題が変わっていったということは、授業も変わっていったということでしょうか。

小川先生 以前は基礎基本を大切に、小テストを重ねていましたが、最近はいろいろな資料を読解して、必要なものを選び出す力が必要だと言われています。例えば、抽象的なことをどう理解できているかを知るために文章にしてもらうなど、授業で行っている課題意識が入試問題に反映されていると思います。受験生ができることを前提としているのではなく、授業の中で取り組んでいることが入試問題にストレートに現れていると思います。

インタビュー1/3

神奈川学園中学校
神奈川学園中学校1914(大正3)年に、前身である横濱実科女学校が開校。建学の理念である「女子に自ら判断する力を与ふること」「女子に生活の力量を与ふること」を背景に「自立した生き方」を実現する教育をめざしています。
2000(平成12)年からスタートした「21世紀教育プラン」のもと、学力・人間力の向上を目標にさまざまな改革を実行。2008年からのセカンドステージでは、教育プランを深化するために週6日制、先取り学習を本格的に導入。改革の成果は年々表れ、早慶上智・MARCHなどへの進学実績が大躍進しています。2011年には高校募集を停止、改革はサードステージに入りました。サードステージでは学力の育成のほか、多様な地域から選択できる全員参加の海外研修など、行事改革も行いました。
5教科では、オリジナルテキストを使用。特進クラスを作らないことも特色。高2・高3では大幅な選択科目制となり、大学進学を強力にサポート。「理科実験100」「国内FW」「探究」など、興味深い取り組みもたくさんあります。「人と出会い、社会と出会う」という基本方針のもと、中学では2人担任制や入学直後のエンカウンター、プロジェクトアドベンチャーを実施。中3の海外研修ではホームステイや現地校の授業も受講。クラブでは、バトントワリング、そう曲が全国レベルで、コーラス部や新体操も活躍。