今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
神奈川学園中学校
2022年05月掲載
2022年 神奈川学園中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
「地方自治は民主主義の学校」という言葉があるようですが、地方自治では私たちの身近なくらしに結び付くことを話し合ったり決めたりするので、中学生にとっても興味を持ちやすいと感じました。なので、まだ選挙権はないけれど、自分の考えを持ち伝えることに意味があるのではないかと思います。(中学1年◯組 あつこさんの夏休みの自由研究レポートより)
(問)文中下線部について、国民が政治に参加して意見を反映させる方法として「選挙で投票する」というものがありますが、それ以外に「請願(せいがん)」や「陳情(ちんじょう)」という方法もあります。以下の資料をもとに、選挙で投票する以外にも様々な政治参加の方法があることによって、社会全体にとってどんなメリット(利点)があると考えられるか述べなさい。
- 選挙以外に自分たちの意見を政治に反映させる方法
- 請願:個人や団体が国会や地方議会に直接意見や要望を伝えるしくみ
- 陳情:個人や団体が地方議会や首長に直接意見や要望を伝えるしくみ
年 | 地域 | 内容 |
---|---|---|
2016年 | 神奈川県横須賀市 | 小学生が「ボール遊びなどが自由にできる公園を増やしてほしい」という陳情を市議会に提出 |
2019年 | 東京都板橋区 | 小学生が「サッカーや野球ができるグラウンドを利用できる日数や時間を増やしてほしい」という陳情を区議会に提出 |
2020年 | 大分県別府市 | 外国人留学生の団体が、地球温暖化を防止する対策をするよう求める請願を市議会に提出 |
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この神奈川学園中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
資料から、選挙権のない小学生や外国人も請願や陳情を出すことができるとわかるので、多様な意見を政治に反映させることができる。
解説
問題では、「請願」と「陳情」がどのようなものかという説明と、過去にどのような請願や陳情が実際にあったのかという具体例が提示されています。とくに過去の請願や陳情の例を見ると、選挙権のない小学生や外国人留学生の団体が、実際に請願や陳情をおこなっていることが読み取れます。公職選挙法では、「18歳以上の日本国民」に選挙権が与えられていますが、提示された資料から選挙権がない人でも政治に参加できることがわかります。こうした請願や陳情を通して政治に参加することが、「社会全体にとってどんなメリット(利点)があるのか」を考えます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
「18歳以上の日本国民に選挙権が与えられる」ということは、受験生はすでに学んでいます。18歳になって国の政治に参加するのはまだまだ先のことだと感じている受験生もいるかもしれません。一方で、選挙期間中には、候補者の街頭演説を聞いたり、候補者の顔が紹介されている選挙ポスターを見かけたり、投票に保護者と一緒に行ったりして、「18歳以上になったら自分も投票するんだ」と自分の事として受け止めているかもしれません。
この問題では、受験生が持つ「政治に参加するのは18歳になってから」というイメージを変え、「選挙で投票する」以外の方法として、「請願」や「陳情」があることを紹介しています。「請願」と「陳情」については、直接学んでいなかった受験生も多かったことでしょう。しかし、問題には、しくみや実際の例が紹介されており、その場で「請願」や「陳情」がどのようなものなのかがとらえられます。とくに、実際の例が紹介されていることで、受験生はより、自分の事として受け止められたり、政治が身近なものだと感じたりすることができるでしょう。選挙権を持っていない受験生は、自分たちでも政治に参加できることを知ったとき何を思い浮かべ、どのようなことを考えるでしょうか。「そういえば、通学路の歩道に安全柵をつけてほしいな」とか、「公園の遊具が古くなってきて、新しいものに取りかえてほしいな」などと思うかもしれません。そうした具体的な要望を思い浮かべながら、問題で問われている「社会全体にとってどんなメリット(利点)があるか」を考えることで、より具体的に問題に向き合って考えることができるでしょう。さらに、この問題は、2022年度の神奈川学園中学校社会の最後の問題であり、受験生が入試問題を解き終えた後も余韻を残し、これからの日常生活の中でも考え続けたり、「自分も政治に参加できるんだ」と興味関心を抱くきっかけになったりするかもしれません。受験生が学ぶ知識や、入試問題という枠にとどまらず、この先の社会科の学びにもつながっていく話題が提示されていることが魅力だと感じました。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。