シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

昭和女子大学附属昭和中学校

2022年05月掲載

昭和女子大学附属昭和中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.あえて教科書に載っていないことを考える

インタビュー1/3

最大公倍数と最小公約数はなぜ教科書に載っていない?

この問題の作問の経緯を教えてください。

杉山先生 思考力を試す問題では、あまりにも見たことがない問題では受験生は手をつけにくいので、気をつかっています。作問の参考にしようと小学校の教科書を眺めていいて、倍数と約数が目に留まりました。教科書に載っているのは「最小公倍数」と「最大公約数」です。一方、「最大公倍数」や「最小公約数」の記載はありません。これを問題にしたらおもしろいのではないかと思い、入試問題として作問しました。
履修に関係のないところは素通りしがちですが、知識として覚える学習ばかりせず、「なぜだろう?」と疑問に思ったら立ち止まって考えてみてほしいと思います。

数学科/杉山 拓也先生

数学科/杉山 拓也先生

(問1)と(問2)の得点率に差がついた理由

出来具合はいかがでしたか。

杉山先生 (問1)は約7割が満点、残り3割が部分点か不正解でした。(問2)は満点と部分点・不正解がおよそ半々でした。無答は少なく、予想していたよりよくできたと思います。
誤答で多かったのは、(問1)・(問2)共に「存在しない」でした。この間違いは予想通りです。(問1)の最大公倍数は、どこまでも大きい数になってしまいます。無限にあるので、特定の数が存在しないという考えもわからなくはないので、部分点をつけました。
(問2)の最小公約数は、どの整数も「1」を約数に持つので「存在しない」は当てはまりません。不正解ですから得点なしです。両者の得点状況に差がついたのは、この点が大きいと思います。

最大公倍数は無限にある

算数の問題で考え方を文章で説明するのは小学生にはなかなか難しいのではないでしょうか。

杉山先生 文章記述問題を出題した当初は無答が結構多かったのですが、最近は少なくなりました。みなさん、過去問を解いて、しっかり研究をしているように思います。
(問2)の説明については、全体の約3割はこちらが求めている解答でした。ただし、「どの2つの整数においても必ず1になるため」という模範解答のような解答はほとんどありませんでした。
採点基準は、最大公倍数については数がどこまでも大きくなるので、考えることができない(無限にある、終わりがない)ということに触れていること。最小公約数は「1」がすべての整数に共通した約数なので、あえて表す意味がないことを押さえていることです。

昭和女子大学附属昭和中学校 校舎外観

昭和女子大学附属昭和中学校 校舎外観

最小公約数はどの組み合わせも「1」になる

最大公倍数については、小学生でも「無限」という言葉を使って答えられると思います。
一方、最小公約数は「どんな整数でも1だから」までは言えるけれど、教科書に載っていない理由を説明するには、「共通」というキーワードが必要だと思います。受験生はそこまで踏み込めていなかったのではないでしょうか。

杉山先生 「どの組み合わせを考えても1だから」という解答は少数ありましたが、共通に言及した解答は見当たらなかったと思います。「すべて約数が1だから」という解答が多かったですね。ここまでできていれば満点にしました。
また、「1だから」と「すべて1だから」は大きく違いますが、そこは意図を汲み取って、「1だから」でも正解にしました。

最大公倍数や最小公約数のように、「なぜだろう?」という疑問を持ち、立ち止まって考えるには、考えるきっかけや疑問を話せる環境が大事ですね。

杉山先生 授業の終わりに余裕があるとき、「教科書にはこう書いているけれど、なぜだと思う?」と生徒に投げかけたり、教科書に載っていることだけでなく載っていないことにも触れたりして、生徒の考えを引き出しています。

昭和女子大学附属昭和中学校 校舎内

昭和女子大学附属昭和中学校 校舎内

インタビュー1/3

昭和女子大学附属昭和中学校
昭和女子大学附属昭和中学校1920(大正9)年に人見圓吉が創設した、日本女子高等学院が前身。建学の精神である「世の光となろう」のもと、「清き気品、篤き至誠、高き識見」の言葉を掲げ、人格と能力を兼ね備えた、社会に貢献する人材の育成をめざしています。
都心に位置しながら、豊かな緑に恵まれた広々とした構内には、式典・講演会のみならず、外部の利用からも高い評価を得ている人見記念講堂、人工芝グラウンド、可動式スタンドを備えた新体育館、年間を通して利用できる温水プール、54万冊もの蔵書を有する大学図書館、日本文化の授業や音楽・国語の授業で使用される茶室があります。
昭和女子独自の中高一貫積み上げ教育を実践し、高2年で高校課程を修了。その後は、高校に籍を置いて併設大学で学ぶ「五修生制度」や、併設大学への被推薦権を得たまま他大学受験も可。併設大学への内部進学率は低下していて、2016年は30%でした。
週6日制で授業時間を確保し、多様な進路に対応できるカリキュラム”SHOWA NEXT”を展開。朝読書、3~4分間のスピーチを行う「感話」、個人研究の「私の研究」、クラス研究の「昭和祭研究」があります。また、中学校の生徒全員が3年間にわたって行う「ザ・ボストンミッション」は、中学1年~2年で準備研究、中学2年の終わりにアメリカキャンパス「昭和ボストン」で12日間の海外研修を経験。帰国後、その成果を英語で発表します。アメリカの歴史や文化を学びながら、現地の生徒とも交流し、国際感覚や英語運用能力を養っていきます。さらに、キャンパス内にあるブリティッシュ・スクールとの交流もあり、文化の違いを体験しながら、コミュニケーション力や協調性を養っていきます。
「ユネスコスクールプログラム」では、思考力・応用力・表現力を磨く取り組みが行われています。高校3年では、第2外国語(6カ国語)を選択することができます。
上級生と下級生が一緒に清掃や作業を行うことで、思いやりや協調性を育てる「朋友班活動」、企画から運営まですべて生徒たち自身で行う「感謝音楽祭」、中学1年~高校2年生が学年ごとに学校所有の宿泊施設で3泊4日の共同生活を送る「学寮研修」など、昭和ならではの独自の取り組みがあります。
木曜日の必修クラブのほかに、課外クラブ活動もあり、放送部が全国大会、水泳、書道、陸上部なども大活躍。珍しいドッジボールもあります。