シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

公文国際学園中等部

2022年04月掲載

公文国際学園中等部の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.小学生にとっては解答が少々難しかった問題

インタビュー1/3

この入試問題の意図をお聞かせください。

岩熊先生 まず、この問題は少々小学生には難しかったかな、と思っています。私の世代でしたら「1950年から」ということであれば、「どんな時代だったか」「どんなものが登場してきたのか」などのことがよくわかるのですが、今の子供達にとっては戦後に数多くの核実験が行われたことなど知らないことも多いからです。

そんな中この問題を作ったのは、長い地球の歴史の中で、ほんの数十年間にそれ以前と区別する地質時代ができるほど人の活動が地球環境にインパクトを与えていることを知っていてほしいという想いからです。別府湾の海底層調査の新聞記事で「人新世」という言葉を知ったのがきっかけでした。調べてみると、この分野の本も出ていて、いろいろな議論がされていることを知りました。

この問題は、シンプルに考えると「海洋汚染で問題になっているマイクロプラスチック」のようなプラスチック製品という解答がでてきます。普段から現在の環境問題について関心を持っているかということも考えての問題作成でした。

正答率と目立った解答はありましたか?

岩熊先生 正答率は22%と低い結果でした。この問題までの地層関係の問題が素朴な内容だったこともあり、その流れで一般的な生物化石の解答を探した人が多かったようです。さらに、このあとにまだ問題が残っていることも影響したのかもしれません。その中でも、人工的な核物質やプルトニウムなど、核実験による放射性物質について解答できている人もいました。これは東日本大震災の福島原発やチェルノービリ原発事故のイメージがあったのかもしれませんが、小学生としてはすごいと思いました。

理科/岩熊 俊夫先生

理科/岩熊 俊夫先生

人間のインパクトがいかに大きいかを感じられる問題

この問題は、最近の地層のことに触れていて純粋に面白いと感じました。

岩熊先生 地質時代の長いタイムスパンで考えたとき、人新世という発想はいかに人間活動の地球環境へのインパクトが大きいのかが分かります。地学の授業では、地震や火山噴火などの自然現象のインパクトは非常に大きいということを伝えます。一方、地球環境をベースに考えたときには、人間活動の影響が本当に大きいことがわかる一例だと思います。

公文国際学園中等部 展示物

公文国際学園中等部 展示物

問題の順番やバランスには注意して問題を作成

入試問題全体の構成についてお聞きしたいのですが、理科として心掛けていることはありますか?

岩熊先生 過去には平均が低かったこともあり、現在は全体として平均6~7割は解けるような作問を意識しています。また物理・化学・生物・地学の4分野を出題するようにしています。ただし、問題集を解くだけでなく、日頃から理科的な話題に興味や疑問を抱くことが点数に反映されるようにしています。さらに必ず記述問題も入れ、自分の考えを伝えることの大切さを理解してもらおうとしています。

問題だけでなく、リード文や子どもへの伝え方についても、すごく練って作られているという印象を受けました。

岩熊先生 そうですね。最終的に統一性を持たせるようにしています。同じ表現を何度も使わない、分かりやすくするにはどのような表現が良いか、図の配置はなど、最終稿に至るまで気を遣いながら調整しています。

ちなみに大問の順番を決めるポイントはあるのですか?

岩熊先生 作問の際、大問の順番はすごく気にしていています。各問の解答時間を考え、40分間で最後までたどり着くように考えています。また必要なことをテクニカルな表現で伝えるのではなく、なるべく小学生にイメージが伝わるように意識しています。

公文国際学園中等部 グラウンド

公文国際学園中等部 グラウンド

インタビュー1/3

公文国際学園中等部
公文国際学園中等部「学校」「公文式」「寮」を3本柱に、「自ら学び、考え、判断し、行動する」人間を育成する公文国際学園中等部は、1993年に創立された。帰国生が多く、留学生も積極的に受け入れている。制服や校則は無く、生徒の自主性を重視する。
中高の6年間を2年ごとに分けた3ゾーン制を採用し、各ゾーンごとに独立した校舎と職員室が配置される。寮では、「自律・創造・感謝・健康・共生」という5つの言葉をもとに、安心安全に過ごせるよう、寮スタッフが生活面をサポートする。通学生でも、中1希望者は4カ月の寮体験ができる。
中3での「日本文化体験」では、生徒自らが設定した6コースに分かれて実施。日本文化・体験・生徒主体をキーワードに、グループワークなどを通して問題解決能力を育てる。高1では、自分で設定したテーマについて研究する「プロジェクトスタディーズ」がある。高2では、国内外の大学を訪問してディスカッションなどを通じて英語を学ぶ。オランダで行われる「模擬国連」には、毎年生徒代表が派遣されているが、校内での模擬国連も実施されている。
毎日の朝学習と放課後での公文式教室で、自学自習力を育てている。学習面だけではなく、広大な敷地や豊かな施設の中、クラブ活動も盛んである。ビーチバレーや、弓道などが、関東・全国大会で活躍する。