シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

公文国際学園中等部

2022年04月掲載

公文国際学園中等部【理科】

2022年 公文国際学園中等部入試問題より

地球の歴史を地層や化石から分類したものを地質時代といいます。地質時代の中で今から約6600万年前から現在までを新生代といい、その中で約260万年前からを第四紀、さらに約1万年前からを完新世と呼んでいます。最近の調査では人類活動による影響(えいきょう)が1950年代以降の地層からみられるようになり、新たな地質時代として「人新世」を考えている研究者もいます。

(問)新たな地質時代として考えられている「人新世」の地層中には、それ以前の地質時代の地層と区別することができるどのようなものがふくまれているでしょうか。具体的なものを1つ答えなさい。

表 主な地質時代

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この公文国際学園中等部の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

プラスチック/パソコン/プルトニウム など

解説

問題文や図から、人新世は1950年以降の年代を指していることが読み取れます。1950年頃の時代背景に目を向けると、ちょうど第二次世界大戦が終わり、日本では高度経済成長に向かう兆しが見え始めていた時代になります。世界的に急激な人口増加が起こり、産業化や都市化が進みます。安価で加工しやすいプラスチックや新しい化学繊維が大量に生産されるようになり、また人々の暮らしを支えるために大量のエネルギーが必要とされるようになっていきます。石油の需要は高まり、世界的に化石燃料を利用した産業が発達していきました。公害問題が大きく取りざたされるようになったのも、この年代以降になってからです。火力発電や原子力発電でまかなわれる電力量も増加していきました。その結果、人類の活動が地球環境そのものに大きく影響を与えるようになっていったのです。国連で採択されたSDGsの各ゴールを見ても、1950年以降の人類の活動が各目標に掲げられている課題と大きく関係していることに気付きます。

日能研がこの問題を選んだ理由

未知のことがらと向き合う、答えのない問いを仲間と共に考え続けるという状況は、もう他人事ではありません。「正しい答えがある問い」になることを待ってから、「間違えないようにマルをもらえる答え」を無難に返していくチカラは、もっぱらAIが担うことになりそうです。このような時代を生きていく子どもたちは、未知のことがらに向き合うために自ら問いを立て、「まだ定まっていない問いと答え」を携えながら、仲間とともに学び進むことによって課題を解決することを求められるでしょう。

今回、「シカクマル」ポスターとして選出させていただいた問題は、子どもたちが歩み進む未来を予測させるものであり、歩み進む自分の中に生まれた答えを(正しいかどうかはわからないけれど)表出することを促す問いかけとなっています。「新たな地質時代として『人新世』を考えている研究者もいます。」という問題文を読んだ子どもたちの内側に、自分も研究者と一緒に未知のことがらに向き合っているというワクワク感が生まれただろうと考えます。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにしました。