出題校にインタビュー!
巣鴨中学校
2022年04月掲載
巣鴨中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3.男子がおもしろがる題材を授業に投入できるのは男子校の強み
インタビュー3/3
図書館分類番号を覚えるために「脱出ゲーム」を考案
酒井先生 私がそういう授業がしたいと思ったきっかけは、過去に卒業した生徒で、大学2年で大学を辞めて違う大学を受け直す子がいたことでした。理由を聞くと「ちょっと違った」「何をしていいのかわからなかった」という答えが返ってきて、「自分は何を教えていたんだろう」と愕然としました。その時は、目先の数字しか見ていなかったのです。そうじゃないぞと。中学から興味を持たせなければいけないんだと。自分は将来、何をやりたいのか、どういう道に進みたいのか、ということを考えさせるためのタネをどんどん蒔いていかなければ、こういうことが起こるんだなということを痛感したのです。ですからキャリア教育というとおこがましいかもしれませんが、後々のために、という思いで授業を組んでいます。
その一環として本をたくさん読んでほしいと考え、図書館でも授業を行うようにしました。中1を担当する際には、最初に図書館分類番号を覚えることから始めます。ただ覚えるのではなくて、私が考案した「脱出ゲーム」をやります。例えば計算して962になるような問題を作るなど、手がかりを与えて、生徒が(その書棚にある)本を探し出してくる、というゲームです。彼らは謎研や脱出ゲームが大好きなので、すごくハマります。

巣鴨中学校 図書館
生徒の興味と合致すると主体的な学びが生まれる
酒井先生 自分たちが体験した後に、今度は手がかりとなる問題を作るなど、クリエイティブな作業をセットにして実施しています。そうすると、本に到達できない問題ばかりが出て来ます。10問あれば1問成立するかどうか、という感じなので、なぜ、本に到達できなかったのか、というところを考えさせています。結局のところ、これはプログラミングのデバッグの話になります。国語のなかにプログラミングの要素を入れていくこともできるので、今度中学生を担当することになったら、そういうこともやっていこうかなと思っています。思考なので、パソコンがなくてもできます。
先生は理系なのですか?
酒井先生 ザ・文系です(笑)。ただ、こういうことをやるのは、生徒の食いつきが全然違うからです。私はここ4、5年、中1の口語文法を担当させてもらっています。2021年度から新入学の生徒(中1・高1)は自分のパソコンを持つようになったので、そこでは文法の例文を使ってタイピングの練習をしています。そうすると、生徒はタイピングが楽しくて、何度も何度もやります。自然と例文が頭に入ります。準備に時間はかかりますが、一度作ってしまえば、私が何もしなくても勝手に学習してくれるので、作るかいがあります。生徒にとっても自分のペースでできるので良いようです。パソコンの操作は、クラスの中にできる子が必ずいるので、そういう子をミニ教員としてサポートしてもらう形で進めています。

巣鴨中学校 各大学の資料
漢文では自分の好きな歌詞を漢詩にする
物語をグラフで構造化したり、表にまとめたりする作業は、理系が好きな子どもたちでも興味を持ちそうですよね。
酒井先生 これは先ほどの代とは違いますが、高2の漢文の授業で漢詩を作りました。漢詩作りは理系が、どハマりします。
漢文ならではのきまりを教えて、漢和辞典を渡して「頑張りなさい」と言うと全員できます。私は専門が漢文なので、高校生は漢文の授業を担当することが多いんですね。そこで「自分の好きな歌詞を漢詩に直してみよう」と声をかけます。Aメロやサビがきれいにハマるのです。できる子は「自分でイチから創作したほうが楽だ」と言っています。
そういう授業だと漢和辞典をどんどん引きそうですね。
酒井先生 すごく引きますね。
紙の辞書ですか。
酒井先生 紙です。「電子辞書でもいい」と言っているのですが、持って来るのが大変なので。ただ、「紙のほうが絶対にいいよ」と念を押します。
自分で作ってみると、昔の人が作った詩を読む時の見方が変わりますよね。
酒井先生 苦手意識がなくなるのが一番大きいです。そう彼らが言ってました。
漢字ばかりなので拒絶反応を起こしますよね。
酒井先生 そう、「拒絶反応が和らぐ」と言ってました。自分が苦労したから、この人も苦労して作っているんだろうな、と思うらしいです。
男子がおもしろがる題材で授業に興味を持たせることができるのが、男子校の強みですね。
酒井先生 漢文が好きな生徒が多いですね。実は、源氏物語のような古文よりも、「鴻門之会(こうもんのかい)」(項羽と劉邦の戦い)などにのめり込みます。男子がおもしろがる題材を投入できるということが、男子校の強みなのだろうと思います。
国語が好きな子に受験してほしい
梅津先生 本校卒業生を三名ほど紹介します。寺井龍哉さんは歌人・文芸評論家として活躍、Eテレで短歌番組の担当もしていました。本校在籍時から秀作を発表していたと聞いています。知念実希人さんはご存知の方も多いとは思いますが、医師そして作家として大活躍しています。東京大学准教授で日本思想史を専門とする高山大毅さんも卒業生です。巣鴨は理系のみならず文系でも強さを発揮してることがお伝えできたでしょうか。そのベースには国語のチカラが隠れています。
小学生が国語を学ぶ上で大切にしてほしいことやアドバイスなどがあればお願いします。
大山先生 問題を勘やひらめきで解いてはいけません。まずは素材文を普通にきちんと読んでください。勘やひらめき、あるいは「わかった!」というような自分の気持ちで勝手に読んで、問題を解こうとする子がたくさんいます。そういうことをしないで、普通に書いてあることをそのまま読むということを心がけていただくと、今回の問題などもつまずくことなく解けると思います。
受験生の保護者の方とお話していると、「うちの子は算数が苦手。国語は好きなのですが、巣鴨で大丈夫ですか」という質問を受けます。これは大きな誤解です。国語ができるお子さんにこそぜひ来ていただきたいです。
酒井先生 本当にそうですね。図書館には33,000冊の蔵書があります。立派な図書館で、休み時間ごとに入り浸る生徒もいます。生徒が興味関心を持つ本を、これからもどんどん取り揃えていきたいと考えています。

入試広報部部長/大山 聡先生
インタビュー3/3