出題校にインタビュー!
巣鴨中学校
2022年04月掲載
巣鴨中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.きちんと理解できたかどうかを判断する手段をもつことが大事
インタビュー2/3
出題傾向も変わらない
設問の傾向も変わりませんか。
大山先生 3回の入試のバランスを取るということを考えますと、大きくは変わりません。しかし、今回ご注目いただいた表の問題は、出題することに少し不安がありましたが、新しい形の問題として出してみてよかったなと思っております。
おかげさまでここ2、3年、若干国語に対する苦手意識を持つ生徒はいるものの、生徒の力は伸びています。中学生は友だちの影響が大きくて、みんなの得意なことや興味あることに刺激を受けます。そこに、授業を工夫する先生方が手を差し伸べて、それに乗ってくれれば伸びていく、という環境ができているのではないかと思います。
創立者 遠藤隆吉先生像
緻密に読み取っているか、そこに差が出た
受験生の出来はいかがでしたか。
酒井先生 一番問いたかったのは表組のE・Fでした。
大山先生 A・B・C・Dで完答、E・Fで完答として配点いたしました。
酒井先生 A・B・C・Dはおそらくできるだろう。でもE・Fは文をきちんと読んでいなければできないので、差がつく問題になるであろうという判断のもと、出題すると、A・B・C・Dの得点率は91.1%でした。E・Fは64.9%でした。
予想どおりということですね。
酒井先生 はい。ただ、実はもう少しできないのではないか、50%台あたりではないかと思っていたので、64.9%は予想よりも高めでした。A・B・C・Dはできてもらわなければいけない問題ですが、できなかった受験生は問題の意図がわかっていなかったのかもしれません。誤答としては、A~Fまですべてが「5」、という解答が多い印象でした。
大山先生 私も得点率を見て正直なところ大変驚きました。大人が冷静に考えれば、できないはずがない、と思う問題ですが、文を読み取る上で緻密さが必要であることを、よく表している問題だと思います。
梅津先生 私も実は、こんな問題、できないはずがないと思いました。間違えるはずがないので、入試問題作成の会議では、出題する必要はないとさえ思ったのですが、実際にはそうではありませんでした。約35%の受験生が、きっちりとは読み取れていなかったのです。
酒井先生 目を文字の上にすべらせていくような読み方では、きちんと読み取ることはできないということですよね。
子どもは「わかった?」と聞くと「わかった!」と応えるのですが、こういう形式の問題にすると、意外とわかっていないということがわかりますよね。
酒井先生 そうなんです。
子どもはどういう基準をもって「わかった!」と応えるのか、不思議ですよね。
酒井先生 我々も「わかった?」「わかった!」というやりとりは大事だと思うのですが、最後に書かせるとか、何か形にして終わらせるということが重要だと思います。それをやると、提出物によって理解度を判断することができます。ですから私はいつも授業の終わりには何かしら形にする、ということをしています。
国語科/梅津 真人先生
クリエイティビティに磨きをかける日本史とのコラボ授業
授業ではいろいろな教材を使っていますか。
酒井先生 使っています。教員は、中1を担当すると、基本的に6年間持ち上がります。10年後を見越して書かせるということに重きを置いた教材を考えています。大学の卒業論文に向けて、中1から何をすべきかを考えて、段階を踏んで教材を作りながら授業を進めていきます。
それは、その前に6年間、生徒さんを担当されて、必要性を感じたことを前提に工夫されたということでしょうか。
酒井先生 そうです。私だけでなく、他の先生方も同じように6年間の経験を、次の6年間に活かすということをしています。
別教科と連携した授業はありますか。
酒井先生 中2の修学旅行では、班別行動計画書を作成しました。自主研修でどのようなところに行くのかを、調べて一枚の紙にまとめるということを、国語と日本史で連携して授業の中で行いました。
どのように進めたのですか。
酒井先生 私の授業だけでなく、日本史の授業でも同時並行で進めてもらい、歴史的な背景や、班別行動ではどこに行くといいか、それはなぜか、ということを教えてもらい、私の授業でそれをまとめる、ということをしました。
一人ひとりが調べてきたものをまとめる、ということですか。
酒井先生 そうです。紙にまとめると同時に、パワーポイントでもまとめて、発表するということを並行して行いました。男の子がここまで細かく丁寧にまとめてくれたことが嬉しかったです。私は一枚の紙にまとめる、ということが大事だと思っていて、この大きさの中でどうまとめるのか、どう表現するのか、ということをやり続けました。
どのくらいの時間をかけて行ったのですか。
酒井先生 修学旅行は中2の終わりに行きますので、3学期まるまるかけて行いました。20時間くらいです。
巣鴨中学校 修学旅行資料
国語の授業で行った中3の卒業論文が進路にも影響
酒井先生 その子たちが中3で卒業論文に取り組みました。中3の最後に3万字、210人、ほぼ全員が書きました。もちろんうまくない部分もあるのですが、全員がある程度の形にして提出してくれたので、やればできるのだなと思いました。そのうちもっともよかった5点を冊子にまとめました。
卒業論文は国語科で行ったのですか。
酒井先生 私の時はそうです。
題材もすごいですね。専門的な内容ですよね。
酒井先生 私の目標設定が、大学での卒業論文をきちんと書いてもらうことなので、テーマを掘り下げ、論文の体裁を教えて、書かせているからだと思います。やってよかったと思えるのは、彼らが中3の卒業論文で選んだ題材を学べる大学に進学しているからです。ロボットを題材にした生徒は今、大学でロボットの研究をしていますし、蜂を題材にした生徒は、医学部に入りました。飛行機を題材にした子はパイロットになると言っています。彼らは今年度(2021年度)大学4年生ですが、中3の卒業論文の題材に関連のある進路を選んでいるのです。
中3の卒業論文で興味を掘り起こしたのですね。
酒井先生 かなり影響があったのではないかと思っています。最近よく学校に顔を出してくれて、(論文を書いた経験があるので)「文章を書くことがすごく楽」「助かりました」と言ってくれるのも、やってよかったと思える要因です。
授業の進め方は先生方に任されている部分が大きいのでしょうか。
酒井先生 そうですね。ただ、教科書も大事なので並行して進めるようにしています。中1の国語は6単位あります。国語Aが3単位、国語Bが2単位、文法が1単位です。私は国語Bを使ってこういう授業をしています。国語Aは教科書が中心になります。
2021年度は高3を担当されているということですから、次の中1の授業がどうなるのか、楽しみですね。
酒井先生 いろいろと試行錯誤しながら、生徒が興味をもって取り組んでくれるような授業をしていければいいと思っています。
巣鴨中学校 卒業論文
インタビュー2/3