シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

巣鴨中学校

2022年04月掲載

巣鴨中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.理数系志望の子どもたちにも国語の必要性やおもしろさを知ってほしい

インタビュー1/3

本校の中学入試に最適な本と出会った

この問題の出題意図からお話いただけますか。

酒井先生 本校には算数・理科に興味関心を持っている生徒が多い、という特徴があります。一方、国語への興味関心が薄く、中には文章を読むことが嫌いで、拒否反応を示す生徒もいます。ですから、入試でもなるべくそういう受験生たちに興味を持ってもらえるような素材選びを心がけてきました。

転機となったのは2016年です。松尾義之さんの『日本語の科学が世界を変える』という本から出題させていただきました。科学の研究には日本語が適している、という趣旨の本です。本校には医学部に進学する生徒が多いので、理数系を志望する子どもたちにも国語が重要であるということを知ってもらいたいという思いで採用しました。

この本を選定している時に、TEDの中に「自殺するコオロギ、ゾンビ化するゴキブリ」というプレゼンテーション動画があり、すごくおもしろいなと思いながら見ていました。するとたまたま、その年かその翌年の京都大学の生物の問題に自殺するコオロギの話が出ていて、その時から機会があればそういう素材文を出してみたいと思っていました。そこで出会ったのが成田聡子さんの『えげつない!寄生生物』です。問題を解いてよかったと思ってもらえる素材文になると感じました。

『えげつない!寄生生物』を読みましたが、この本はどこを読んでもおもしろいですよね。

酒井先生 その通りです。でも、僕はハリガネムシ一択でした。「そうなの!?」という衝撃が大きかったからです。それを見事に文章にしてくれていて、心がひかれました。また、文章を読んで、書かれている内容を表にまとめる力が非常に重要になってきています。大学共通テストなどでもよく出題されるので、受験生へのメッセージという意味でこの部分を取り出して、表にまとめる問題を作成しました。

国語科/酒井 雅巳先生

国語科/酒井 雅巳先生

国語を好きで入って来てほしいから素材文にこだわる

酒井先生 私は、竹の花が60年に一度くらい咲いて、あとはみんな枯れてしまうということを入試問題の素材文を通して初めて知りました。その時におもしろいな、と思いました。そういう気持ちを受験生にも味わわせてあげたい、という思いは、常日頃から大切にしていることです。

素材文は持ち寄りですか。

梅津先生 そうです。

大山先生 専任12名で持ち寄って意見を交わします。小学校6年生が取り組みやすいものを、と考えると、ややもすると簡単な文章になりがちです。興味を持ってもらいやすく、かつ適度な難易度の素材文を選んでいます。(簡単には見つからないので)入試が終わるとさっそく翌年の入試問題作成に向けて、皆さん動きます。

梅津先生 教員が持ち寄ると、かぶることがあるんですよね。伊藤亜紗さんの『目の見えない人が世界をどう見ているのか』という新書が出た時に3名くらいがその本を選びました。また、いろいろな学校の入試問題を拝見すると、小説のほうが同じ文章が出ていることが多いような気がします。

巣鴨中学校 校舎

巣鴨中学校 校舎

入試では長年小説を出題していない

貴校の入試問題は非常にバランスが取れていて、小学校6年生のことを考えて作られているな、という印象があります。

酒井先生 バランスは考えていますね。

大山先生 小学校6年生が受けるに適した題材を、適正な量で出題するということを心がけています。

酒井先生 試験監督として受験生の様子を見ましたが、今年もちょうどいい終わり方をしていました。50分ですが、40~45分くらいのところで終わっていたので、よかったなと思いました。

あまり物語や小説を出題していない印象なのですが、意識的にそうしているのですか。

大山先生 高校入試では2年前からエッセイの代わりに小説を出題していますが、中学入試では小説を出題していません。説明会でも(物語や小説は)出題していないということを申し上げています。この傾向は、かなり以前からで、私自身の見解になりますが、まず文中からしっかり読み取れる問題を出したいという意図があります。小説は言外に読み取る情報を含むことが多いので、小学校6年生に「彼のこういう行動から何が想像できますか」と聞いた時に「なんで?」という疑問が出てきてしまいます。そういう揺らぎを防ぐために、論旨が明確なものを出すようになったのではないかと思っています。

また、小説はどうしても取り出す文が長くなってしまいます。我々はいろいろな方向から光を当てるために、種類の違う2つの素材文を選ぶようにしています。そうなると、長い文は出せません。今後、変わるかもしれませんが、今のところは3回の入試すべてが同じような分量で、論説文とエッセイを出題する傾向で動いています。

巣鴨中学校 図書館

巣鴨中学校 図書館

インタビュー1/3

巣鴨中学校
228_巣鴨中学校1910年(明治43年)に文学博士遠藤隆吉先生が創立した私塾「巣園学舎」をはじまりとし、硬教育(努力主義)による男子教育を実践してきた。100年を超える伝統の中で受け継がれてきた文武両道の精神。“親心”に基づいた家庭的温情と厳格さで生徒を磨く教育。時代がどう変わろうと活躍する、「真のエリート」を育てている。
中1・中2は基本5クラス編成で特別なクラスは設けず、全教科を偏りなく学ぶ。中3・高1では「数学特別クラス」を1クラス設置。高2で文系・理系に分かれ、高3では大幅な選択制による学習で志望校に合わせて学ぶ。医学部や医科歯科系大学をはじめ、高い進学実績に結びついている。
中1から外国人講師による英語授業を行っている。また、世界を舞台に活躍できる人材を育てるため、英語力のみならず異文化を実体験で学べる「海外体験学習制度」を設けている。「巣鴨サマースクール」では、夏休みの6日間、国内で合宿しながらイギリス人講師に学ぶ。生徒が英語で話したいと自発的に思えるよう、魅力ある講師を招聘。歴史、ディベート、プレゼンテーション、ドラマ、スポーツアクティビティなど多彩なレッスンを用意し、1グループ10名という少人数に分けて展開する。
2020年6月、イギリスの名門Eton CollegeとHarrow School両校の推薦を受け、日本の学校としては初めてとなる、WLSAへの正式加盟が決定した。WLSAは、加盟校の生徒や教員間の協働と相互理解を促進したいという願いから、世界を代表する中等教育学校を中心に設立された国際組織だ。