シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

淑徳与野中学校

2022年03月掲載

淑徳与野中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.子どもたちは新しいことに立ち向かっていきたい世代。志を持って社会へ

インタビュー3/3

コロナ禍でも新しい視点を求めて活動

コロナ禍で2年間、海外研修ができていないと思いますが、それに代わる取り組みがあれば教えてください。

伊藤先生 高校では英語科が主導して、母国に帰ることができない留学生をたくさん紹介していただき、本校で国際交流を行いました。それぞれの国の文化を英語で伝え合う機会を設けることで、生徒たちの目が輝きました。
春休みに行う予定の英国研修旅行に代わり、リモートお茶会を実施したりもしました。イギリスのファミリーと4日間、Zoomで会話したり、イギリスの大学生と文化について語り合ったり、音楽を聴いたりしました。
多様性も大切にしているテーマで、マイノリティーの方を意識する機会も積極的に作っています。国内修学旅行を検討する際に、候補として沖縄と北海道が挙がりました。北海道は大自然や火山活動、先住民をテーマに多様性を学べます。

髙橋先生 沖縄を選んだのは、時期的なこともありますが…。沖縄戦の他、琉球王国としての歴史もありますし、環境や風土・文化にも特色があるからです。新しい視点を作り出したり、学びを深めたりすることができると考えています。

淑徳与野中学・高等学校 図書館

淑徳与野中学・高等学校 図書館

型にはめずにどこまで伸ばせるか、それが課題

社会科教諭としてどのような能力の育成に力を入れていますか。

伊藤先生 自分で情報をキャッチできるアンテナを持つ、ということです。合わせて、情報リテラシーといいますか、情報を鵜呑みにせずに、考えて判断する力を養っていかなければいけないと思っています。

髙橋先生 一般的に、表層的な部分しか見ないことで起きるトラブルや勘違いが多いような気がしています。資料読解を重ねていく中で、あるいは多様性などを感じる中で、因果関係などをつかむ力を身につけてほしいです。そうした中で想像力と創造力(イマジネーションとクリエーション)の両方を身につけてもらえたら、中高6年間をかけて養った力を社会でも活かすことができるのだろうと思います。

伊藤先生 本校ではここ10年ほど理系を目指す生徒が増えています。コロナの影響でエッセンシャルワークの大変さが浮き彫りになり、医療系の希望者は減るかなと思ったのですが、予想に反して増えてきました。薬の開発、新しい医療体制など、新しいことに立ち向かっていきたいと思う世代なんですよね。大人が敷いた文理の境界を超えていくような、柔軟な発想をする人たちを、型にはめずにどこまで伸ばせるか。そこが私たち教員の課題だと思っています。「あなたは理系」「あなたは文系」ではなくて、テーマに対して自分はどのようにアプローチしたいのか。そういうことを考える機会を増やしていきたいと思っています。

生徒さんがあえてエッセンシャルワーカーを目指すのは、理念からつながるものがあるのでしょうね。

伊藤先生 すごいことだなぁと尊敬します。お母さんが看護師さん、お医者さん、という生徒も多く、身近な人から受ける刺激や影響もあると思います。この頃は国家公務員を希望する生徒も増えています。政府など行政の中核に入って社会を支えていきたいと考える生徒も増えていて、頼もしく感じています。

淑徳与野中学校 体育館

淑徳与野中学校 体育館

生徒一人ひとりの興味関心にアプローチする

髙橋先生 中3の「創作・研究」と「芸術研究発表会」は、本校の教育活動の大きな柱です。自分でテーマを選び、担当の指導担当教員にアドバイスを受けながら、1年をかけて取り組みます。完成した作品は、「芸術研究発表会」において口頭または展示により発表します。
自分の興味関心のあるものを絞っていき、自分はどんな答えを引き出したいのかを追求します。ただ調べるだけでなく、答えをしっかり考えて、1年がかりで作るものもあるので「研究」と名づけています。研究なので、普通は文章を書くことが多いと思うのですが、人形を作る、スーパーアリーナの模型を作るなど、「創作」に取り組む生徒もいます。幅をもたせることにより、多岐にわたる思考が育成されているのではないかと思います。

学年主導で取り組むキャリア教育

伊藤先生 大学入試が終わると、高3の先生が大学受験に向けて行った進路指導と成果、さらに進路を、全教員にフィードバックする研修会があります。

キャリア教育は6年間、積み上げていく形ですか。

髙橋先生 1年次に「ドリームワークショップ」と題して、自分の夢から理想の社会を描きます。2年次にはその夢と体験とを結びつけます。そして3年次では、自分は何をすればいいのか、を考えます。大学見学も中3で実施し、それをロードマップにつなげていきます。

伊藤先生 高校に上がると、1年次は社会を知り、2年次に学部学科を知り、昨年あたりから己を知るためのグループワークショップを行っています。早稲田大学の先生をお呼びして、プレゼンテーションと自分を表現するというワークショップを積み上げています。自分って何だろうというところから、何になる? 自分のライフプランは? そういうことを考えながら専攻の学部学科を考えていきます。自分の専門性を選んで、将来の職業ややりたいことにつなげていくということが、学年の取り組みとして定着しています。

髙橋先生 中学受験して入学した生徒は中学時代から6年間積み上げていくので、より自分の将来を築くための視点が養われているのではないかと思います。

淑徳与野高校 ラウンジ

淑徳与野高校 ラウンジ

小学生には実体験の機会を増やしてほしい

最後に、受験生やその保護者へのメッセージをお願いします。

伊藤先生 それはニュースを見たり、動物や植物を育てたり、社会のいろいろな人々の生活を見聞きしたり…。いろいろなことに興味をもってほしいですね。今の子どもたちは、液晶画面を見ていることが多いのかなと思います。そこから得られる情報もありますが、実体験をしてきてほしいです。それから多世代交流ですね。おじいちゃん、おばあちゃん、あるいは子ども会やボランティアなどに参加して、いろいろな人たちと出会う機会を作ってほしいです。それが、これから吸収していく幅と関係しているような気がするからです。

髙橋先生 中学受験を考えていると、いろいろな知識を頭に入れなければいけない、というところに考えがいきがちだと思いますが、新しく知ることが多い分、疑問に感じることも多いと思うのです。そういう時に、好奇心を大事にして、すぐに答えを求めるのではなく、調べていく探究心を大事にしてほしいです。好奇心、探究心、疑問を持つ、ということが、いろいろな力を伸ばし、自分の支えになっていくと思います。

インタビュー3/3

淑徳与野中学校
淑徳与野中学校1892(明治25)年に輪島聞声により淑徳女学校が開設。1946(昭和21)年に淑徳女学校第8代校長・長谷川良信により与野町に淑徳女子農芸専門学校と淑徳高等女学校与野分校が設立。48年に現校名となり、2005(平成17)年に中学校を開校。2015年高校校舎を中学隣接地に移転。
中学校舎は、「自然との共生」をテーマにしており、風力発電やエコガーデンを組み込むなど環境にも配慮。吹き抜けがある玄関、南向きの窓から太陽光がたくさん入る普通教室、和室や特別教室、体育館、運動場など最新鋭の設備が整う。
「仏教主義に基づく心の教育」「21世紀を生きていくための国際教育」「生徒の個性を伸ばし、難関大学進学の希望をかなえる進学指導」など、埼玉県トップレベルの女子進学校・淑徳与野高校で培われた指導方針を継承する。校訓は「清純・礼節・敬虔」。「淑徳の時間」の中での宗教の授業、宗教行事などを通じ「常に感謝の気持ちを忘れないで生きていく」という心の教育を実践する。
内進生は原則として外進生とは別クラスで国公立・難関大学現役合格を目指す。高2・高3では文系・理系に分かれ目標大学に応じた指導を展開。中1から夏季・冬季特別指導、進学講座など、塾に通わなくても大学受験に対応できる体制が整っている。また、学習サポートと呼ばれる指名制の面談は各教科で実施。論文作成など「書く」機会を多く設定し、思考力を育てている。英語のテキストは『ニュートレジャー』を使用。授業は週5日制、隔週土曜日は中国語入門などの土曜講座を開講する。
学期制でなく、1年間を5つに分けた「5ステージ通年制」で学校生活を進めるのが特色。「適応・挑戦・確立・変革・未来」と各ステージで目標を定め、学習も行事も集中して取り組む。行事はオリエンテーション合宿、文化祭、芸術鑑賞会、花まつり、み魂まつりなど各ステージに合わせて行われている。韓国、タイ、台湾、イギリス、アメリカ、オーストラリアに姉妹校・提携校をもち、中2全員参加の台湾海外研修、高2アメリカ・オレゴン修学旅行のほか、長期・短期の留学なども用意。中3の修学旅行は京都・奈良で、日本文化への理解も深める。クラブ活動は剣道、バトン、サッカー、吹奏楽などが活躍。