シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

淑徳与野中学校

2022年03月掲載

淑徳与野中学校【社会】

2022年 淑徳与野中学校入試問題より

(問)横浜が開港されると、日本からは、茶が多く輸出されました。近年日本では、ペットボトルなどの茶飲料の消費が増加していますが、茶栽培農家の収入増にはつながっていません。それはなぜですか。
資料1〜3を参考にして、「減少」「増加」の言葉を用いて、簡単に説明しなさい。
※一番茶は主にお湯で入れる茶に使用し、三・四番茶は主に茶飲料に使用する。

問題図資料1~3

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この淑徳与野中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

ペットボトルのお茶の原料である三番茶、四番茶の生産が増加しても、価格は一番茶の約5分の1と安く、お湯でいれる高価な一番茶の生産は減少しているため、茶農家の収入増にはつながらない。

解説

資料1から、四番茶の生産は増加しているが、一番茶の生産量は減少傾向であることがわかります。また、資料2からは、一番茶の価格と比べたとき、二番茶はおよそ3分の1、三・四番茶はおよそ5分の1と安いことがわかります。資料3は急須と湯のみのイラストで、これは「お湯でいれる茶」をイメージしやすくするための手がかりにできます。また、設問文のすぐ後にある「※一番茶は主にお湯でいれる茶に使用し、三・四番茶は主に茶飲料に使用する。」も大切な情報です。これらの情報をつないだ上で、「減少」「増加」の言葉を用いて、説明することが求められます。

日能研がこの問題を選んだ理由

ペットボトルや缶に入った茶飲料は、多くの日本人が、日常生活の中でごくあたりまえに目にするものでしょう。テレビのCMなどを見ていても、多くの飲料メーカーが茶飲料の宣伝をしています。淑徳与野中のこの問題は、ペットボトルなどの茶飲料の消費が増加しているにもかかわらず、茶栽培農家の収入増にはつながっていない理由を、資料を参考にして説明する問題です。

この問題に取り組む際、茶の生産や消費に関する、社会科の特別な知識は使いません。設問をよく読んでいるか、そして、3つの資料からわかる情報をどのように組み合わせて「収入増につながらない理由」として表現するかが試されている問題だといえます。よく読むことについていえば、設問文のあとにある、「※」の内容も、問題に取り組むための大切な手がかりです。

近年の中学入試問題では、入試当日に初めて見た資料を読み取り、資料から得た情報を使って、ものごとの傾向や因果関係をつかむ出題が増加しつつあります。この問題もそうした傾向の問題であり、情報をどのようにあつかうか(情報リテラシー)が、求められる出題です。また、「茶飲料の消費が増加している」「急須を使ってお茶を入れる機会が減っている」という日常の何気ないシーンに対しても、「なぜ?」や「そうなのか!」を見出すことができるという点で、非常に子どもたちの好奇心や探究心をかきたてる問題だと感じました。

このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにいたしました。