シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

獨協埼玉中学校

2022年03月掲載

獨協埼玉中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.自分の考えを言葉で表現してほしい

インタビュー2/3

前半の基礎問題は確実に得点したい

算数の入試問題を作問するに当たって、どんなことを意識していますか。

母里先生 どの分野もまんべんなく出題するようにしています。基礎力が身についているか、その上で応用力があるかどうかを見ています。
大問4題のうち、基礎問題の大問1と2の配点は100点中60点あります。計算ミスをして取りこぼしがないように、しっかり得点できるようにしましょう。
後半の大問3と4では、途中式や考え方といった解答の過程を書く記述問題を必ず出しています。論理的に考える力、説明できる力を見ています。

小田先生 大問1と2はよくできており、しっかり対策ができていると感じます。応用問題に対応するためにも、計算の正確性など“算数の基礎体力”を鍛えておきましょう。

数学科/小田 恵子先生

数学科/小田 恵子先生

算数の記述問題の出来が合否の鍵を握る

第1回入試の4教科の結果を見ると、合格者と全受験生の平均点の差が最も大きいのが算数です。算数が合否を分けているように感じますが、いかがですか。

母里先生 例年そうなることが多いですね。

となると、大問3と4が合否の鍵を握りそうですね。

母里先生 2022年度第1回入試の大問3は速さの問題でした。これは取り組みやすかったのではないかと思うので、この問題を含む大問4で差がついたかなと思います。

受験生の答案を見て気になることはありますか。

母里先生 最後の問題までたどり着かない受験生が一定数います。後に取り組みやすい問題があるのに、順番に解こうとするあまり手をつけた問題にこだわり過ぎているのではないかと思います。もしこの問題は手こずりそうだと思ったら、次の問題を先にやろうと切り替えてほしい。手つかずの問題があるのはもったいないです。

獨協埼玉中学校 教室

獨協埼玉中学校 教室

設立時から算数の入試問題に記述を出題

小田先生 記述問題は、解答欄に〈考え方・式〉と示して書くように指示しています。しかし、式だけを羅列する解答が多いですね。どうしてその式が出たのか、考え方を説明できていません。言葉で説明するのは難しいと思いますが、一言あると、採点者に考え方が伝わりやすくなります。計算間違いをしても、考え方が合っていれば加点の対象になります。

母里先生 よくあるのが、AとBを別々に計算しなければならないのに、Aの計算をしてA=○○の後にBをイコールでつなげてBの計算を始めてしまう解答です。イコールの意味がわかっていないので、ずらずらと途切れなく式が続きます。

自分ではわかっているけれど、相手に伝わるように表現できていないということですか。

母里先生 そうです。図で表現する受験生もいますが、さすがに図だけでは意図が読み取れません。説明がほしいですね。

小田先生 記述問題の採点は自ずと時間がかかります。3~4人で10分ぐらい検討することもあります。それでも設立時から記述問題の出題を継続しているのは、「考え方を表現してもらいたい」という数学科の強い思いがあるからです。受験生は自分の考えを何とかして伝えてほしいと思います。

獨協埼玉中学校 図書館

獨協埼玉中学校 図書館

中学の数学は算数と高校数学の中継ぎの役割

入学後、算数から数学に移行するにあたり意識されていることはありますか。

母里先生 中学の数学は、高校の数学にスムーズに移行するための基礎づくりだと私は思っています。つまり、算数から数学へステップアップするための“中継ぎ”の位置づけです。
算数は、速さの問題のように日常に関係することが結構多くあります。一方、高校の数学は日常との接点が見えにくいですから、両者をつなぐには橋渡しが必要です。それが中学の数学です。中学では必要に応じて算数の要素も取り入れています。

インタビュー2/3

獨協埼玉中学校
獨協埼玉中学校1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか談話室を兼ねた食堂もあり、弁当、パンや飲み物を販売する売店も備えている。
教育方針は、自ら考え、判断することのできる若者を育てる。中学では、様々な体験を通じて、自分の目でみて確認する「帰納法的手法」を重視している。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間、そのうち2時間は外国人教師による授業で、1クラス2分割の少人数制。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文発表に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、学習チェックの2つの内容で行われる。高校の英・数は習熟度別・少人数授業。伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外部進学生とは高2まで基本的に別クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時半に設定。運動部は陸上、軟式野球部など13、文化部は吹奏楽、演劇部など7、文芸、サイエンスなど7つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では地域の農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では将来の進路や就業について調べるキャリアステージや、朝から晩までアメリカン・カウンセラーと生活する「英語ですごす3日間」を体験するコミュニケーションステージ、中3ではボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はアメリカ語学研修、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。