シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

獨協埼玉中学校

2022年03月掲載

獨協埼玉中学校【算数】

2022年 獨協埼玉中学校入試問題より

ある飲食店ではテイクアウト(持ち帰り)を推奨(すいしょう)しており、下のようなチラシを配布しています。
このとき、次の問に答えなさい。

(問)太郎さんはギョーザ1つ、チャーハン1つ、やきそば1つを買いに行きました。キャンペーンを適用し、会計をしようとした太郎さんにお店の店長さんが、

このキャンペーンを適用するならば、(A)を(B)つ追加して買った方が、支払う金額が安くなるよ。」

とアドバイスをしてくれました。確かにその方が良いと、太郎さんはアドバイス通りの買い物をしました。(A)、(B)にあてはまる言葉や数を答え、下線部の理由を説明しなさい。

問題図 チラシ

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この獨協埼玉中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

(A)肉まん (B)1(つ)

理由の説明
肉まんを1つ追加して買うことにより、合計金額が200円増え、500+700+600+200=2000(円)となる。すると、値引額は300円増える。追加して支払う金額よりも値引額の方が大きいから、支払う金額が安くなる。

解説

ギョーザ1つ、チャーハン1つ、やきそば1つを買うと、金額は500×1+700×1+600×1=1800(円)となります。ここからキャンペーンを適用すると、合計金額が1000円以上2000円未満なので、300円値引きされます。
よって、太郎さんが実際に支払う金額は1800-300=1500(円)となります。

ここから、支払う金額ができるだけ安くなるように追加する物と個数を考えます。
【肉まんを1つ追加して買った場合】
金額は1800+200×1=2000(円)となります。ここからキャンペーンを適用すると、合計金額が2000円以上3000円未満なので、300×2=600(円)値引きされます。
よって、太郎さんが実際に支払う金額は2000-600=1400(円)となります。

【肉まんを2つ追加して買った場合】
金額は1800+200×2=2200(円)となります。ここからキャンペーンを適用すると、合計金額が2000円以上3000円未満なので、300×2=600(円)値引きされます。
よって、太郎さんが実際に支払う金額は2200-600=1600(円)となります。

以上より、追加して買った金額が200円より高いと、太郎さんが実際に支払う金額は1400円よりも高くなります。

よって、肉まん1つを追加して買うことで、キャンペーン適用前の合計金額は200円増えますが、適用後に300円値引きされるため、追加して買った方が支払う金額が安くなることがわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

新型コロナウイルスのまん延によって、私たちの日常は大きく様変わりしています。私たちに欠かすことのできない「食」にまつわる環境も例外ではありません。このような変化の中で急速に拡大している飲食店によるテイクアウト(持ち帰り)を、この問題の状況設定に組み込んでいます。そして、最後にキャンペーンを上手く適用した買い方を考えます。

どの子も、できるだけ安く買うにはどうすればよいかということを考えた経験はあるでしょう。そして、今より安く買うには、買うものを減らしたり、安いものを選んだりすることがほとんどです。しかし、ここではそうではありません。「買う物は増えるけれど、値段が安くなる」という、一見すると不思議な状況を考えます。いつもは成り立たない、限られた状況を論理的に紐解いていきます。

取り組んだ子どもたちはおそらく、今後キャンペーンやセール、クーポン等を利用して買うときに、「どうすればより安く買うことができるだろうか」と考えることでしょう。そうした姿を容易に想像できるこの問題は、それだけ私たちの生活と強く結びついているといえます。
このような理由から、日能研ではこの問題を『シカクいアタマをマルくする。』シリーズに選ぶことにいたしました。